異端の紅赤マギ

みどりのたぬき

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第4章:偽りの聖女編

第187話:マナ

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 身体が異様に軽いのだが、ただ軽いだけでは無い。そもそもの肉体の構造と言うか、肉体を構成している全ての要素が入れ替わった様な、正に生まれ変わったと言う感覚が俺を支配する。

 鳥頭の巨大な幻幽体アストラルボディとなったフェイクスの顔面付近からヒョイと無造作に飛び降りると、その下降している最中に空中で腰を捻り後ろ回し蹴りを目玉に自身の角が刺さって呻いているフェイクスの胸部へと蹴り入れた。

「ギィァッ!!」

 後ろ回し蹴りが見事にヒットするとフェイクスは短く悲鳴を上げて、そのまま後ろに凄まじい倒壊音の様な物を立てながら倒れていった。

 やっぱり、障壁を貫ける

 少し前まではフェイクスの障壁を篤特製の手甲を使っても壊す事が出来なかったのに、今では強化している訳でも無い蹴りの一撃で障壁を全てぶち破り、あの巨体を倒せる様になっているのだ。
 感覚でしか感じる事の出来なかった変化を視覚でも認識し、改めて実感する。

 強くなってる!

 かなりの高さから飛び降りており、落下速度もかなりのものになっていた為、そのまま飛び降りた時にまだ無事に済むか分からず、俺は着地の間際で影移動を発動させて一気に仲間の元まで移動した。

 別にビビった訳では無い

「おいおいッ、俺、めっちゃ強くなってね!?」

 俺は移動後直ぐにハイテンションで仲間達にそう問い掛けた。

「うむ、じゃがあの角を突き刺したのは何故じゃ?」

「え?いや、理由なんてねぇけど・・・」

「・・・そうか、全く意味が分からんかったわ」

「まぁ、でも理由が無くは無いかな・・・」

「ほう?」

「仲間達が、俺達の家族が此奴らに串刺しにされたんだ。その意趣返しじゃねぇけど、そんな事もちょっと考えてた」

 俺はフェイクス達のあの行いを決して忘れない。別にあの意味の無い串刺しだけでは無い。その前も今日起こった全ての事に対して俺は絶対に許さないし、必ず報いを受けさせると心に誓っている。

「それにしても、魔物も全然襲って来なくなったな」

 イスカがそうボヤきながら辺りを見渡すが、確かにあの天井に現れた目玉の登場の後、興奮して魔物達が積み重なって天井に到達しようと魔物タワーを作っていたが、目玉が去ると今度はフェイクスが暴れた事により、そのタワーが崩され魔物達は踏み潰され放題となっていた。
 あれ程いた魔物達が今や半分以下となっていそうだった。

 半分以下だな
 それでも千以上は居るが・・・

 その残った魔物達は何故か俺達には見向きもせず、ただ倒れたフェイクスを見ていた。

「そう言えばさ、あれ程苦労していた彼奴の障壁を結構簡単にぶち抜ける様になったんだよなぁ」

 俺は魔力をこの世界の人間とは違い、脳内で生成する事が出来ない。
 それは今でも同じだと分かる。が、先程は生身と言うか、俺自身を強化しておらず障壁も張っていないので何故、フェイクスの障壁を破れたのか良く分かっていない。
 そんな疑問が有り何気無く口にするが、それに反応したアリシエーゼの言葉に俺は驚愕した。

「じゃが、先程のお主の攻撃には魔力の流れを感じたぞ?」

「え、マジ?」

「マジじゃ」

 一体どう言う事だろうか・・・

「私聞いた事があるわ。悪魔は魔法は使わないって」

 そこにイリアが加わってくるが、悪魔が魔法を使わないとはどう言う事だろうか。

「どう言う事だ?」

「魔術を使うんじゃねぇか?」

 ドエインも加わる。

 確か魔法と魔術は違うんだったか?

「魔術とはまた違うのだけれど、悪魔はその行動の一つ一つが魔法だって話よ」

 どう言うこっちゃ!?

 俺が首を傾げるとイリアは困った様な表情を浮かべながら笑った。

「私も良く分からないのよ。ただ、そう言い伝えられているだけ。手を振れば炎が巻き起こり、息を吐けばその全てが凍るって」

 確かに、手を振っただけでそこに炎が出現し敵を焼いたのならばそれは見ようによっては無詠唱魔法なのかも知れない。

「でも、それと俺が障壁ぶち破れたのに何が関係してくるんだ?」

「・・・少し分かった気がするのじゃ」

 アリシエーゼが神妙な顔付きでそう言った。

「何が分かったんだ?」

「お主、悪魔共はどうやって魔力を生成しておると思う?」

「どうって―――ぁ」

 そもそも、悪魔のそれも幻幽体となった者は物理的に物質的に脳は存在しない。
 物質体マテリアルボディなら分かるが、そうでは無い場合、脳内で魔力生成は出来ない筈だ。

 体内には魔力を蓄積しない・・・?

 分からないが、もしそうなら魔力を生成出来ない穢人の俺と近い状態なのでは無いだろうか。
 試しにこの場で軽く手を降ってみる。

「・・・・・・別に何も起こらないな」

「そんなもんでどうにかなったら日常生活も出来んじゃろ・・・」

「まぁ、そうなんだが・・・」

「そうでは無くてだな、悪魔共は自分で生成した魔力を使用するのでは無く、大気中に無限に存在するを操っておるのでは無いか?」

 マナ・・・
 それも前に少し聞いた覚えがある

「・・・俺もそれが出来ると?」

「分からんよ、じゃがそう考えると先程の魔力の流れも一応納得は出来ると思ったんじゃが・・・」

 確かにアリシエーゼの言う事にはかなり納得出来る部分はあるのだが、実際俺はそれを実感出来ていない為、何とも言い難い。

「とりあえず、今ここで考えても答えは出ないわッ、でもこれで彼奴ぶっ飛ばせるでしょ!」

 イリアが未だ倒れているフェイクスに顔を向けてそう言うと、全員が其方に顔を向けた。

「ぶっ飛ばす?んな、温い事言ってんじゃねぇよ。ぶっ殺してやるよッ」

 俺は一人、そう息巻いて自分でも悪魔の様な顔をしているんだろうなと思う程口角を上げて笑った。

 今度こそ、マジで終わりにしてやるッ
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