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第4章:偽りの聖女編
第139話:伝説装備再び
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「何なんじゃお主はッ、あんなもの見たらアルアレは卒倒してしまうぞ」
「んな事言ってもなぁ・・・」
「あんなにいっぱい希少素材あるなら、売れば一財産になるのでは?」
超絶希少な黒魔泥という素材をこれでもかと言うくらいパクって来た俺にアリシエーゼが小言を繰り返し、モニカは金儲けを提案する。
「いやいや、あんなの売ったら速攻で足がつくだろ」
「そんなのハルさんならどうにか出来るでしょう?」
「まぁ、そうなんだが・・・」
「馬鹿者ッ!全て余す事無く妾達が有効活用しないでどうする!」
「んな事言っても、篤にそんな余裕無いし、やるんだったらじっくり腰を据えてやりたい」
今は、工房から篤を置いて宿屋へ帰る所であるが、結局は鍛冶師の爺さんに頼んで倉庫に他の物と一緒に保管して貰ってる。
爺さんと婆さんは目を異様に輝かせて黒魔泥の体液だか何だかを物欲しそうに見ていたので、二人に適当に使わせて色々作ってもらうのもアリかもしれない。
篤は暫くは工房で寝泊まりをすると言う事なので置いて来たが、俺達が工房を出るまでずっと言っていた事を思い出す。
「なぁ、篤が能力を使う所絶対に除くなって言ってたけど、あれ何でなんだろうな?」
そう、篤は頻りに自分の、神様から貰ったチート能力を使う所を見られるのを嫌がった。
篤の能力は、篤が望む理想の人造人間を作り出すと言うか、作る術を知る事の出来る能力だと本人は言っていた。
それが本当かどうかは分からないが、今回の俺の壊れた手甲を、篤が作り出そうとしている人造人間に装備させる為、つまりは人造人間が装備していて欲しいと篤が望めば望んだ能力を持った装備をどうやって、どんな素材を使えば良いかが分かると言う事だ。
篤はその能力を使うとつまりは情報のみが手に入ると言う事なんだろうけど・・・
本当にそんな能力なのか?
何だか篤は色々と隠している気がしないでは無いのだが、それを問い詰めるつもりは俺は無かった。
親友だろうが恋人だろうが、言えない事、言わない事の一つや二つあったって、何にも可笑しくは無いよな?
地球での俺は所謂、潔癖症だったのかもしれない。
なまじ人の本心が知ろうと思えば知れてしまう為、俺に対して少しでもネガティブな思いが在ったのならばそこで終了、それ以上その人間と付き合う事を止めていたし、興味も無くなっていた。
それは他人から見れば俺がガキで、嫌な事から直ぐに逃げ出すヘタレと映って居たのかも知れない。
この世界に来て、良い意味でも悪い意味でも素直で純粋で、真正面から向き合える人間そのものとも言える、仲間やその他大勢の人々に出会ってほんの少しそんな風に思えて来ていた。
だから、仲間には俺の能力は使いたく無いと思っているし、篤が自分の能力を俺達に隠したいと思っていたとしてもそれはそれで別に嫌な気持ちになる事も無く受け止める事が出来た。
「さあての。能力を使っている間は鶴にでもなっておるんじゃないかの」
鶴の恩返しか
「それはそれで見たいけどな」
俺とアリシエーゼが地球の昔話をしながら笑いあっていると、モニカとユーリーが首を傾げていた。
「ツルって何ですか?」
「いや、気にすんな。それよりもモニカにはやって貰う事が―――」
「嫌ですッ!!」
俺の言葉を遮りモニカはプイとそっぽを向いて拒否の意志を示した。
「い、いや、まだ何も―――」
「いーやーでーすッ」
俺とは顔を合わせずにそんな事を言うモニカは元々超絶美形のエルフなのだが、不貞腐れた表情もまた似合うと言うか、そんな表情をしていても通り過ぎる人々はモニカに目を奪われている。
そんな世の男子ならこの表情が見れただけで眼福で、何でも許してしまうのだろうが、俺には効かんぞ!
「とりあえずモニカには全員分のポーションポーチを作って欲しいんだよね」
「聞いてます!?嫌ですよ!この前の背負い袋を作るのだって、本当に大変だったんですからねッ」
「ポーションじゃと?」
「あぁ、帝国側に行った時に結構な数を手に入れたから、全員に持たせておきたいなって思ってさ」
俺は工房を出る際にポーション類を無造作に詰め込んだ麻袋を片手で持っていたが、袋の中をアリシエーゼに見せた。
袋の中には、人差し指くらいの長さの透明な瓶に詰められた様々な色付きの液体がゴロゴロとあり、これが所謂体力回復のポーションだ。
「お主・・・この数は・・・いや、何も言うまい。確かにポーションじゃな」
聞いた話だが、王国や公国では体力の回復や、傷を癒す際は基本的には神聖魔法を使用する為、ポーションの類は殆ど売られていない。
探せば作れる者は居るのであろうが、殆ど外に出回る事は無いと言う。
教会の影響が凄まじい国ならではだが、教会の者を差し置いて薬の類を販売するの憚られるらしい。
別に禁止されている訳でも何でも無いのだが、一般の人々も何か有れば教会に行き、傷や病を癒して貰う様だった。
一方、帝国側はと言うと、神聖魔法の使い手は数多く居るのだが、別にそれだけに拘っている訳では無く、薬による治療も一般的で好きな方を選べば?と言うスタンスらしい。
しかも教会に御布施をして何かしてもらうより、症状さえ分かればそれに応じた薬を買えば的確に治療する事は可能であり、御布施をするよりも安上がりらしいので、どちらかと言うと薬で治療する方が一般的には好まれる様だ。
「こっちだと珍しい物みたいだけど、やっぱり回復手段は多いに越した事は無いと思うんだよね」
「それはそうじゃが・・・」
「おーい、聞いてますかー?私は作るなんて言ってませんよー?」
「現状パトリックしか回復を行えないのは問題だし、前みたいに転移トラップでバラバラにはぐれてしまっても出来る限りの生存確率を上げる為にも皆に持っておいて貰いたいんだよ」
「まぁ、確かにそうじゃな。では、各自に持たせる様にするかのう」
「いやいやいや、何で私がポーチ作る事になってるんですか!?」
「何か問題あるか?」
「何じゃ?文句でもあるのか?」
「え、ぁ、いや・・・この前も大変だったし・・・その、もう暫くは革を弄りたくないなぁ、なんて・・・」
「・・・そうか。分かったよ」
「えッ!?いいんですか!?」
俺はモニカを無視する形でヒョイとユーリーを抱き上げる。
「ユーリー、お前のお姉ちゃん実はな変態―――」
「わーッ!わーッ!わーーーッ!!」
「・・・・・・ヘンタイ?」
「何でも無いの、ユーちゃん!何でも無いんだよ!お姉ちゃん実は、変態的に革細工が上手って事なの!」
「・・・??」
ユーリーは状況が飲み込めず目を白黒させるが、もう一押ししておくうかと俺は口を開く。
「やーッ!!もう嫌ぁ!分かりました!やります!やらせて下さい!!」
俺が口を再度開くのを素早く察知してモニカは慌てて取り繕い、俺の依頼を承諾する。
「本ッ当に性格悪いですねッ!ある事無い事言われるこっちの身にもなって下さいよ!」
モニカはプリプリとしながら俺からユーリーを奪い返し、ユーリーに頬擦りをする。
いや、無い事じゃなく、ある事を言おうと・・・
「・・・何ですか?まだ何か?」
俺が少し困惑していると、モニカはまるでアリシエーゼの様に俺の考えが分かるかの如く釘を刺す。
「・・・いや、とりあえずよろしく」
「はぁ・・・それで、どうすればいいんですか?」
何だか釈然としないが、それから俺はモニカと詳細を詰めた。
元々、皆腰にポーチをぶら下げており、中にはセンビーンやら、木製の歯ブラシやらを入れて持ち歩いている。
大体がその二点くらいしか入れていないので、スペースに空きがある為、そのポーチを活用出来ないかと思った。
「んー、このポーチってポーションを入れるにはちょっと長過ぎると思うんですよね。これに入れると取り出す時手間取る可能性もありますけど」
「確かにそうだなぁ。新たに腰にポーチ追加して皆邪魔に感じないかな?」
「別にそのくらい気にせんじゃろ」
「そんなもんか?」
腰にジャラジャラと色々と付けると邪魔に感じるかと思ったが、そうでも無いらしい。
ただ、俺は腰に短剣を刺しているし、これ以上腰周りに追加したくは無い。
「俺はこの辺にこう、小さいベルトを追加してそこにポーチ取り付ける様にしたいんだよね」
俺は身振りを交えて説明をするが、股関節の部分にベルトを巻き、そのベルトを腰のベルトと繋ぐズレ防止のバンドも一緒である事、股関節に巻いたベルトにポーション用のポーチを取り付ける、拳銃を格納するレッグホルスターの様な物を注文した。
「成程・・・でも面倒臭いので嫌ですッ」
モニカはまたもやプイと顔を背けるが、此奴は学習しないのであろうか?
「・・・とりあえず全員の意見聞いてオーダーメイドで作ってくれ」
「はぁ?絶対嫌ですよッ!」
「・・・ユーリー」
「・・・ウン?」
「ひ、卑怯です!今後はそんな事しないって取り決めたじゃないですか!」
いや、取り決めて無い
「もうッ!分かりましたよ!でもその代わり、これが終わったら私はご褒美を所望しますッ」
ご褒美・・・?
ユーリーにあからさまな女装でもさせるのだろうか・・・
「何だよご褒美って。何か欲しいのか?」
「以前聞いた事があるのです!世界樹の枝と伝説のフェンリルの毛皮を用いて作った、矢と矢筒があると言うことを!」
またとんでも無い異世界ワードがポンポンと飛び出す事に俺は若干付いて行けないが、そもそもそんな伝説級の物がこの街で手に入るとは思えない。
「で、それが欲しいと・・・?」
「はい!」
そう言ってとびきりの笑顔を見せるモニカを見て、俺は毒気を抜かれたと言うか、何だか考えるのが馬鹿馬鹿しくなったので頭をポリポリと掻きながら答えた。
「何処かで見付けたら必ず手に入れるよ・・・」
「早くして下さいねッ」
はいはい・・・
「あーッ!狡いのじゃ!妾も何か欲しいのじゃー!」
「何かってなんだよ・・・」
「・・・ボクモホシイ」
「ユーリーまで・・・」
この場に明莉が居ない事をまるで紛らわせるかの様に騒ぎ、俺達は宿屋へと戻った。
その後はそれぞれ思い思いに準備を進める事にして、夜になれば篤以外の者で集まり進捗報告も行う。
ただ別にこれと言って何か報告する事もあまり無いので、大体が今日は何を買った。何処どこでこんな情報を仕入れた等と言うくらいに留まった。
それから毎日、篤の様子は見に行く事にしたが、大体が工房の奥の部屋に篭って何かやっているらしく、行くと爺さんと婆さんが篤なら何かやってるから絶対にあの部屋には入るなと言われた。
時折聞こえる奇声の様な声が最初は気になって仕方無かったが、数日もすると慣れた。
爺さんと婆さんも既にまったく動じて無かったので、そんなものだと思う事にしたが、マジで何やっているのだろうか・・・
そして準備開始から六日目。
篤から完成の報が届く。
「んな事言ってもなぁ・・・」
「あんなにいっぱい希少素材あるなら、売れば一財産になるのでは?」
超絶希少な黒魔泥という素材をこれでもかと言うくらいパクって来た俺にアリシエーゼが小言を繰り返し、モニカは金儲けを提案する。
「いやいや、あんなの売ったら速攻で足がつくだろ」
「そんなのハルさんならどうにか出来るでしょう?」
「まぁ、そうなんだが・・・」
「馬鹿者ッ!全て余す事無く妾達が有効活用しないでどうする!」
「んな事言っても、篤にそんな余裕無いし、やるんだったらじっくり腰を据えてやりたい」
今は、工房から篤を置いて宿屋へ帰る所であるが、結局は鍛冶師の爺さんに頼んで倉庫に他の物と一緒に保管して貰ってる。
爺さんと婆さんは目を異様に輝かせて黒魔泥の体液だか何だかを物欲しそうに見ていたので、二人に適当に使わせて色々作ってもらうのもアリかもしれない。
篤は暫くは工房で寝泊まりをすると言う事なので置いて来たが、俺達が工房を出るまでずっと言っていた事を思い出す。
「なぁ、篤が能力を使う所絶対に除くなって言ってたけど、あれ何でなんだろうな?」
そう、篤は頻りに自分の、神様から貰ったチート能力を使う所を見られるのを嫌がった。
篤の能力は、篤が望む理想の人造人間を作り出すと言うか、作る術を知る事の出来る能力だと本人は言っていた。
それが本当かどうかは分からないが、今回の俺の壊れた手甲を、篤が作り出そうとしている人造人間に装備させる為、つまりは人造人間が装備していて欲しいと篤が望めば望んだ能力を持った装備をどうやって、どんな素材を使えば良いかが分かると言う事だ。
篤はその能力を使うとつまりは情報のみが手に入ると言う事なんだろうけど・・・
本当にそんな能力なのか?
何だか篤は色々と隠している気がしないでは無いのだが、それを問い詰めるつもりは俺は無かった。
親友だろうが恋人だろうが、言えない事、言わない事の一つや二つあったって、何にも可笑しくは無いよな?
地球での俺は所謂、潔癖症だったのかもしれない。
なまじ人の本心が知ろうと思えば知れてしまう為、俺に対して少しでもネガティブな思いが在ったのならばそこで終了、それ以上その人間と付き合う事を止めていたし、興味も無くなっていた。
それは他人から見れば俺がガキで、嫌な事から直ぐに逃げ出すヘタレと映って居たのかも知れない。
この世界に来て、良い意味でも悪い意味でも素直で純粋で、真正面から向き合える人間そのものとも言える、仲間やその他大勢の人々に出会ってほんの少しそんな風に思えて来ていた。
だから、仲間には俺の能力は使いたく無いと思っているし、篤が自分の能力を俺達に隠したいと思っていたとしてもそれはそれで別に嫌な気持ちになる事も無く受け止める事が出来た。
「さあての。能力を使っている間は鶴にでもなっておるんじゃないかの」
鶴の恩返しか
「それはそれで見たいけどな」
俺とアリシエーゼが地球の昔話をしながら笑いあっていると、モニカとユーリーが首を傾げていた。
「ツルって何ですか?」
「いや、気にすんな。それよりもモニカにはやって貰う事が―――」
「嫌ですッ!!」
俺の言葉を遮りモニカはプイとそっぽを向いて拒否の意志を示した。
「い、いや、まだ何も―――」
「いーやーでーすッ」
俺とは顔を合わせずにそんな事を言うモニカは元々超絶美形のエルフなのだが、不貞腐れた表情もまた似合うと言うか、そんな表情をしていても通り過ぎる人々はモニカに目を奪われている。
そんな世の男子ならこの表情が見れただけで眼福で、何でも許してしまうのだろうが、俺には効かんぞ!
「とりあえずモニカには全員分のポーションポーチを作って欲しいんだよね」
「聞いてます!?嫌ですよ!この前の背負い袋を作るのだって、本当に大変だったんですからねッ」
「ポーションじゃと?」
「あぁ、帝国側に行った時に結構な数を手に入れたから、全員に持たせておきたいなって思ってさ」
俺は工房を出る際にポーション類を無造作に詰め込んだ麻袋を片手で持っていたが、袋の中をアリシエーゼに見せた。
袋の中には、人差し指くらいの長さの透明な瓶に詰められた様々な色付きの液体がゴロゴロとあり、これが所謂体力回復のポーションだ。
「お主・・・この数は・・・いや、何も言うまい。確かにポーションじゃな」
聞いた話だが、王国や公国では体力の回復や、傷を癒す際は基本的には神聖魔法を使用する為、ポーションの類は殆ど売られていない。
探せば作れる者は居るのであろうが、殆ど外に出回る事は無いと言う。
教会の影響が凄まじい国ならではだが、教会の者を差し置いて薬の類を販売するの憚られるらしい。
別に禁止されている訳でも何でも無いのだが、一般の人々も何か有れば教会に行き、傷や病を癒して貰う様だった。
一方、帝国側はと言うと、神聖魔法の使い手は数多く居るのだが、別にそれだけに拘っている訳では無く、薬による治療も一般的で好きな方を選べば?と言うスタンスらしい。
しかも教会に御布施をして何かしてもらうより、症状さえ分かればそれに応じた薬を買えば的確に治療する事は可能であり、御布施をするよりも安上がりらしいので、どちらかと言うと薬で治療する方が一般的には好まれる様だ。
「こっちだと珍しい物みたいだけど、やっぱり回復手段は多いに越した事は無いと思うんだよね」
「それはそうじゃが・・・」
「おーい、聞いてますかー?私は作るなんて言ってませんよー?」
「現状パトリックしか回復を行えないのは問題だし、前みたいに転移トラップでバラバラにはぐれてしまっても出来る限りの生存確率を上げる為にも皆に持っておいて貰いたいんだよ」
「まぁ、確かにそうじゃな。では、各自に持たせる様にするかのう」
「いやいやいや、何で私がポーチ作る事になってるんですか!?」
「何か問題あるか?」
「何じゃ?文句でもあるのか?」
「え、ぁ、いや・・・この前も大変だったし・・・その、もう暫くは革を弄りたくないなぁ、なんて・・・」
「・・・そうか。分かったよ」
「えッ!?いいんですか!?」
俺はモニカを無視する形でヒョイとユーリーを抱き上げる。
「ユーリー、お前のお姉ちゃん実はな変態―――」
「わーッ!わーッ!わーーーッ!!」
「・・・・・・ヘンタイ?」
「何でも無いの、ユーちゃん!何でも無いんだよ!お姉ちゃん実は、変態的に革細工が上手って事なの!」
「・・・??」
ユーリーは状況が飲み込めず目を白黒させるが、もう一押ししておくうかと俺は口を開く。
「やーッ!!もう嫌ぁ!分かりました!やります!やらせて下さい!!」
俺が口を再度開くのを素早く察知してモニカは慌てて取り繕い、俺の依頼を承諾する。
「本ッ当に性格悪いですねッ!ある事無い事言われるこっちの身にもなって下さいよ!」
モニカはプリプリとしながら俺からユーリーを奪い返し、ユーリーに頬擦りをする。
いや、無い事じゃなく、ある事を言おうと・・・
「・・・何ですか?まだ何か?」
俺が少し困惑していると、モニカはまるでアリシエーゼの様に俺の考えが分かるかの如く釘を刺す。
「・・・いや、とりあえずよろしく」
「はぁ・・・それで、どうすればいいんですか?」
何だか釈然としないが、それから俺はモニカと詳細を詰めた。
元々、皆腰にポーチをぶら下げており、中にはセンビーンやら、木製の歯ブラシやらを入れて持ち歩いている。
大体がその二点くらいしか入れていないので、スペースに空きがある為、そのポーチを活用出来ないかと思った。
「んー、このポーチってポーションを入れるにはちょっと長過ぎると思うんですよね。これに入れると取り出す時手間取る可能性もありますけど」
「確かにそうだなぁ。新たに腰にポーチ追加して皆邪魔に感じないかな?」
「別にそのくらい気にせんじゃろ」
「そんなもんか?」
腰にジャラジャラと色々と付けると邪魔に感じるかと思ったが、そうでも無いらしい。
ただ、俺は腰に短剣を刺しているし、これ以上腰周りに追加したくは無い。
「俺はこの辺にこう、小さいベルトを追加してそこにポーチ取り付ける様にしたいんだよね」
俺は身振りを交えて説明をするが、股関節の部分にベルトを巻き、そのベルトを腰のベルトと繋ぐズレ防止のバンドも一緒である事、股関節に巻いたベルトにポーション用のポーチを取り付ける、拳銃を格納するレッグホルスターの様な物を注文した。
「成程・・・でも面倒臭いので嫌ですッ」
モニカはまたもやプイと顔を背けるが、此奴は学習しないのであろうか?
「・・・とりあえず全員の意見聞いてオーダーメイドで作ってくれ」
「はぁ?絶対嫌ですよッ!」
「・・・ユーリー」
「・・・ウン?」
「ひ、卑怯です!今後はそんな事しないって取り決めたじゃないですか!」
いや、取り決めて無い
「もうッ!分かりましたよ!でもその代わり、これが終わったら私はご褒美を所望しますッ」
ご褒美・・・?
ユーリーにあからさまな女装でもさせるのだろうか・・・
「何だよご褒美って。何か欲しいのか?」
「以前聞いた事があるのです!世界樹の枝と伝説のフェンリルの毛皮を用いて作った、矢と矢筒があると言うことを!」
またとんでも無い異世界ワードがポンポンと飛び出す事に俺は若干付いて行けないが、そもそもそんな伝説級の物がこの街で手に入るとは思えない。
「で、それが欲しいと・・・?」
「はい!」
そう言ってとびきりの笑顔を見せるモニカを見て、俺は毒気を抜かれたと言うか、何だか考えるのが馬鹿馬鹿しくなったので頭をポリポリと掻きながら答えた。
「何処かで見付けたら必ず手に入れるよ・・・」
「早くして下さいねッ」
はいはい・・・
「あーッ!狡いのじゃ!妾も何か欲しいのじゃー!」
「何かってなんだよ・・・」
「・・・ボクモホシイ」
「ユーリーまで・・・」
この場に明莉が居ない事をまるで紛らわせるかの様に騒ぎ、俺達は宿屋へと戻った。
その後はそれぞれ思い思いに準備を進める事にして、夜になれば篤以外の者で集まり進捗報告も行う。
ただ別にこれと言って何か報告する事もあまり無いので、大体が今日は何を買った。何処どこでこんな情報を仕入れた等と言うくらいに留まった。
それから毎日、篤の様子は見に行く事にしたが、大体が工房の奥の部屋に篭って何かやっているらしく、行くと爺さんと婆さんが篤なら何かやってるから絶対にあの部屋には入るなと言われた。
時折聞こえる奇声の様な声が最初は気になって仕方無かったが、数日もすると慣れた。
爺さんと婆さんも既にまったく動じて無かったので、そんなものだと思う事にしたが、マジで何やっているのだろうか・・・
そして準備開始から六日目。
篤から完成の報が届く。
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