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第2章:闇蠢者の襲来編
第69話:超犬
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「このまま一気に決めるぞ!」
「うむッ」
俺はアリシエーゼにそう言うとアリシエーゼも力強く頷いた。
アリシエーゼによってかなりの勢いで吹き飛ばされた巨大コボルトだが、多分それだけだ。
普通の魔物なら簡単に頭が吹き飛ばされる様な威力の飛び蹴りを食らって頭部が無事と言うだけで唯のコボルトでは無いと分かるが、ここから何もさせるつもりは無い。
吹き飛んだ先で土煙が舞い巨大コボルトの身体を少し隠すが、問題は無いと判断してそのまま駆け寄る。
そして俺は腰の短剣に手を掛けて一気に引き抜いて勢いそのままに両方の短剣を逆手に持ち替えた。
倒れている奴にそのまま短剣を突き刺す方法を俺は選択し、巨大コボルトが倒れてる少し手前で飛び上がった。
飛び上がった瞬間にアリシエーゼを目で確認すると俺の攻撃の後に追撃する方法を選択した様で立ち止まり何やらブツブツと言いながら掌を突き出して何かの魔法の準備を開始した事を確認する。
タイミングは合わせてくれるだろ
そう思いアリシエーゼに向けていた目を巨大コボルトに戻す。
目を戻すその時に、巨大コボルトの周りに舞っていた土煙がスッとコボルトに吸い込まれている様に見えた。
その事象を認識した瞬間、その刹那、無意識に身体が動く。
腕がスッと頭を庇う様にクロスしてガード体制に入り、その後で思う。
ヤバい
ドンッッッッッ!!!!!
そう思ったと同時に凄まじい音と衝撃が俺を襲い、痛いと思う間も無く吹き飛ばされて地面を転がった。
地面に打ち付けられた衝撃を知覚した瞬間に俺は直ぐに立ち上がろうとするが、一瞬グラついた。
何事かと思ったが、腕が吹き飛ばされて無くなっているのに気付き、その影響でバランスが取れずにグラついたのかと思ったが、そんな事を思っている内に腕は修復されていた。
「ハル!?」
アリシエーゼが叫ぶので、俺は無事を知らせる様に大声で答えた。
「大丈夫だ!」
土煙が無くなり、そこには巨大なコボルトが立っているのが確認出来た。
「あれ~?腕吹き飛ばしたと思ったんだけど、何で治ってるんだ?」
巨大コボルトはその巨体に似合わず、高く軽い声でそう言って俺を見た。
俺はそれには何も答えず改めて巨大コボルトを目で確認する。
体長自体は三メートル程で、普通のコボルトの二倍程度だが、実際は身体の大きさ等は何倍にも感じる。
余り体毛は生えておらず、その身体は非常に引き締まっており、強靭そうだった。
下半身にのみズボンを履いており、特に武器等は装備していない。
頭部は金色の鬣が逆立って生えておりまるで―――
「スーパーサ●ヤ人みたいな髪しやがって・・・」
俺は思わず呟いた。
するとスーパーコボルトはそんな俺の呟きを聞き逃さずに拾い言った。
「ちょッ、おまッ、サ●ヤ人て!お前、センスねぇなぁ」
スーパーコボルトはそう言いながら腹を抱えて笑った。
マジかよ・・・
その瞬間俺は悟った。
アリシエーゼも気付いた様で、先程まで準備していた魔法が霧散していて、その顔は驚愕している。
「あ、気付いちゃったぁ?」
スーパーコボルトはニヤリと笑って俺を見た。
「・・・お前、転生者か」
「ぶっぶー!残念!転移の方なんだわ」
なんだと!?
コボルトに転生したのでは無く、転移して来た!?
その事実に俺は衝撃を受けた。
転移って、じゃあ何でコボルトの姿をしてるんだよ!?
「あ、俺が何でコボルトなんだって思ったっしょ~?」
「・・・」
気持ち悪い笑みを浮かべたまま、スーパーコボルトは聞いてもいないのにベラベラと喋り出した。
「俺さ、十日くらいかな?その位前にさ転移して来た訳」
十日・・・
もしかしたら俺や篤、明莉と同じタイミングだったのかも知れない・・・
「もうさ、最初めちゃくちゃ焦ってさぁ。んでさ、周りを見ると何か洞窟みたいなんだよ。全然意味わかんないじゃん?とりあえず歩くよね。只管歩いて歩いて、気付いたらさ、出会っちゃったんだよねぇ」
スーパーコボルトは態とらしくそこで一旦話を切る。
聞いて来いって事かよ・・・
「・・・誰と出会ったんだ」
「あ、それ聞いちゃう?やっぱ聞きたいよね~」
その軽いノリに少々イラついて来た。
「結局最後まで教えてくれなかったんだけどさ、あれ絶対悪魔だよ」
悪魔・・・?
「・・・」
「あ!?今、嘘クセェとか思ったっしょ!?いや、マジなんだって!って言うか、悪魔ってより魔王?そんな感じ?」
「・・・何で悪魔だと思った」
「んー、何でだろうな?何となくそう思ったんだよ。兎に角さ、その悪魔は俺の能力を気に入ってくれてさ!」
スーパーコボルトはその時の事を思い出した様に嬉しそうにした。
能力ってのは、転移者特典の事だろうか?
「・・・その能力ってのは、転移者特典の事か?」
「転移者特典?あぁ、確かに特典だな!そうそう、それ。あのクソ神にお前も貰ったっしょ?」
「・・・」
「えー、なに?俺がこんだけ話してやってんのに、お前の事は黙りかよ。ズルいなお前」
「・・・」
「はぁ、まあいいか・・・って、何の話だったっけか?あぁ、悪魔に出会って、そいつは言う訳よ。仲間にならないかってさ」
「それで犬に成り下がったってか?」
「・・・そうだな。なーんか失敗したとか言われてよぉ。マジで有り得ないだろ?」
そう言ってスーパーコボルトは肩を竦めた。
「まぁ、このままでもよ特に不便ないんだわ。物は掴めるし、身体は強靭になった。鼻も感覚も鋭くなったし、上手い飯も酒も味わえる。勿論、女もな」
そう言って舌なめずりをするスーパーコボルトを見て、異様な嫌悪感が沸いた。
「ハッ、だけど一生犬畜生として生きて行くんだろ。哀れだな」
「それがよ、そうでも無いんだわ」
「・・・どう言う事だ?」
「その悪魔が言うにはよ、強くなりゃいいらしいんだ。強くなれば進化出来るんだってよ」
進化・・・
ジェネラルからキングへと言う事だろうか
「何だ?修行でもすんのか?」
「ばーか、違げぇよ、喰うんだよ」
俺は無意識に身体をビクリと震わせた。
次の言葉を勝手に想像してしまったからだ。
「・・・気付いたぁ?」
俺の様子を見逃さなかったスーパーコボルトはニタリと嫌らしい笑みを浮かべて言った。
「そうだよ、人間を喰うとさ!進化するんだってよ!もっと強くなって、もっと好き勝手出来るんだってよ!!」
いきなり感情を激しく剥き出しにしてスーパーコボルトは笑いながら叫んだ。
「とりあえずこの犬共の軍団もらったからさぁ、これで好き勝手暴れて人間喰いまくるわぁ!」
そう言って、スーパーコボルトは俺に向いていた身体を急に仲間が集まる方へと向きを変えて其方に向かって一歩踏み出した。
不味い!!
俺は瞬時にスーパーコボルトに向かって駆け出す。
その時、俺は有り得ない光景を目にした。
スーパーコボルトが踏み出した脚がいきなり消失したのだ。
脚だけでは無い。何と表現すればいいのか分からないが、ある位置を境にそこに入ったところから消えていっていると言えばいいのか。
よく分からない光景に目を奪われながらもスーパーコボルトに向けて走っていると突然アリシエーゼが叫んだ。
「後ろじゃッ!!」
声を聞いた瞬間に俺は左に飛び退き、その反動で身体をクルりと回した。
それで見えて来た光景は、俺が見たスーパーコボルトの消えた半身のみが俺の後ろに出現していると言う理解し難いものであった。
飛び退いて反転した為俺は背中から地面に落ちるが、そのまま勢いを利用して素早く立ち上がる。
「いい反応するじゃねぇか~」
そう言ってスーパーコボルトは残りの半身もその位置、空間から抜け出す様にして取り出す。
「・・・転移魔法か」
「ご明察~」
これでコボルトがいきなり俺達を包囲した方法が分かった。
恐らくこの転移魔法を使って此奴がコボルト達を展開して行ったのだろう。
「とりあえず、もう腹減って来たからさぁアイツら喰わせて?」
そう言ってスーパーコボルトは不気味な笑みを浮かべながら、仲間達を指差した。
「・・・ふぅ、・・・ふぅ」
俺はその煽りには答えず、少しずつ集中力を上げて行く。
そこで今まで黙ってやり取りを聞いていたアリシエーゼがスーパーコボルトに話し掛ける。
「・・・最後に一つだけ聞いても良いかの」
「・・・何だい、お嬢ちゃん?」
スーパーコボルトはアリシエーゼの方へと身体を向けた。
俺が目の前に居るのにも関わらず。
その事実に怒りが湧いて来るが、俺はそれを押さえ込み、更に集中力を上げて行った。
「・・・何故、妾達が地球出身だと分かった?」
「・・・ん~?俺がお前達にいつ地球出身だと聞いたんだ?」
「・・・最初からそれ前提で貴様は話しておったではないか」
「・・・ふーん、なかなか鋭いこって。本当はさ、口止めされてんだわ、あの悪魔に」
スーパーコボルトは頭をボリボリと掻いて諦めた様に言った。
「よく分かんねーんだけどさ、その悪魔お前達って言うからこの男の事知ってたんだよなぁ」
「なんじゃと!?」
スーパーコボルトから衝撃の事実が知らされるが、俺はそれを右から左へ聞き流して集中力とテンションを最大まで高め終わっていた。
「な、何故悪魔がハルの事を―――」
「はーい、お喋りはここまで~。そろそろお前ら死―――グァッ!?」
スーパーコボルトが言い終わる前に俺は一切の手加減無しに右横っ腹にボディをぶち込んだ。
全力ボディを喰らいスーパーコボルトは正しくその身体をくの字に曲げるが、素早く俺から距離を取ろうとそのままの体勢で横にステップする。
俺は全力で殴り付けた影響で右腕が吹き飛んだが既に修復しており、更に事前に痛みの信号を自らカットしている為、痛みによる無意識での身体の硬直等は起きずそのままスーパーコボルトと一緒にサイドステップを行って追撃した。
「ッてぇな!このや―――」
スーパーコボルトは回避行動の後に体勢を建て直しこちらに顔を向けて言うが、俺はその時には既にそこには居らず、反対側に回り込んで今度は左横っ腹へまた全力でボディを叩き込んだ。
「ッズァ!?」
スーパーコボルトは今度は反対側へ身体をくの字に曲げたが次の攻撃への回避行動は取らず、右足を踏ん張り同時に右腕に力を込めて俺を睨んだ。
「調子にッ―――」
その瞬間、スーパーコボルトへ向かって空気か収束して行く様な錯覚に陥る。
先程の最初の攻撃だと瞬時に判断して俺はバックステップで離れる。
「乗んなッ!!」
スーパーコボルトは力を貯めていた右腕を腰の急激な捻りと共に解放し、有り得ないスピードで大振りの右フックの様なものを俺に放った。
だが、既に距離を取っていた俺には当然その拳は届かないが、腕を振るった瞬間あの時の様にドンッッッと言う凄まじい音が鳴ったと認識した瞬間、俺の頭の中にまるで緊急地震速報の様な喧まい程のアラームが鳴り響く。
其れを受けて俺は咄嗟に顔を護る様に最初の時と同様に腕が無意識に動くが、今度は間に合いそうに無かった。
不味い
そう思った時、丁度バックステップが終わり、着地と同時に踏ん張ろうとしていた脚が、全力でバックステップを行った事による、筋断裂や肉離れ等の影響で踏ん張りが効かずにカクリと崩れた。
そしてそのまま尻餅を付いた俺の頭上を刹那、何かが物凄い勢いで通り過ぎて行った。
危なッ
この時には脚の損傷は修復されていたので直ぐにその場で立ち上がりスーパーコボルトとまた対峙した。
「・・・超音速衝撃波か」
「・・・」
先程まで饒舌だったスーパーコボルトは今は俺に敵意を剥き出しにして何も答えなかった。
俺が突然仕掛けた事に驚いたアリシエーゼは攻撃に加わる事かま出来なかったが、今は俺とスーパーコボルトを挟み込む様な位置に移動して次のアクションに備えていた。
それを横目で確認してスーパーコボルトは犬歯を剥き出しにして吠えた。
「テメェらッ、ミンチにしてやる!!」
そう言ってスーパーコボルトはスゥッと息を吸い込み、そしてそれを凄まじい雄叫びと共に吐き出した。
【グォアアアアアアアアアアアアッッッ!!!】
その雄叫びは、単なる音では無かった。
まるで森全体が震え、何か特別な効果が乗っている。そんな凄まじい咆哮であった。
「押し潰されろ」
スーパーコボルトがそう言うと、森の至る所から、魔物の咆哮が聞こえた。
総攻撃か・・・
糞犬が
上等だよ!!
「うむッ」
俺はアリシエーゼにそう言うとアリシエーゼも力強く頷いた。
アリシエーゼによってかなりの勢いで吹き飛ばされた巨大コボルトだが、多分それだけだ。
普通の魔物なら簡単に頭が吹き飛ばされる様な威力の飛び蹴りを食らって頭部が無事と言うだけで唯のコボルトでは無いと分かるが、ここから何もさせるつもりは無い。
吹き飛んだ先で土煙が舞い巨大コボルトの身体を少し隠すが、問題は無いと判断してそのまま駆け寄る。
そして俺は腰の短剣に手を掛けて一気に引き抜いて勢いそのままに両方の短剣を逆手に持ち替えた。
倒れている奴にそのまま短剣を突き刺す方法を俺は選択し、巨大コボルトが倒れてる少し手前で飛び上がった。
飛び上がった瞬間にアリシエーゼを目で確認すると俺の攻撃の後に追撃する方法を選択した様で立ち止まり何やらブツブツと言いながら掌を突き出して何かの魔法の準備を開始した事を確認する。
タイミングは合わせてくれるだろ
そう思いアリシエーゼに向けていた目を巨大コボルトに戻す。
目を戻すその時に、巨大コボルトの周りに舞っていた土煙がスッとコボルトに吸い込まれている様に見えた。
その事象を認識した瞬間、その刹那、無意識に身体が動く。
腕がスッと頭を庇う様にクロスしてガード体制に入り、その後で思う。
ヤバい
ドンッッッッッ!!!!!
そう思ったと同時に凄まじい音と衝撃が俺を襲い、痛いと思う間も無く吹き飛ばされて地面を転がった。
地面に打ち付けられた衝撃を知覚した瞬間に俺は直ぐに立ち上がろうとするが、一瞬グラついた。
何事かと思ったが、腕が吹き飛ばされて無くなっているのに気付き、その影響でバランスが取れずにグラついたのかと思ったが、そんな事を思っている内に腕は修復されていた。
「ハル!?」
アリシエーゼが叫ぶので、俺は無事を知らせる様に大声で答えた。
「大丈夫だ!」
土煙が無くなり、そこには巨大なコボルトが立っているのが確認出来た。
「あれ~?腕吹き飛ばしたと思ったんだけど、何で治ってるんだ?」
巨大コボルトはその巨体に似合わず、高く軽い声でそう言って俺を見た。
俺はそれには何も答えず改めて巨大コボルトを目で確認する。
体長自体は三メートル程で、普通のコボルトの二倍程度だが、実際は身体の大きさ等は何倍にも感じる。
余り体毛は生えておらず、その身体は非常に引き締まっており、強靭そうだった。
下半身にのみズボンを履いており、特に武器等は装備していない。
頭部は金色の鬣が逆立って生えておりまるで―――
「スーパーサ●ヤ人みたいな髪しやがって・・・」
俺は思わず呟いた。
するとスーパーコボルトはそんな俺の呟きを聞き逃さずに拾い言った。
「ちょッ、おまッ、サ●ヤ人て!お前、センスねぇなぁ」
スーパーコボルトはそう言いながら腹を抱えて笑った。
マジかよ・・・
その瞬間俺は悟った。
アリシエーゼも気付いた様で、先程まで準備していた魔法が霧散していて、その顔は驚愕している。
「あ、気付いちゃったぁ?」
スーパーコボルトはニヤリと笑って俺を見た。
「・・・お前、転生者か」
「ぶっぶー!残念!転移の方なんだわ」
なんだと!?
コボルトに転生したのでは無く、転移して来た!?
その事実に俺は衝撃を受けた。
転移って、じゃあ何でコボルトの姿をしてるんだよ!?
「あ、俺が何でコボルトなんだって思ったっしょ~?」
「・・・」
気持ち悪い笑みを浮かべたまま、スーパーコボルトは聞いてもいないのにベラベラと喋り出した。
「俺さ、十日くらいかな?その位前にさ転移して来た訳」
十日・・・
もしかしたら俺や篤、明莉と同じタイミングだったのかも知れない・・・
「もうさ、最初めちゃくちゃ焦ってさぁ。んでさ、周りを見ると何か洞窟みたいなんだよ。全然意味わかんないじゃん?とりあえず歩くよね。只管歩いて歩いて、気付いたらさ、出会っちゃったんだよねぇ」
スーパーコボルトは態とらしくそこで一旦話を切る。
聞いて来いって事かよ・・・
「・・・誰と出会ったんだ」
「あ、それ聞いちゃう?やっぱ聞きたいよね~」
その軽いノリに少々イラついて来た。
「結局最後まで教えてくれなかったんだけどさ、あれ絶対悪魔だよ」
悪魔・・・?
「・・・」
「あ!?今、嘘クセェとか思ったっしょ!?いや、マジなんだって!って言うか、悪魔ってより魔王?そんな感じ?」
「・・・何で悪魔だと思った」
「んー、何でだろうな?何となくそう思ったんだよ。兎に角さ、その悪魔は俺の能力を気に入ってくれてさ!」
スーパーコボルトはその時の事を思い出した様に嬉しそうにした。
能力ってのは、転移者特典の事だろうか?
「・・・その能力ってのは、転移者特典の事か?」
「転移者特典?あぁ、確かに特典だな!そうそう、それ。あのクソ神にお前も貰ったっしょ?」
「・・・」
「えー、なに?俺がこんだけ話してやってんのに、お前の事は黙りかよ。ズルいなお前」
「・・・」
「はぁ、まあいいか・・・って、何の話だったっけか?あぁ、悪魔に出会って、そいつは言う訳よ。仲間にならないかってさ」
「それで犬に成り下がったってか?」
「・・・そうだな。なーんか失敗したとか言われてよぉ。マジで有り得ないだろ?」
そう言ってスーパーコボルトは肩を竦めた。
「まぁ、このままでもよ特に不便ないんだわ。物は掴めるし、身体は強靭になった。鼻も感覚も鋭くなったし、上手い飯も酒も味わえる。勿論、女もな」
そう言って舌なめずりをするスーパーコボルトを見て、異様な嫌悪感が沸いた。
「ハッ、だけど一生犬畜生として生きて行くんだろ。哀れだな」
「それがよ、そうでも無いんだわ」
「・・・どう言う事だ?」
「その悪魔が言うにはよ、強くなりゃいいらしいんだ。強くなれば進化出来るんだってよ」
進化・・・
ジェネラルからキングへと言う事だろうか
「何だ?修行でもすんのか?」
「ばーか、違げぇよ、喰うんだよ」
俺は無意識に身体をビクリと震わせた。
次の言葉を勝手に想像してしまったからだ。
「・・・気付いたぁ?」
俺の様子を見逃さなかったスーパーコボルトはニタリと嫌らしい笑みを浮かべて言った。
「そうだよ、人間を喰うとさ!進化するんだってよ!もっと強くなって、もっと好き勝手出来るんだってよ!!」
いきなり感情を激しく剥き出しにしてスーパーコボルトは笑いながら叫んだ。
「とりあえずこの犬共の軍団もらったからさぁ、これで好き勝手暴れて人間喰いまくるわぁ!」
そう言って、スーパーコボルトは俺に向いていた身体を急に仲間が集まる方へと向きを変えて其方に向かって一歩踏み出した。
不味い!!
俺は瞬時にスーパーコボルトに向かって駆け出す。
その時、俺は有り得ない光景を目にした。
スーパーコボルトが踏み出した脚がいきなり消失したのだ。
脚だけでは無い。何と表現すればいいのか分からないが、ある位置を境にそこに入ったところから消えていっていると言えばいいのか。
よく分からない光景に目を奪われながらもスーパーコボルトに向けて走っていると突然アリシエーゼが叫んだ。
「後ろじゃッ!!」
声を聞いた瞬間に俺は左に飛び退き、その反動で身体をクルりと回した。
それで見えて来た光景は、俺が見たスーパーコボルトの消えた半身のみが俺の後ろに出現していると言う理解し難いものであった。
飛び退いて反転した為俺は背中から地面に落ちるが、そのまま勢いを利用して素早く立ち上がる。
「いい反応するじゃねぇか~」
そう言ってスーパーコボルトは残りの半身もその位置、空間から抜け出す様にして取り出す。
「・・・転移魔法か」
「ご明察~」
これでコボルトがいきなり俺達を包囲した方法が分かった。
恐らくこの転移魔法を使って此奴がコボルト達を展開して行ったのだろう。
「とりあえず、もう腹減って来たからさぁアイツら喰わせて?」
そう言ってスーパーコボルトは不気味な笑みを浮かべながら、仲間達を指差した。
「・・・ふぅ、・・・ふぅ」
俺はその煽りには答えず、少しずつ集中力を上げて行く。
そこで今まで黙ってやり取りを聞いていたアリシエーゼがスーパーコボルトに話し掛ける。
「・・・最後に一つだけ聞いても良いかの」
「・・・何だい、お嬢ちゃん?」
スーパーコボルトはアリシエーゼの方へと身体を向けた。
俺が目の前に居るのにも関わらず。
その事実に怒りが湧いて来るが、俺はそれを押さえ込み、更に集中力を上げて行った。
「・・・何故、妾達が地球出身だと分かった?」
「・・・ん~?俺がお前達にいつ地球出身だと聞いたんだ?」
「・・・最初からそれ前提で貴様は話しておったではないか」
「・・・ふーん、なかなか鋭いこって。本当はさ、口止めされてんだわ、あの悪魔に」
スーパーコボルトは頭をボリボリと掻いて諦めた様に言った。
「よく分かんねーんだけどさ、その悪魔お前達って言うからこの男の事知ってたんだよなぁ」
「なんじゃと!?」
スーパーコボルトから衝撃の事実が知らされるが、俺はそれを右から左へ聞き流して集中力とテンションを最大まで高め終わっていた。
「な、何故悪魔がハルの事を―――」
「はーい、お喋りはここまで~。そろそろお前ら死―――グァッ!?」
スーパーコボルトが言い終わる前に俺は一切の手加減無しに右横っ腹にボディをぶち込んだ。
全力ボディを喰らいスーパーコボルトは正しくその身体をくの字に曲げるが、素早く俺から距離を取ろうとそのままの体勢で横にステップする。
俺は全力で殴り付けた影響で右腕が吹き飛んだが既に修復しており、更に事前に痛みの信号を自らカットしている為、痛みによる無意識での身体の硬直等は起きずそのままスーパーコボルトと一緒にサイドステップを行って追撃した。
「ッてぇな!このや―――」
スーパーコボルトは回避行動の後に体勢を建て直しこちらに顔を向けて言うが、俺はその時には既にそこには居らず、反対側に回り込んで今度は左横っ腹へまた全力でボディを叩き込んだ。
「ッズァ!?」
スーパーコボルトは今度は反対側へ身体をくの字に曲げたが次の攻撃への回避行動は取らず、右足を踏ん張り同時に右腕に力を込めて俺を睨んだ。
「調子にッ―――」
その瞬間、スーパーコボルトへ向かって空気か収束して行く様な錯覚に陥る。
先程の最初の攻撃だと瞬時に判断して俺はバックステップで離れる。
「乗んなッ!!」
スーパーコボルトは力を貯めていた右腕を腰の急激な捻りと共に解放し、有り得ないスピードで大振りの右フックの様なものを俺に放った。
だが、既に距離を取っていた俺には当然その拳は届かないが、腕を振るった瞬間あの時の様にドンッッッと言う凄まじい音が鳴ったと認識した瞬間、俺の頭の中にまるで緊急地震速報の様な喧まい程のアラームが鳴り響く。
其れを受けて俺は咄嗟に顔を護る様に最初の時と同様に腕が無意識に動くが、今度は間に合いそうに無かった。
不味い
そう思った時、丁度バックステップが終わり、着地と同時に踏ん張ろうとしていた脚が、全力でバックステップを行った事による、筋断裂や肉離れ等の影響で踏ん張りが効かずにカクリと崩れた。
そしてそのまま尻餅を付いた俺の頭上を刹那、何かが物凄い勢いで通り過ぎて行った。
危なッ
この時には脚の損傷は修復されていたので直ぐにその場で立ち上がりスーパーコボルトとまた対峙した。
「・・・超音速衝撃波か」
「・・・」
先程まで饒舌だったスーパーコボルトは今は俺に敵意を剥き出しにして何も答えなかった。
俺が突然仕掛けた事に驚いたアリシエーゼは攻撃に加わる事かま出来なかったが、今は俺とスーパーコボルトを挟み込む様な位置に移動して次のアクションに備えていた。
それを横目で確認してスーパーコボルトは犬歯を剥き出しにして吠えた。
「テメェらッ、ミンチにしてやる!!」
そう言ってスーパーコボルトはスゥッと息を吸い込み、そしてそれを凄まじい雄叫びと共に吐き出した。
【グォアアアアアアアアアアアアッッッ!!!】
その雄叫びは、単なる音では無かった。
まるで森全体が震え、何か特別な効果が乗っている。そんな凄まじい咆哮であった。
「押し潰されろ」
スーパーコボルトがそう言うと、森の至る所から、魔物の咆哮が聞こえた。
総攻撃か・・・
糞犬が
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俺は、元プログラマ・・・違うな。社内の便利屋。火消し部隊を率いていた。
とあるシステムのデスマの最中に、SIer の不正が発覚。
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転生先は、魔物も存在する、剣と魔法の世界。
魔法がをプログラムのように作り込むことができる。俺は、異世界でもプログラムを作ることができる!
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こんな生涯をプログラマとして過ごした男が転生した世界が、魔法を”プログラム”する世界。
彼は、プログラムの知識を利用して、魔法を編み上げていく。
注)第七話+幕間2話は、現実世界の話で転生前です。IT業界の事が書かれています。
実際にあった話ではありません。”絶対”に違います。知り合いのIT業界の人に聞いたりしないでください。
第八話からが、一般的な転生ものになっています。テンプレ通りです。
注)作者が楽しむ為に書いています。
誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめてになります。
転生騎士団長の歩き方
Akila
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【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】
たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。
【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。
【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?
※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
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鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
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第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
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