異端の紅赤マギ

みどりのたぬき

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第1章:異世界と吸血姫編

第47話:使い道

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「それよりも早く移動した方がいいんじゃ無いだろうか」

 俺達が森でバカ騒ぎしていると唐突にそれまで静観していたモリーゼが声を掛けてきた。
 コイツと俺達は今では同じ釜の飯を食う仲間と言う事になっている。

「あぁ、そうだな」

「よし、お主ら、いつまでもバカな事やってるでない!出発するぞ!」

 何だかとても偉そうに言うアリシエーゼを若干シラケた目で見るが、お前だって騒いでただろうにとは声には出さない。

「なんじゃ、何か文句でもあるのか」

「・・・いや、別に」

 そんな俺の視線に気付いてアリシエーゼは詰め寄って来るが、ここで相手にしては話が進まなくなるのでスルーだ。
 こうして俺達はまた山の麓の洞窟に向けて進軍を開始するが、モリーゼが先頭に立って道案内をやっている。
 実際、遂さっきまで俺達を殺そうとした奴が今はとなっている状況に、篤や明莉は俺の能力を少しだけ説明したので納得はしているのだろうが、アルアレ達傭兵のメンツはどう思っているのだろうか。
 一応、俺がする事、している事に一々疑問や疑念を持たせない様にはしているが、さっき自分を殺そうとした奴が目の前に居てそいつがいきなり友好的になっている状況を何も思わないのだろうか。
 この力が何なのかとかに疑問を持たないかも知れないが、色々思ってはいそうだなと思うが、特にそう言う事をおくびにも出さないメンツに心の中で感謝した。

「・・・何かペースが上がってるな」

 集団の一番後ろを行く俺は隣に居るアリシエーゼに言う。

「モリーゼとか言ったか。彼奴はさっきの一連の事にもちゃんと確認していて状況も把握している様じゃし、身体強化をして進軍スピードを上げ始めた様じゃの」

 アリシエーゼはピョーンピョーンと大きな歩幅で飛ぶ様に走りながら答える。
 俺もこのペースは他に着いて行けるのだが、篤達はどうだろうと見ると、明莉と何やら話しながら楽しそうに列に着いて行っている様だ。
 もしかしたらペースがかなり上がった事に気付いていないのかも知れない・・・

「それよりお主は大丈夫なのか?」

「何が?」

「このペースに着いて来れるのかと聞いておるんじゃ~」

 そう言ってアリシエーゼはニチャるが逆に不敵な笑顔で返した。

「ふんッ、この程度どうと言う事は無いわッ」

 アリシエーゼから能力を分け与えられなくとも、素のままでもこのペースなら問題無かっただろうと思う。

 たぶん・・・きっと・・・

 自身のプライドを何とか維持しつつ進軍を暫く続けたが、本来ならこのペースが普通で、グングン進軍しながら、魔物や獣が現れたらペースを落とさずに狩って進むと言うのが本来の形なのだろう。
 その証拠に、モリーゼやパトリックが、突然列にから逸れたと思うと少し先に居たはぐれゴブリンやこちらに害を成す獣等を一刀で両断してすぐに列に戻って来ると言う事が何度かあった。
 モリーゼが列から離れても列自体はモリーゼに着いて行く事無く進み続けていた事を考えるときっと事前に傭兵とはその辺も打ち合わせ済みなのだろうと思った。

「モリーゼってめちゃめちゃ優秀だなぁ」

「・・・そうじゃな、人間であの動きが出来るやっぱりはなかなか居らんじゃろうな」

 アリシエーゼも同意する。

「だろう?正に隠密と言うに相応しいぜ」

 気の配り方から動きまで、全てが洗練されていて無駄が無く、任務には忠実にそして冷酷にと言うのだからまさに隠密、諜報系の能力があり、それに従事している、していたと見るのが正しいのだろう。

「う、うちのパトリックだって負けてないんじゃからなッ」

「何でお前がそこで対抗しようとするんだよ・・・」

 俺ははぁと一息ため息をつくが、確かにパトリックも当初の印象はどこへやら、斥候として今はかなり活発に動いているし、何よりもモリーゼに行った拷問の手法と言い、それを難無く熟すパトリックに今では明らかに過去にそう言った事に従事していたんだろうなの確信があった。

「確かにパトリックも良い動きするよな。最初は街の好青年ってイメージだったんだけど・・・」

「どんなイメージじゃ・・・」

「いや、そのままだよ。ただ、馬車に乗ってる時も思ったんだけど、あいつが御者台で索敵をずっとやってたから、あれ?と思ったんだ」

「まあ、あ奴も過去に色々あったようじゃしの。詮索してくれるでないぞ?」

「しねぇよ」

 これから信頼関係を構築していけば自ずとその辺も話してくれるかもしれないのでそれに期待する事にする。

「んでさ、隠密で思い付いちゃったんだけど・・・」

「あー、はいはい。分かっておるよ」

 アリシエーゼはまだ何も言ってもいないのにさもわかった様な口振りで返した。

「むッ、まだ何も言ってないだろ」

「言わんでも分かるわ」

「じゃあ何だよ、言ってみろッ」

「どうせモリーゼを自分のにでもするつもりじゃろ」

「・・・忍者とかダサい事言うなよ。それにモリーゼじゃない、モリーゼ達だ」

「忍者じゃ無かったらなんじゃ?」

「諜報部隊?斥候部隊?」

「同じじゃろ」

 そこまで言ってアリシエーゼは呆れた表情を見せた。

「ぐぬぬ・・・兎に角、モリーゼ達には俺傭兵団の斥候兼諜報活動を担ってもらう!」

「あー、はいはい。分かっておったよ」

 ぐぬぬ・・・

「いい案だろ。アイツさ、さっきの戦いで俺の初撃を手加減したとは言え躱したんだぜ」

「ほう・・・そう言えば妾が殺した奴らも人間にしてはなかなかの動きじゃったな」

「だろう?相当訓練されてるぜ」

「確かにそうじゃな」

 モリーゼはアリシエーゼに強化された俺の初撃を見事に躱したし、その後の判断や動きも良かった。
 モリーゼ自体は年は少し行っているので全盛期の動きからしたら多少は衰えている筈だ。
 それでもあれだけの動きが出来るのだからこれを使わない手は無い。
 仲間も言わずもがな。相当な手練達と見て間違い無い。

「とりあえず、出会ったら有無を言わさずからいきなり殺したりするなよ?」

「せんわッ!」

 どうだかな・・・

 そんな話をアリシエーゼとしながら結構な時間森の中を駆けていると、先頭のモリーゼが右手を上げて立ち止まり、それに伴って後続も続いて止まった。

「少し休憩します」

 そう言ってモリーゼは俺達に振り返り言う。
 アリシエーゼ以外の面々を見ると、アルアレ達は特に変わった様子は無かったが、篤と明莉は肩で息をして苦しそうだった。

 どれ位走っただろうか
 二時間くらいか?

「大丈夫か?」

 それを見て俺は二人に話し掛ける。

「だ、大丈夫、だ。まだまだいける、ぞ」

 息も絶え絶えに篤は言うが相当苦しそうだった。

「・・・少し休めば大丈夫です」

 一方明莉は肩で息をしていたがそれも直ぐに落ち着き、余力は有りそうに見えた。

 地力の違いかそれとも身体強化の能力差か

「とりあえず無理しないで。まだ身体強化覚えたてなんだしさ」

 そう言って俺は二人をそのままにしてモリーゼの方に歩いて行った。

「モリーゼ、あとどれ位?」

「後半刻程で麓の開けた場所まで辿り着くと思います」

 一時間くらいか

「そこに全員居るの?」

「通常ならば半数が残り、もう半数は洞窟で作業しているかと」

「わかった」

 全員纏まって居てくれれば楽だったが仕方無いかと俺はまた篤と明莉の元に戻った。

「暫く休憩したらまた一時間程走るけど大丈夫?」

「はいッ、大丈夫です」

「い、一時間!?いや、だ、大丈夫だ。問題無い」

 明莉は元気良く返事をしたが、篤は普段から運動等していないのだろうか、残りの時間から凡その距離を考えてか焦っていたが、篤の言うの人間としてはここは気丈に振る舞わないとと言う思いからだろうか、最後は平然と答えた。

 滑稽だな・・・ッぷ

「じゃあ、暫く休憩。篤は特に体力回復に専念!」

「むッ、わ、分かった・・・」

 篤はそう言って大きな木にもたれ掛かるようにして地べたに座り込んで大きく深呼吸をした。
 それを見てから俺は自分の構想に再度思いを馳せ、自然と顔がニヤけてしまった。

「気持ち悪い顔じゃの」

「・・・」

 アリシエーゼの空気を読まない一言を心を乱す事無くやり過ごす。

「・・・」

 平常心、平常心・・・

「・・・・・・・・・アリシエーゼ!テメェ!」

 気持ち悪いとか言うなッ
 絶対、俺の忍者軍団でギャフンと言わせてやるからなッ
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