異端の紅赤マギ

みどりのたぬき

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第1章:異世界と吸血姫編

第20話:攻勢防壁

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 早く!早く!!早く!!!

 そして遂に今か今かと待ち侘びた瞬間が訪れた。

 来た!!!
 パリンと音を立てて俺の十層目の防壁が突破される。それと同時に姫様も何か手応えを感じたのか、またあの二チャリとした笑顔になる。

「これで終わり!」

 笑いが止まらなかった。
 勿論、心の中でだが。
 十層から十五層の攻勢防壁は虚像タイプだ。
 攻撃を仕掛けていると思っているといつの間にか逆に攻勢されていると言うやつ。

 虚像タイプなんて俺が勝手に付けた名前だが、厨二っぽくてかっこいいだろ?

 出来れば姫様には三十層は突破して欲しいものだ。
 あそこには・・・ふふッ。
 考えただけで笑いが込み上げて来る。

 早くどんどん突破しろと心の中で思っていると突然――

「アーハッハッハッハ!やったぞ!突破してやった!」

 姫様が叫び出す。

 ・・・ん?

「妾に舐めた口を聞きおって!自分の力も弁えずにッ」

 姫様はそう言って光悦の表情を浮かべる。

 あー、これはあれだ

「今からお前を――あッな、何をするッ」

 何か一人芝居が始まったな・・・

「お、おいッやめろッ!わ、妾を誰だと――ォオッ」

 そしていきなり地面に転げ出した。

 え、なにコイツ・・・

「ッア!や、辞めろッ―――ッアア!ダ、ダメッ本当に辞めてッそ、そこはァァアアッ」

 一人で勝手に悶えに悶えている姫様を見て、先程までの昂っていた気持ちが一瞬で萎えてしまった。

 コイツ・・・
 たった一層の攻勢防壁すら突破出来ないのかよ

 未だに地面をゴロゴロと転がり時に手を突き出したり、足をジタバタさせている姫様を見て心底ガッカリする。
 とりあえずゴロゴロ転がっている姫様を改めて見てみる。
 色々といきなり過ぎて気付かなかったが、見た目はかなり可愛い。
 髪は輝くような光沢感が有り、芳醇な蜂蜜を思わせる金髪に碧眼と絵に描いた様なザ・お姫様だ。
 間違いなく、深窓の令嬢と言う言葉がピッタリと当て嵌る。外見だけ見れば。
 服装は白いワンピースに上には上品な刺繍をあしらった薄灰色の腰丈のフード付き外套を纏い、白いロングブーツは靴紐の結び目にピンクの花型のピンであろうか?可愛らしいワンポイントがくっ付いている。
 細かな所にも気を使う女子力みたいなものを感じる。
 普通の出会い方をしていたのであればかなり好印象の美少女と言うのは間違い無い。
 間違い無いのだが・・・
 ワンピースでゴロゴロと転がっているせいか、パンツは丸見えだし、見ているであろう幻想も何だか下世話なものの気がする。
 かなりガッカリだ。為人も、能力も全てが。

 そう思いため息を吐きどうするかと逡巡する。

「とりあえず無害な阿呆にするか」

 そのまま残念姫に一瞬で命令を行く。その瞬刻は刹那よりも速く瞬きすら超える。
 更に言うのであれば命令を書き込む前に残念姫の全てを知りその上でどうするか決めている。
 全てを瞬きの一瞬で終わらせる事に自分でも改めて最強だなと思ってしまうが、これが謙遜でも何でも無い事実であり、張合いが無い悲しき事柄だと思うとどうしても心の底から笑う事が出来ずにいた。

 こればっかりは今更だよな
 どうしようも無いんだから諦めるしかない

 残念姫の傍に歩み寄り、膝を付けジタバタとしている阿呆の顔を軽くペシペシと叩く。

「おーい、そろそろ起きろー」

 すると残念姫は両手を天に向かって突き出したままの格好で動きを止める。

 涎垂れてるぞー

「・・・・・・へ?あ、あれ?何が・・・」

 とりあえず起き上がったらどうだろうか・・・

 そんな事を思いつつ、俺は残念姫に手を差し伸べる。

「お前、残念過ぎるだろ・・・」

 そう言う俺の顔を寝転がりながら見た残念姫は段々と頭がクリアになって行き、全てを思い出し、そして状況を理解し始める。

「お、お前ッわ、私に何を・・・」

 妾じゃ無くなってるぞー

「まああれだ、とりあえず何も言わないでおいてやる」

 それを聞くと残念姫は暫くフリーズしてそして俺の差し出した手を無視して無言で立ち上がる。

「・・・・・・」

 立ち上がり俯く残念姫を見て何黙ってんだよ、メス●キなんて思ったが勿論声には出さない。

「・・・・・・・・・」
「あー、なんだ、これからもよろしく?」

 かなり適当な事を言ってるなと自分で自覚しつつもそんな言葉しか出ない俺も残念な奴なんじゃと思たっり思わなかったりした訳で。


 るーるるるる
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