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第1章:異世界と吸血姫編
第19話:姫様
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「「・・・・・・・・・・・・」」
遂々、緊張の余り変な事を口走っちまったがなんでコイツはこんなにアホ面晒してんだよ
声の主は二チャリとした笑顔から一転、口を空けて俺を見ていた。
「・・・・・・ッぷふー!お主、お主て!」
ああ?
なんだコイツ!
声の主はいきなり吹き出したと思ったらその場で膝を付き、バンバンと地面を手で叩いている。
何でそんなに笑ってるのか理解出来ず段々と苛立ってきた。
俺のそんな雰囲気を感じ取ったのかどうかは分からないが一頻り笑い終わるとスクッと立ち上がり俺に向き直る。
「いやぁ、久々に笑ったぞ、お主、なかなかやりおるな?」
また二チャリと気色悪い笑顔を浮かべてそんな事を宣って来た。
明らかに先程の俺の台詞を引用してネチネチと嫌な所を突っついて来る奴の特徴だ。
その証拠に自分で言っておいてぷくくッとまた吹き出しそうになっていた。
「なんだこのメ●ガキ、失礼な奴だな」
「んなっ!?メ、メス●キじゃと!失礼なのはお前のほうじゃ!誰がメス●キじゃ!」
「お前だよ、お前」
「な、なにぃぃ!」
「ニチャニチャと気持ち悪い顔しやがって」
「二、二チャ・・・!?」
おっ、プルプル小刻みに震えだしたぞ?
泣くか?泣くのか?
「もう良い!お前なんか嫌いじゃ!」
ぷいと顔を背けると其奴は焚き火前にいたアルアレへ向かって走り出した。
アルアレは走り寄って来た其奴を見て驚いて声を挙げた。
「ひ、姫様!?」
なぁぁにぃぃぃい!?
こ、こいつがそうなのか!?
「どうして此処に?」
「お前達の思考に誰かが割り込んで来たのが分かったから様子を見に来たんじゃ!そしたらコイツが!コイツが!」
そう言って姫様は俺を指指す。
その指先が指し示す俺を見たアルアレの様子が急変する。
「あ、あれ?姫様、ひ、姫様が、ガガガッ、わた、わた、わたしは、いら、い・・・があああああああああッ!!」
「うわぁ!ど、どうしたんじゃ!?」
突然アルアレはブクブクと泡を吹いて身体を激しく揺らし、訳が分からない事を口走り始めた。
それを見て姫様が慌てだす。
これは・・・
直様俺はアルアレの思考回路への入出力信号を塞き止めスタンバイ状態にさせる。
周りを見ると頭を抱えて呻く者、その場で叫び声を上げながら転げ周る者、何だか地獄絵図の様になり始めていた。
マジかよ・・・
とりあえず俺は全ての団員をスタンバイ状態に切り替えた。
「お前・・・何をした」
姫様は様子が可笑しくなり始めた途端に全く微動だにしなくなった者達を見て、物凄い形相で振り返り俺に詰め寄る。
「お前が雑に記憶を消去したりくっ付けたりしたから俺が書換える時に綺麗に上書き出来なかったんだ」
俺は淡々と事実を述べる。
「だからお前が急に現れた時に上書き出来なかったお前の雑なプログラムが残っていてアイツらの脳に悪さしたんだろうさ」
俺はプログラムと表現したが、ウィルスと言ってもいいと頭の中で付け加える。
「お、お前、妾と同じ事を・・・」
「お前みたいな三流と一緒にすんなっての」
その言葉を聞いた途端に姫様は猛禽類の様な眼に殺意を乗せて俺を射殺そうとする。
「・・・貴様ッ」
そして睨み付けると同時に俺への攻撃を開始した。
おー、やっぱり俺が思った通りじゃないか!
姫様の魔法は俺と同じで脳に作用する。それは今も続いている俺の脳へのアタックで感覚的に分かった。
人は誰しも心――いや、脳に壁を持つ。それは心の壁とも言えるし、所謂A●フィールドだ。
俺はいつもその壁をイメージする時にプレパラートを作る際のカバーガラスをイメージする。
他人の脳に侵入する際は必ずそのガラスをぶち破って侵入をしなくてはならない。
そのガラスを破る際にパリンッと薄いガラスが割れる音がして、更にガラスの割れる感覚があるので、プレパラートのカバーガラスなのだ。
これは俺だけの感覚なのだと思う。きっと俺と同じ能力を持つ者が居た場合、別の物をイメージするに違いない。そんな確信が俺の中にはあった。
へー、結構早いじゃん
そんな俺の感覚に意識を割いている間に姫様は俺の心の壁を六層程突破していた。
以前自分の能力を理解する為に共感覚を持つ奴に俺の心(頭)に侵入して貰った時がある。
その時は大体この位の時間で二層くらいしか突破出来ていなかった。つまり姫様はそいつの三倍程の能力を有する訳だ。
たぶん大体どんなに心の壁が厚い奴でも十層程しか壁は無い。これは感覚的にしか分からないがそこまで大きくはズレていないはずだ。
そう考えるともう半分以上は侵食された事になる。
まあ俺は三百層くらいあるんだけどね、壁が。
何人足りとも侵す事の出来ない領域
それが俺の頭の中だ。
しかも十層以降には攻勢防壁が張り巡らされている。
ああ、早く突破して来い
どんな反応するか楽しみだ
今まで俺の防壁を十枚以上抜いて来た奴は居ない。
だから攻勢防壁がきちんと動作するか分からないでいた。だがこの姫様は突破して来そうだった。
それが堪らなく嬉しく遂々口の端が持ち上がってしまう。
姫様はそれを見て訝しむ。
「お前どんだけ人を信じて無いのよッ」
そんな事を言いながら攻勢を強める。
「こんだけ分厚い壁持ってる奴なんて初めてッ」
今の発言から、姫様の中では防壁は一枚の分厚い壁なんだと思った。
俺は枚数で強弱を測り、姫様は壁の厚さで強弱を測る。
素晴らしい
そんな些細な違いすら知れる事は喜びであり、刺激的だ
あの世界に居たらきっとこんな感情を抱く事も無く腐って朽ちて行ったに違いない
ああ、早く突破してくれ
ほら、あと一枚だ
初めての事尽くしで俺は歓喜に震え、更にこの後にまた別の初めてがある事に心の中で笑いが止まらなかった。
遂々、緊張の余り変な事を口走っちまったがなんでコイツはこんなにアホ面晒してんだよ
声の主は二チャリとした笑顔から一転、口を空けて俺を見ていた。
「・・・・・・ッぷふー!お主、お主て!」
ああ?
なんだコイツ!
声の主はいきなり吹き出したと思ったらその場で膝を付き、バンバンと地面を手で叩いている。
何でそんなに笑ってるのか理解出来ず段々と苛立ってきた。
俺のそんな雰囲気を感じ取ったのかどうかは分からないが一頻り笑い終わるとスクッと立ち上がり俺に向き直る。
「いやぁ、久々に笑ったぞ、お主、なかなかやりおるな?」
また二チャリと気色悪い笑顔を浮かべてそんな事を宣って来た。
明らかに先程の俺の台詞を引用してネチネチと嫌な所を突っついて来る奴の特徴だ。
その証拠に自分で言っておいてぷくくッとまた吹き出しそうになっていた。
「なんだこのメ●ガキ、失礼な奴だな」
「んなっ!?メ、メス●キじゃと!失礼なのはお前のほうじゃ!誰がメス●キじゃ!」
「お前だよ、お前」
「な、なにぃぃ!」
「ニチャニチャと気持ち悪い顔しやがって」
「二、二チャ・・・!?」
おっ、プルプル小刻みに震えだしたぞ?
泣くか?泣くのか?
「もう良い!お前なんか嫌いじゃ!」
ぷいと顔を背けると其奴は焚き火前にいたアルアレへ向かって走り出した。
アルアレは走り寄って来た其奴を見て驚いて声を挙げた。
「ひ、姫様!?」
なぁぁにぃぃぃい!?
こ、こいつがそうなのか!?
「どうして此処に?」
「お前達の思考に誰かが割り込んで来たのが分かったから様子を見に来たんじゃ!そしたらコイツが!コイツが!」
そう言って姫様は俺を指指す。
その指先が指し示す俺を見たアルアレの様子が急変する。
「あ、あれ?姫様、ひ、姫様が、ガガガッ、わた、わた、わたしは、いら、い・・・があああああああああッ!!」
「うわぁ!ど、どうしたんじゃ!?」
突然アルアレはブクブクと泡を吹いて身体を激しく揺らし、訳が分からない事を口走り始めた。
それを見て姫様が慌てだす。
これは・・・
直様俺はアルアレの思考回路への入出力信号を塞き止めスタンバイ状態にさせる。
周りを見ると頭を抱えて呻く者、その場で叫び声を上げながら転げ周る者、何だか地獄絵図の様になり始めていた。
マジかよ・・・
とりあえず俺は全ての団員をスタンバイ状態に切り替えた。
「お前・・・何をした」
姫様は様子が可笑しくなり始めた途端に全く微動だにしなくなった者達を見て、物凄い形相で振り返り俺に詰め寄る。
「お前が雑に記憶を消去したりくっ付けたりしたから俺が書換える時に綺麗に上書き出来なかったんだ」
俺は淡々と事実を述べる。
「だからお前が急に現れた時に上書き出来なかったお前の雑なプログラムが残っていてアイツらの脳に悪さしたんだろうさ」
俺はプログラムと表現したが、ウィルスと言ってもいいと頭の中で付け加える。
「お、お前、妾と同じ事を・・・」
「お前みたいな三流と一緒にすんなっての」
その言葉を聞いた途端に姫様は猛禽類の様な眼に殺意を乗せて俺を射殺そうとする。
「・・・貴様ッ」
そして睨み付けると同時に俺への攻撃を開始した。
おー、やっぱり俺が思った通りじゃないか!
姫様の魔法は俺と同じで脳に作用する。それは今も続いている俺の脳へのアタックで感覚的に分かった。
人は誰しも心――いや、脳に壁を持つ。それは心の壁とも言えるし、所謂A●フィールドだ。
俺はいつもその壁をイメージする時にプレパラートを作る際のカバーガラスをイメージする。
他人の脳に侵入する際は必ずそのガラスをぶち破って侵入をしなくてはならない。
そのガラスを破る際にパリンッと薄いガラスが割れる音がして、更にガラスの割れる感覚があるので、プレパラートのカバーガラスなのだ。
これは俺だけの感覚なのだと思う。きっと俺と同じ能力を持つ者が居た場合、別の物をイメージするに違いない。そんな確信が俺の中にはあった。
へー、結構早いじゃん
そんな俺の感覚に意識を割いている間に姫様は俺の心の壁を六層程突破していた。
以前自分の能力を理解する為に共感覚を持つ奴に俺の心(頭)に侵入して貰った時がある。
その時は大体この位の時間で二層くらいしか突破出来ていなかった。つまり姫様はそいつの三倍程の能力を有する訳だ。
たぶん大体どんなに心の壁が厚い奴でも十層程しか壁は無い。これは感覚的にしか分からないがそこまで大きくはズレていないはずだ。
そう考えるともう半分以上は侵食された事になる。
まあ俺は三百層くらいあるんだけどね、壁が。
何人足りとも侵す事の出来ない領域
それが俺の頭の中だ。
しかも十層以降には攻勢防壁が張り巡らされている。
ああ、早く突破して来い
どんな反応するか楽しみだ
今まで俺の防壁を十枚以上抜いて来た奴は居ない。
だから攻勢防壁がきちんと動作するか分からないでいた。だがこの姫様は突破して来そうだった。
それが堪らなく嬉しく遂々口の端が持ち上がってしまう。
姫様はそれを見て訝しむ。
「お前どんだけ人を信じて無いのよッ」
そんな事を言いながら攻勢を強める。
「こんだけ分厚い壁持ってる奴なんて初めてッ」
今の発言から、姫様の中では防壁は一枚の分厚い壁なんだと思った。
俺は枚数で強弱を測り、姫様は壁の厚さで強弱を測る。
素晴らしい
そんな些細な違いすら知れる事は喜びであり、刺激的だ
あの世界に居たらきっとこんな感情を抱く事も無く腐って朽ちて行ったに違いない
ああ、早く突破してくれ
ほら、あと一枚だ
初めての事尽くしで俺は歓喜に震え、更にこの後にまた別の初めてがある事に心の中で笑いが止まらなかった。
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