異端の紅赤マギ

みどりのたぬき

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第1章:異世界と吸血姫編

第17話:穢人のやり方

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 うーん・・・
 あれから彼此一時間くらいは過ぎてるんでは無かろうか?
 焚き火に小石を投げ入れてみたり、ナッズの装備品の大剣や革鎧を触らせて貰ったり、リーダー・・・ポロンにこの辺りの事を聞いてみたり。

 リーダーはポロンって名前らしいよ

 って!んな事ぁどうだっていいんじゃ!!
 俺の!異世界飯!!
 何時になったら食わせてくれるのさ!?
 肉汁滴る野生飯!!

 俺がその辺りに悶絶しながら転げ回っているといつの間にかアルアレが俺の隣に腰を下ろした。
 トイズは――あ、居た。
 俺とは焚き火を挟んだ対角線上に居る姫様傭兵団員のとあるグループの輪の中に居て談笑をしている。が、トイズ自体は談笑している訳では無く談笑している者達に混じってはいるが膝を抱え黙って焚き火を眺めている。
 所謂、体育座りだ。暗っ!!

「トイズも少し考えるところがあるのでしょう」

 トイズの様子をジト目で見ていた俺に気付いてかどうかは分からないがアルアレがそう切り出して来た。

「考えるところってなによ?」

「まあなんと言うか・・・この世界は本当に穢人には優しくありません」

「・・・・・・」

「ここでは敢えてと言いますが、普通の魔力を持った者とそうでは無い者とが戦った場合、万に一つもには勝ち目は有りません」

 アルアレは敢えてとは言わない様に気を付け話しているのだろうか。それが返って俺には気になったりするのだが・・・まあいいか。

「言い切るんだ?」

「はい、魔力障壁を展開させていなくても身体強化は体内に魔力が循環している限りは無意識でも発動します」

 あ、そうなのね

「それは寝ている時にもです」

 えっ、そうなの!?

「私は戦闘時は後方から支援する立ち回りをします、つまりポジション的には後衛な訳ですが、私とは逆の前衛、そこのナッズなどは己の身体を武器に戦う者達は基本的には身体能力強化を突き詰めます」

「うん」

 魔法職とかは新しい魔法を覚えたり、既存の魔法の威力を上げるなりして、近接戦闘職は身体強化を突き詰めて行くって事ね

「魔力が無い者ではそんな後衛の私にすら怪我を負わせる事など間違い無く出来ないでしょう」

 それは後衛職は魔法を使っての戦闘を行うから日々新しい魔法を覚えるだとか既に使える魔法の効果を上げる努力をするが、前衛職は身体能力強化の効果を上げた方が効率的で前衛職のに直結すると言う事なのだろう。
 ただそれは身体能力強化の効果が一番凄い奴がイコール一番強いとは限らないと思うけどな。
 前衛職でも戦闘中に魔法が使えればそれだけ戦略に幅を持たせる事が出来るし、搦手もより使えると言う事だと俺は勝手に思う。
 けれどもそれだけ身体能力が強化された時の効果と言うか、穢人との能力差が俺が考えているよりも隔絶したものとなるのだろう。
 きっとアルアレが言っている事は嘘でも誇張でも何でも無く、其れが事実でありこの世の理なのだろう。と何となくそう感じた。

 でもそれは――

「でもそれってつまり、魔力が切れて身体能力が強化出来なければ穢人でもいい勝負が出来るって事だよな?」

「え?」

「あれ?魔力切れ起こしても身体能力強化って使えるの?」

「いや、魔力が無ければ強化出来ませんが・・・」

「じゃあ別に穢人が絶対に魔力有る奴に勝てないって事じゃないじゃん」

「魔力を切らせる事なんて殆ど有りませんよ。寝ている時ですら魔力は生成され体内を循環するのですから」

 おいおい、魔力ってのは無限では無く有限じゃねぇのか?
 生成される量プラス体内に留めておける貯蔵量よりも消費される量が多ければそれはいつかは魔力切れになると言う事だろうに
 でもまあアルアレが言わんとする事は分からなくは無い

 こと戦闘が始まれば速攻で片付ければいいだけだし魔力があって身体能力強化されていれば本当に穢人には万に一つも勝ち目は無いだろうし、正攻法では魔力持ちの牙城を崩す事は出来やしないんだろうと思う。
 と同時に別に正攻法じゃなけりゃどうとでもなりそうだけどな。とも思う。

 例えば圧倒的な物量で攻めるとかさ
 費用対効果は抜きにしてね

「例えばもの凄い強い魔物とアルアレ達は今対峙してるとするじゃん?」

「はい?」

「まあ例えばの話しさ、俺が言った状況を想像してみてよ」

 俺がそう言うとアルアレは眉を寄せる。

「何でとかそこはこうすればとか色々あると思うけど、とりあえずそう言うのは抜きにしてさ」

「わ、分かりました」

「なんの話ししてるんだ?・・ですか?」

 それまで俺の近くでゴロゴロとしていたナッズが急に会話に入って来た。

 って言うか、お前もう敬語なんて辞めちまえよ・・・

「ん、まあ単純に俺が言った状況の時お前達はどう行動するんだって話しだよ」

「ふーん、で、その状況ってのはなんだよ?・・・なんです?」

 こいつ態とやってんのか・・・?
 いや、たぶん完全なる天然な気がする

「例えば今、もの凄い強い魔物?魔獣?が現れたとするじゃん?んで、ここに居るメンツで対処しなければならないと」

「ふむふむ」

「…」

「んで、そいつはここにいる全員で掛かっても倒しきれるかどうか。全員が無傷で勝利出来るなんて事は無さそうで下手打てば半分・・・いや、全滅させられる可能性もある様なやつな訳」

「ほー、そいつ強ぇんだなぁ・・・です?」

「・・・・・・」

 ナッズは相変わらず素直で可愛らしい反応だが、アルアレは無言で俺の言葉の真意を探っている感じだな
 と言うよりもう俺が何が言いたいか気付いてるか?

「ちなみに撤退は出来ない。と言うか相手がさせてくれない」

「なぁにぃ!?」

 ナッズが叫んでるが敢えて無視する。

「さて、こんな時アンタらならどう対処する?」

「どうって言われても撤退出来ないんだろ?・・・出来ないんですよね?だったら戦うしかねぇんじゃねーのか?・・・です?」

「ナッズの言う通りです、この問いならそれしか選択肢は無いと思います」

「とりあえずナッズ、もう敬語使わなくていいよ」

 そう言うとナッズは一瞬嬉しそうにするが、アルアレをチラッと見てその喜びを直ぐに引っ込めた。

「まあアルアレの言う通りだけど俺が言いたいのはどんな戦い方をするのか。もっと言えばそんな状況で力を温存しておく様な戦い方をするのかって事だよ」

「しねぇだろ。俺が想像したのは一瞬でも油断したら簡単に腕の一本や二本持って行っちまう凶悪な何かだ、そんな奴相手に後の事なんか考えてられっかよ。あ、敬語・・・ちょっと辞めさせて貰うわ・・・」

「あぁ、別に構わないよ」

 そう言ってアルアレを端目で確認すると、やれやれと言った様子で首を降っている。

 まあ大丈夫だろう

「それでアルアレ、アンタは前衛がそれこそ死ぬ気で踏ん張ってる時に――」

「――もう、分かりました・・・貴方の言いたい事は・・・」

 あ、そう、それならいいよ

「まぁこの世に絶対なんて事は無いって事だね」

「はい・・・肝に命じておきます」

「いや、そこまでの事じゃないでしょ、ただ頭の片隅にでも置いておいた方がいいんじゃないかなって思っただけだよ」

「はい・・・」

「そうじゃないとアイツみたいに足元掬われるよ?」

 そう言って俺はトイズをチラリと見た。

 まだ体育座りだなアイツ・・・

「貴方はやはり・・・それはどうしたらあんな事が出来るのですか」

 別に俺はトイズに魔力切れを起こさせた訳ではない。合っていそうだがそうでは無いんだが・・・
 まあ似た様なものかもと思う。

「さてね、まあ世の中には色んな奴がいるって事だよ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!一体何の話しをしてるんだ?魔力??え?何??」

「・・・ふぅ、ナッズの事は私が常に全力で援護するって事ですよ」

 そう言って溜息を一つ吐きながらアルアレは微笑を浮かべた。

「????」

 ナッズはまったく理解はしていない様子だがアルアレに簡単に丸め込まれていた。

 腹減ったなぁ
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