異端の紅赤マギ

みどりのたぬき

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第1章:異世界と吸血姫編

第12話:魔力障壁

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「魔力障壁ですよ」

 トイズに変わりまたもやアルアレが横から口を挟む。

「魔力障壁?」

 まあ読んで字の如くなんだろうが。

「そうです、先程も言いましたが魔法と言うものは祈りにしろ詠唱にしろそこに魔力を乗せて発動させます。魔力の量や乗せ方などはその魔法により様々ではありますが、自身の体内にある魔力を操作すると言う点では変わりはありません」

「はあ…」

「魔力が無く、魔力を感じ取る事の出来ない貴方にはなかなか想像し難い話かもらしれませんが」

 そう言ってアルアレはトイズをチラリと横目で見る。トイズは既に幌の木枠に背を預ける形で楽な姿勢を取っており、先程の張り詰めた冷たい空気は微塵も感じさせていなかった。
 ただ俺を見るその目は明らかに話を始める前とは違っていた。

「魔力障壁と言うのは魔力を操作する事のみで発動できるです」

 魔力操作のみで発動する魔法
 つまりはみたいなものなのだろうか
 体内の魔力を体外へ放出してバリアみたいなものを作る?

「魔力を持つ者は自身の魔力を感じられる様になるとそれを体内で循環させたり体外に放出したりと言った事を自然と行う様になります。私は物心付く前からそれを行っていた様ですが、中には魔力操作の感覚を自己で覚える事の出来ない者もいますし、人それぞれ開始時期や習得期間の違いは当然有ります」

 お、なんだ?自慢か?

「ただ大半の人間は物心付く前にある程度の魔力操作は無意識に行える様になっています」

 あ、そうなんだ

「これは古い魔力を残しておくと体内に悪影響があるからです」

「悪影響ってどんな?」

「これもまた感じ方は千差万別ですが、多くは頭痛や倦怠感、吐気が主症状の人が殆どですが、腹痛を伴う場合もある様です」

 風邪の諸症状か何かですかー
 まあでも魔力は体内で産み出されて体外へ放出すると言うのを繰り返している訳か
 あれ?でも物心着く前から魔力操作が出来るとは言うが、産まれたばかりの赤子とかは流石に出来ないだろうし、その場合、古い魔力ってどうしてるんだろ?

「産まれたばかりの赤ちゃんとかまだ魔力操作出来ない場合って古い魔力ってどうしてるの?まさかそのまま放ったらかし?」

「まさか。基本的には魔力操作が出来るまでは親が代わりに体内の魔力を循環させてます」

 さっきの俺の魔力を引き出そうとした時みたい事をやるのだろうか

「具体的な想像はあんまり出来ないけど何となくは分かったよ」

「それは良かったです」

 それにしても体内の何処で生成されているんだろうな魔力って

 何て思ってはみたが魔力生成は脳で行われてはいないであろうと思う。
 だってアルアレが草花にも魔力は宿るって言ってたし。脳じゃ無かったら何処で生成されるんだろうか。血?細胞?
 考えてはみるものの魔力がどんなものかも分からないしもういいかなと若干面倒くさくなって来たりもしてきた。

「ちなみに魔力が枯渇した場合どうなるの?」

「枯渇ですか?」

「うん枯渇。例えば魔法連続で発動しちゃって自分の体内の内蔵魔力を使い切っちゃったとかって場合」

「…貴方は魔力を扱えないし体内で生成出来ないのですよね?」

「え?うん」

「そんな貴方が何故その様な考えに到れるのか不思議でなりません…」

 また不信感を植え付けてしまったかな?
 でも、もうどうでもいいや

「まあまあ、そんな事考えても仕方無いよ?」

「はぁ…まあいいです、魔力が枯渇したらですよね?」

「うん」

「魔力とは実体の無い、触れる事の出来ない空気の様な物なのですが魔力障壁とする事で魔力は実体を得ます」

「透明な無色の壁の様なものを作り出すのが魔力障壁と言う魔法って事だよね?」

「その通りです、戦闘中なら自分を護るその壁を作り出す事が出来なくなる訳ですから当然自身の命の危機となるでしょう」

「確かに自分は攻撃を防ぐ壁が無いのに、相手には攻撃を防ぐ壁があるってどんなクソゲーだよって話だわな」

「ク、クソ…?ま、まあ、大まかに言えばそんな所ですが、貴方は魔力障壁を少し過大評価しているかもしれませんね」

「過大評価?」

「はい、魔力障壁と言っていますが、実際はそれを言葉にするなら『膜』であり魔力の膜を作り出しているに過ぎません」

「膜…か」

 確かに障壁と聞くと、石造り等の壁を俺は思い浮かべていたが、膜と聞くとどうだろう。
 でもトイズに殴り掛かって弾かれた時は膜なんて感じでは無かった。なんと言うか、本当に分厚いゴムの塊を殴ってる様な感覚だった。
 でもアルアレが膜と言うのだからそうなのだろう。ペラペラな布切れを俺は想像する。そんなもので魔法や、剣やナイフによる物理的な攻撃を防げるイメージは湧かない。
 魔力持ちと穢人との感じ方の差異とかだろうか。

「イメージは出来ましたか?魔力障壁を展開していたらまったく無傷で立ち回れるかと問われれば否です」

「じゃあ何で態々魔力を消費してそんなショボい膜を張るんだ?」

「ショ、ショボイ…?と、兎に角、一般的には魔力障壁は体内魔力を身体の外側に纏まり付かせるイメージで発動します」

 元の世界のバトル漫画とかでよくある闘気或いは気を纏うみたいなものだろうと想像する。

「実際には魔力そのものを纏っている訳ではありませんが、まあ同じ様なものですね」
「なるほどね。何かその状態だと、超人的な力とか得られそうだよね。大岩を殴って砕けたり、常人の何倍ものスピードで行動出来たりさ!」

「「………」」

 俺の発言を聞くと、アルアレとトイズは押し黙ってしまった。
 俺を訝しげに見詰めており、俺はまた何か失言してしまったのだと気付く。

 アニメ脳で考えて話すのは辞めた方がいいだろうか…

「あ、あれ?何か変な事言ったかな…?」

「「………」」

 二人とも黙ったままであったが、アルアレは何かを考えて一応の答えが出た様子で口を開く。

「…この世には、自身の魔力を自在に押さえ込んだりする事が出来る者も居るそうですが、仮に貴方がそんな事を出来るとしても、私達に穢人だと思わせる理由が思い付きません。あの考えに至った理由も魔力や魔法に関する話を人伝えに聞いていればイメージは出来なくとも知識として持っている事は有り得そうですし、腑に落ちませんが、まあ、そんな所ではないでしょうか」

 そう言ってアルアレはトイズをチラリと流し見る。
 アルアレから視線を向けられトイズも小さく頷いた。

 よく分からないがたぶん、魔力障壁を展開して身体を魔力(実際は魔力そのものではないみたいだが)で覆うと、自身のと考えて良いのだろう。
 いやぁでも何でそれで身体能力が増える訳?
 だって、さっきも言ったが魔力を纏えば防御的な意味合いではその魔力に覆われてる部分は物理的に衝撃を緩和出来たりするのだろうから大岩をぶん殴ったとしても怪我とかしないんだろうなとは想像出来る。
 だけど、魔力を纏っただけで大岩を砕けるだけの筋力が身に付くってのが理解出来ない。
 大岩を砕くんだ。腕周りや拳だけでなく、力を伝える為の下半身の筋肉、それこそ全身の筋肉量は半端無く増やさないと大岩なんて砕けないだろう。
 でもさっきのトイズを見てる限り魔力障壁を展開しただけでそんなスーパー●●ヤ人2ばりの筋肉膨張は見受けられなかった。
 なので魔力を纏ったからと言って筋肉量が物理的に増える訳では無い。だったら大岩を砕くそのパワーは何処から来て肉体にどう作用しているんだろうか…

 魔力を持たない俺がこんな事考えるのはナンセンスか
 分かった所で使えないんだから考えるだけ無駄だな
 きっとファンタジー世界のファンタジー設定で魔力スゲーみたいな事なんだろーさ(適当)

 まあでも俺の考え方はこの世界の穢人とは全然違うんだろうな。アルアレやトイズの反応は普通なんだろう。
 普通に考えて魔力を持たない、魔法の「ま」の字も知らない様な穢人は、魔力障壁を展開したら身体能力も強化されるなんて考えには至らないか。

「そ、そうそう、昔にうちに良く来ていた商人が護衛として連れて来ていたが居て、その人に色々話を聞かせて貰ってたんだよ!アハハハ…だから知識だけは色々身に付いちゃってさぁ」

「ま、魔術師!?!?」

「え?」

 俺の魔術師と言う言葉にあからさまに動揺して声を裏返えらせるアルアレと、左手を腰に刺している短剣の柄に手を掛けて半身になり、こちらを警戒するトイズを見て俺は遂々深い溜息を吐いてしまった。

「はぁぁぁ…何かもう面倒臭くなって来ちゃったよ」

 心からの心境を思わず吐露し、俺は二人の思考を停止させるのであった。

 異世界メンドクセ
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