異端の紅赤マギ

みどりのたぬき

文字の大きさ
上 下
3 / 335
第1章:異世界と吸血姫編

第3話:遭遇

しおりを挟む
 ここは異世界!俺は転移者!!


 答えが目の前にはあった。近付いてみればそれはもう火を見るより明らかだった。
 俺って異世界転移した?に対する明確な解答が欲しかった。近付く事でその解答を得る事が出来ると思い嬉嬉として駆け出し今はその解答を得る事が出来た。
 降りてきた丘陵の頂からでは遠くて分からなかったが、黒煙付近にはかなり大型の幌付きの荷馬車が有りその荷馬車を中心として五十名程だろうか人間がを纏い、を振り回しながら「わー」だの「やー」だのと叫んでいる。
 その合戦の様な事をしている集団に二十メートル程の所まで近付いて改めて辺りを見回す。

 とりあえずここが遮蔽物の何も無い所で逆に俺にとっては都合が良かったかな
 荷馬車の中に人が居るかも知れないがそれは後で対応しよう

 数人が俺に気付き目だけをコチラに向けるが、目の前には自分を殺そうとする者が迫り来る最中、顔を向ける事が出来ないのかすぐに相対者へと視線を皆戻し戦闘に集中する。
 それはそうだろうと思う。端から見ても真剣勝負で命のやり取りをしている様にしか見えない。
 そんな中で集中力を切らせばどうなるかなど、素人である俺でも分かる。
 余り近付き過ぎると敵対行動と見做されてしまう事も考えて少し余裕を持って立ち止まる。
 兎にも角にもまずは話がしたかった。
 なので全員
 そう決めて更に集団へと歩を進め、素早くその場にいる全員をする。
 そして補足が完了したのを認識したと自意識でそう思わせ―――実際は認識すらする必要は無いが―――てから自然と口の端を持ち上げる。
 まだ集団とは十メートル程離れており、俺の呟きを拾う者は居ないであろうが敢えてその言葉を口にする。

「止まれ」

 わー!やー!



 ん?あれ?

「と、止まれ!」

 わー!わー!ぎゃー!

 俺の一番近くでお互いの剣で鍔迫り合いをする戦士風の男2人は必死の形相で一進一退の攻防を繰り広げているが、鍔迫り合いを制し相手を押し返した短髪で茶髪の大柄な偉丈夫はチラリと俺を一瞥すると直ぐに相対者に視線を戻した。

 …アレ??

 焦り辺りを見回すも、先程と変わらぬ殺し合いの真最中であり剣と剣がぶつかり合う甲高い金属音や何を言ってるか分からない叫びが其処彼処から聴こえてくる。
 無意識に俺は前進を止め後退りしていた。
 嬉嬉として丘陵を駆け下りて来た時の高揚感や勇み奮う感覚は無く、目の前に大柄な偉丈夫が目に付いていたからであろうか寧ろ山で偶発的に熊に遭遇してしまった時の様な絶望感と焦燥感が自分の中に沸々と湧き出てくるのを感じ取っていた。

 初っ端から躓くとは思ってもみなかった…
 このが使えないとハードモードってよりヘルモードじゃね!?

 異世界に来てしまったはいいが、身体的な能力は以前と変わらない気がする。
 魔法は…使えそうにない。
 まだ魔法は使い方が理解出来てないだけって可能性も有るとは思うが…

 かなり焦っていた。焦っていたからこれからどうすればいいか解らず、解らないから考えても解らない。
 異世界と言う世の男子ならその単語だけで半数くらいは心躍る世界に飛び込んだんだか、飛ばされたんだか分からないが、兎に角異世界に転移したっぽい訳だが、異世界初心者な俺でも何のチートも無く魑魅魍魎が跋扈していそうな、それこそ命がいくつあっても足り無さそうな世界で本当に生きていけるのかと甚だ疑問だった。

 いや待てよ…
 前世界の知識を駆使して生産者などとして生計を立てると言うのも有りかもしれない
 イケそうな気がする
 前世界ではそれなりに知識はいたし

 ただ、折角異世界に来たんだったら剣で魔物を斬り斃し、魔法で敵の大群を薙ぎ払い蒼空を翔け、眉目麗しきエルフや獣耳が愛らしい獣人や亜人の女性とキャッキャウフフ的な何かのイベントが巻き起こる。そんな異世界ライフがいいと思った。

 だって異世界だよ!?
 異世界転移って言ったら絶対そういうの想像す―――ん…?
 あ、異世、界っ!?

 ここまで来て漸く重大な事実に気が付く。

 そうだよ、ここは異世界なんだ!
 言語なんて暫く自分のからすっかり忘れてた!

 其処に思い至るともう目の前の景色は眩いばかりに光り輝いて見え、世界に祝福されているが如く心が幸福感と安堵感に満ちてゆく。
 つまりだ。











 神様ありがとぅ!
 そうと分かればやる事は一つ!!

 頭も高速フル回転である。辺りを見渡し直ぐに荷馬車へと目が行く。
 かなり大きな荷馬車だ。幌付きで中は大人が数人立って小躍り出来そうなくらいはある。
 荷台の外側の側面には映画や漫画でしか見た事の無い様な大きな樽が三つ並んで装着されている。
 たぶん反対側も同じだと推測出来る。
 そんな大きさなので荷台を轢く馬も二頭以上は必要そうに思うが―――

 いやぁ、黒●がいるんですよ、●王が

 ばんえい競馬の胸筋ムキムキの暴れ馬と中山大好きなサラブレッドを足して3掛けしたくらいのもの凄いのが荷台を括り付けてそこに居た。
 黒●号のすぐ傍では人間が切った張ったを繰り広げている訳だが、そんなの意に介さず足元の草をムシャムシャと食べていた。
 正に覇者が駆るに相応しい威風堂々とした佇まい!きっと人間の頭蓋なんか簡単にプキャッと踏み潰してしまうに違いない。

 おっと、そんな事は今はどうでもいい――

 ――この戦況を丘陵の頂から俯瞰して見た時も、今現在近くで見ていても一方の勢力が荷馬車を護る様に人員が展開して状況に対応している様に見える。
 つまりは荷馬車に護衛対象者か或いは護衛対象物が存在すると言う可能性がある。
 もしそうならば荷馬車まで抜かれて護衛対象の人物が殺されるなり物を奪取されるなりしたら守備側の負けが確定してしまう訳で、そうなると荷馬車を直接護衛する人員は配備していると考えた方が良いだろう。
 そしてそんな最後の砦を護る人員は所謂指揮官だとかそう言った存在が就くのではと推測したりする訳だが、それは即ち護衛対象が人だった場合は直接護衛する人員は者かもしれない。
 だって護衛対象が高貴な身分の者の直接の護衛はそれなりの身分の者等が行うのかもしれないなとアニメ脳な俺は考える。
 異世界だけに貴族なんて者も居るかも知れないし、そうであったならばその護衛対象や直衛に就く者は高度な教育を受けている可能性が高い。
 もしそうであるならば一気にこの世界の知識と言うが手に入る可能性がある。
 そこまで考え今はそれは良い――
 ――と敢えて思料を止め、まるで肉食獣が獲物に狙いを定めて音も無く背後から忍び寄るが如く少し身を屈め眼を細め荷馬車付近を観察する。
 すると幌の出入口付近に小楯を右腕に装備し、革鎧に身を包んだ濁色めいた金髪の男が目に入る。
 男は仕切りに辺りを見廻し相変わらず何を言ってるか解らないが大声で辺りに指示を出している様に見えた。

 こいつだな

 異世界初心者な俺から見てもここに居るこいつ等は騎士と言う感じはしない。
 騎士って言ったらやっぱり全身鉄鎧に身を包んで大きな鉄盾を持っていたり、長剣を胸の前に掲げてジャキンッとかやってるイメージだ。
 だが目の前のこいつらは革鎧に身を包み戦い方もなんと言うか泥臭い。
 異世界風に言うと冒険者と言うものじゃなかろうか。そんな冒険者に指揮官と言う者が存在するかどうかは分からないし、イメージ的には冒険者は異世界の騎士に有りがちな形式張ったものや柵を嫌う傾向に有る様に思えるので冒険者の指揮官なんてのはあまり想像出来ない。アニメ脳で考えればだが。
 ただ、この金髪の男は明らかに周りに対して指示的なものを出してるが、騎士で無いとするなら冒険者パーティーのリーダー的な存在だと思えばしっくり来る気がした。
 そんな事を思いその金髪の男に集中する。脳の構造違い等の懸念を逡巡するがその不安も杞憂に終わる。
 刹那の時には既にこの世界の又はこの地域?国?限定かもしれないが異世界言語を自分の終えていた。





 おっと言い忘れてた
 俺、なんだぜ
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。  そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!  気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?  するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。  だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──  でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

クラスまるごと異世界転移

八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。 ソレは突然訪れた。 『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』 そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。 …そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。 どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。 …大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても… そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

処理中です...