93 / 114
第九十話 対面
しおりを挟む
ミラたちの他にテンションが上がった職員たちも加わり騒がしくなった中、なんとか抜け出したセシリヤはヴァシリーの待つ応接室へと向かった。ミラたちはセシリヤが抜け出したことに気付いていない。
扉を開けると「よ!」と足を組んでいたヴァシリーが片手を上げて軽く振った。
「よく二人から抜け出せたな」
「いや、あれから職員たちが押し寄せてきてごちゃごちゃしている間になんとか」
ソファーに座ったセシリヤは重く息を吐きだした。
「疲れたぁ!」
「まあ、俺との戦闘の後にあの二人じゃな。お疲れ~」
「よく言うわよ……。誰のせいで疲れたと……それで、なんで呼んだの?」
問うたセシリヤにヴァシリーが真剣な表情になった。セシリヤに緊張が走る。
「セシリヤ……そのペンダントは」
「え? ああ、これ?」
魔石を掴んで見せた。ヴァシリーはそれをジッと見つめて眉を寄せた。彼の視線を受けてティルラも緊張した面持ちで見つめ返す。
(な、なに……)
「これは魔石だな?」
問いにセシリヤは素直に頷いた。ウソをついたところで彼には通用しない。ヴァシリーは気付いた上でわざわざ聞いているのだ。
「ピー助……いえ、パンディオンと対峙した洞窟で拾いました。初めはただの石でしたが、私の魔力を吸収して魔力を帯びて今の状態になっています」
「中に封じられているのは?」
視線をティルラから外すことなく続けて問うヴァシリーにセシリヤは「自称女神? です」と首を傾けた。
「って、何で疑問形なのよ⁉」
耐え切れずティルラがツッコミを入れた。目の前のヴァシリーはさすがに驚いたのか目を丸くしている。目をしばたたかせてセシリヤとティルラを交互に見た。
「喋った……」
「あ……。いえ、その……」
ティルラはしどろもどろになりながら視線を逸らす。まずい、と内心焦った。助けを求めようとセシリヤを見上げれば、相手は手を額に当てて溜息を吐いていた。
「ティルラが勝手に喋るから」
「だって、自称でも、女神? でもなく本物の女神なのにセシリヤが疑問形なのが悪いんじゃない!」
「……ティルラ?」
「私の事を知ってるの⁉」
名前を呼ばれたティルラは瞳を輝かせて魔石にへばり付いた。思わずヴァシリーの口から「うおっ」と声が漏れる。
「いや、知ってるも何も……」
濁しながらセシリヤを見れば、相手は目の前で首を静かに左右へと振った。余計なことは話すな、と瞳が訴えている。
「俺くらいになると知識量も多いからな。女神の名前くらいは知ってるさ!」
「ほら、セシリヤ! ちゃんと私の名前認知されてるじゃない!」
「あーうん。そうね、良かったわね、女神様……」
ほぼ棒読みのセシリヤにティルラは不満そうに頬を膨らませた。
「さて、気になってた事も聞けたし。次はお前の希望とやらを聞こうか」
足を組みなおしたヴァシリーにセシリヤは少しだけ逡巡した後、口を開いた。
扉を開けると「よ!」と足を組んでいたヴァシリーが片手を上げて軽く振った。
「よく二人から抜け出せたな」
「いや、あれから職員たちが押し寄せてきてごちゃごちゃしている間になんとか」
ソファーに座ったセシリヤは重く息を吐きだした。
「疲れたぁ!」
「まあ、俺との戦闘の後にあの二人じゃな。お疲れ~」
「よく言うわよ……。誰のせいで疲れたと……それで、なんで呼んだの?」
問うたセシリヤにヴァシリーが真剣な表情になった。セシリヤに緊張が走る。
「セシリヤ……そのペンダントは」
「え? ああ、これ?」
魔石を掴んで見せた。ヴァシリーはそれをジッと見つめて眉を寄せた。彼の視線を受けてティルラも緊張した面持ちで見つめ返す。
(な、なに……)
「これは魔石だな?」
問いにセシリヤは素直に頷いた。ウソをついたところで彼には通用しない。ヴァシリーは気付いた上でわざわざ聞いているのだ。
「ピー助……いえ、パンディオンと対峙した洞窟で拾いました。初めはただの石でしたが、私の魔力を吸収して魔力を帯びて今の状態になっています」
「中に封じられているのは?」
視線をティルラから外すことなく続けて問うヴァシリーにセシリヤは「自称女神? です」と首を傾けた。
「って、何で疑問形なのよ⁉」
耐え切れずティルラがツッコミを入れた。目の前のヴァシリーはさすがに驚いたのか目を丸くしている。目をしばたたかせてセシリヤとティルラを交互に見た。
「喋った……」
「あ……。いえ、その……」
ティルラはしどろもどろになりながら視線を逸らす。まずい、と内心焦った。助けを求めようとセシリヤを見上げれば、相手は手を額に当てて溜息を吐いていた。
「ティルラが勝手に喋るから」
「だって、自称でも、女神? でもなく本物の女神なのにセシリヤが疑問形なのが悪いんじゃない!」
「……ティルラ?」
「私の事を知ってるの⁉」
名前を呼ばれたティルラは瞳を輝かせて魔石にへばり付いた。思わずヴァシリーの口から「うおっ」と声が漏れる。
「いや、知ってるも何も……」
濁しながらセシリヤを見れば、相手は目の前で首を静かに左右へと振った。余計なことは話すな、と瞳が訴えている。
「俺くらいになると知識量も多いからな。女神の名前くらいは知ってるさ!」
「ほら、セシリヤ! ちゃんと私の名前認知されてるじゃない!」
「あーうん。そうね、良かったわね、女神様……」
ほぼ棒読みのセシリヤにティルラは不満そうに頬を膨らませた。
「さて、気になってた事も聞けたし。次はお前の希望とやらを聞こうか」
足を組みなおしたヴァシリーにセシリヤは少しだけ逡巡した後、口を開いた。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

聖女は聞いてしまった
夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」
父である国王に、そう言われて育った聖女。
彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。
聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。
そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。
旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。
しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。
ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー!
※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

白い結婚をめぐる二年の攻防
藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」
「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」
「え、いやその」
父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。
だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。
妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。
※ なろうにも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる