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第八十五話 ヴァシリー戦 2/4
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「って、ええ⁉ 攻撃魔法は無効なんじゃないの⁉」
我慢できずにティルラがツッコミを入れる。
「ちょっと、黙って!」
「あ、はい……。スミマセン」
セシリヤに怒られたティルラは魔石の中で小さくなりながら謝った。その間にヴァシリーは氷と炎の矢を剣ですべて叩き落していた。地面に落とされた氷に炎が当たり水たまりをいくつも作る。
「おいおい、セシリヤちゃん~攻撃魔法とかせこい手を使うなよ~」
「全部叩き落しておきながら言わないでほしいわ……」
「息は整ったかー?」
わざわざ聞いてくる兄弟子にセシリヤの額に青筋が浮かぶ。返事の代わりにセシリヤはもう一度二種類の矢を相手に放つ。
「はぁー⁉ ちょっと、セシリヤちゃん! いきなりはやめろよ、いきなりは!」
言いながらもヴァシリーはすべて剣で叩き落していく。叩き落している間にセシリヤは駆け出し、兄弟子へと距離を詰めた。彼の間合いに入る直前で地面を蹴り、風の魔法を使って高く飛んだ。重力に従ってヴァシリーへ向かい、剣を振り下ろす。見上げた相手も剣を構えてセシリヤの攻撃を受ける体制を取る。剣身同士がぶつかり、金属音が響いた。ヴァシリーの剣に手を付いて相手の背後に着地する。すかさず、ヴァシリーは剣を横に振った。剣先が当たる前に姿勢を低くして避けたセシリヤは彼へ足払いを掛ける。
「おっと」
バランスを崩しながらも宙で体を捻り、剣を振り下ろした。セシリヤも剣で受け止めて互いに後方へ飛び退った。
「はあ、はあ、はあ……」
肩で息をしながら剣を握り直すセシリヤに対して、ヴァシリーは息一つ上がっていない。
「セシリヤちゃんはもう少し体力付けた方がいいんじゃない?」
「うっさい!」
笑いながら言う兄弟子にセシリヤが怒鳴る。頬を伝い、流れる汗を手の甲で拭いながらセシリヤは口角を上げた。
「その余裕も今だけよ」
セシリヤは指を鳴らした。乾いた音が聞こえた瞬間、ヴァシリーが「うお⁉」と珍しく慌てたような声を上げた。彼の足元から凍り始めていた。ヴァシリーが後退した先は彼が先ほど叩き落した氷と炎の矢が落ちて水たまりになったところだ。それを利用してセシリヤは氷結魔法を使い彼の足を凍らせた。
「まあ、これも単なる時間稼ぎにしかならないんだけどさ」
それでも息を整える時間は稼げる。セシリヤは何度か深呼吸して息を整えた。
「セシリヤちゃん~、師匠から剣の稽古をつけてもらったのにどうして魔法に頼るんだよ~」
「剣の稽古……ねえ……」
セシリヤは遠い目をすると師匠との稽古を思い出していた。
我慢できずにティルラがツッコミを入れる。
「ちょっと、黙って!」
「あ、はい……。スミマセン」
セシリヤに怒られたティルラは魔石の中で小さくなりながら謝った。その間にヴァシリーは氷と炎の矢を剣ですべて叩き落していた。地面に落とされた氷に炎が当たり水たまりをいくつも作る。
「おいおい、セシリヤちゃん~攻撃魔法とかせこい手を使うなよ~」
「全部叩き落しておきながら言わないでほしいわ……」
「息は整ったかー?」
わざわざ聞いてくる兄弟子にセシリヤの額に青筋が浮かぶ。返事の代わりにセシリヤはもう一度二種類の矢を相手に放つ。
「はぁー⁉ ちょっと、セシリヤちゃん! いきなりはやめろよ、いきなりは!」
言いながらもヴァシリーはすべて剣で叩き落していく。叩き落している間にセシリヤは駆け出し、兄弟子へと距離を詰めた。彼の間合いに入る直前で地面を蹴り、風の魔法を使って高く飛んだ。重力に従ってヴァシリーへ向かい、剣を振り下ろす。見上げた相手も剣を構えてセシリヤの攻撃を受ける体制を取る。剣身同士がぶつかり、金属音が響いた。ヴァシリーの剣に手を付いて相手の背後に着地する。すかさず、ヴァシリーは剣を横に振った。剣先が当たる前に姿勢を低くして避けたセシリヤは彼へ足払いを掛ける。
「おっと」
バランスを崩しながらも宙で体を捻り、剣を振り下ろした。セシリヤも剣で受け止めて互いに後方へ飛び退った。
「はあ、はあ、はあ……」
肩で息をしながら剣を握り直すセシリヤに対して、ヴァシリーは息一つ上がっていない。
「セシリヤちゃんはもう少し体力付けた方がいいんじゃない?」
「うっさい!」
笑いながら言う兄弟子にセシリヤが怒鳴る。頬を伝い、流れる汗を手の甲で拭いながらセシリヤは口角を上げた。
「その余裕も今だけよ」
セシリヤは指を鳴らした。乾いた音が聞こえた瞬間、ヴァシリーが「うお⁉」と珍しく慌てたような声を上げた。彼の足元から凍り始めていた。ヴァシリーが後退した先は彼が先ほど叩き落した氷と炎の矢が落ちて水たまりになったところだ。それを利用してセシリヤは氷結魔法を使い彼の足を凍らせた。
「まあ、これも単なる時間稼ぎにしかならないんだけどさ」
それでも息を整える時間は稼げる。セシリヤは何度か深呼吸して息を整えた。
「セシリヤちゃん~、師匠から剣の稽古をつけてもらったのにどうして魔法に頼るんだよ~」
「剣の稽古……ねえ……」
セシリヤは遠い目をすると師匠との稽古を思い出していた。
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