翠眼の魔道士

桜乃華

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第五十九話 ペンダントとイヤリング 1/2

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 「具体的にはどう加工するんですか?」

 一度咳払いをしたセシリヤがクルバへ問う。

 「ん? ああ。ジュエリークリップで挟めば穴を開けずに固定出来るんだよ。ちょいと待っとくれ」

 今持ってくるから、とクルバは部屋を出て行った。彼女の気配が消えてからティルラが息を吐いた。

 「焦った! セシリヤは何か失礼な想像して笑ってなかった?」

 低めの声音にセシリヤは「はは、そんなまさか」と視線を逸らした。ティルラからの視線が痛い気がするが、気付かないふりをしようと決め込んでいた。

 「ま、まあ。これからはポケット越しからじゃなくてちゃんと自分の目で状況を把握できるようになるから良かったじゃない? ね、女神サマ」

 そう言うと、ティルラは目をしばたたかせた。一呼吸置いてようやく気付いたようだ。エメラルド色の瞳を見開いて「なるほど、そう言う事か……クルバもなかなかいい事考えるわね」と感心したように零した。
 反対にセシリヤは別の事に気付いてしまった。

 (今まではポケット越しにティルラが騒いでも声が遠くて助かったけど、これからは距離が近くなるのか……)

 騒ぐティルラの声の落とし方についてこれからどうしようかと考えていたセシリヤの元にクルバが戻ってきた。木箱を手にしている。テーブルに置いて蓋を開ければ天然石や金具などのパーツが細かく分けられて入っていた。

 「たくさんあるんですね」

 覗き込んだセシリヤが種類の多さに目を丸くしながら素直な感想を零した。

 「そうさ。アクセサリー一つ作るのに色んなパーツが組み合わされて世界に一つだけの物が出来るのさ」

 クルバがチェーンを手に取りながら言う。

 「セシリヤちゃん、ちょいとその石を貸してくれないかい?」

 「あ、はい。どうぞ」

 セシリヤはクルバへと魔石を手渡した。魔石の大きさは二十㎜ほど。クルバは魔石をジッと見つめて次にパーツへと視線を移した。幾つかのパーツを選んだクルバがテーブルに置いていく。セシリヤはわけが分からないまま並べられたパーツを見つめている。肩に止まったピー助も首を傾けながら同じように見ていた。

 「セシリヤちゃん、どのパーツが好みかい?」

 「え?」

 突然振られてセシリヤの口から間の抜けた声が零れた。

 「今並べたのはこの石の大きさに合うジュエリークリップなんだ。ジュエリークリップにもデザインがあってね、せっかくなら好きなデザインを付けた方がいいだろ?」

 女の子なんだから、とクルバが片目を瞑りながら言う。

 その言葉に少しくすぐったさを感じながらセシリヤはテーブルに並んだジュエリークリップへと視線を落とした。雪の結晶、リーフ、バラの蕾と葉があしらわれた物、蝶が舞っているように見える物と様々だ。色もシルバーとゴールドがあり、セシリヤは「うーん」と唸りながら手を伸ばした。
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