翠眼の魔道士

桜乃華

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第四十五話 土人形戦 3/3

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 土人形がゆっくりとした足取りで向かってくる。セシリヤはもう片方の手を動かして土人形の足元へ火柱を出現させた。動きを止める土人形の周りにさらに火柱を増やして炎の檻を作った。

 「ちょっと大人しくしててよ……今すぐ焼いてあげるから」

 ふ、ふふふっ……と笑うセシリヤにアンディーンとティルラは同時に思った。

 (よっぽどストレス溜まってたんだなぁ~)

 「炎よ、我が下に集え」

 詠唱の途中で土人形の一体が炎の檻を掴み左右へ引けば、土で出来た手が焼かれてボロボロと地面へと落ちていく。

 「焔よ、焼け、我が敵を全て焼き尽くせ! スコーチングフレイム」

 凝縮された炎の塊を炎の檻に閉じ込められている土人形へ向かって放てば、炎の檻と合わさって燃え上がる。熱風がセシリヤの白銀の髪を揺らした。

 「暑っ……」

 約千℃の高温で焼かれている土人形を見ながらセシリヤがぽつり、と零す。汗が顎を伝い、地面へと落ちた。それを手で拭いながら目を凝らす。

 「これくらいの温度で焼けば埴輪はにわっぽくなるでしょ」

 ふん、と鼻を鳴らすセシリヤにティルラもアンディーンも絶句していた。

 (埴輪……ハニワ⁉ 土人形を埴輪扱いしてんの⁉ ウソでしょ……)

 次第に炎が沈静化していき、焼き色の付いた土人形が三体。完全に動きを止めていた。

 「よし! 埴輪の出来上がり! あとは壊すだけよね……」

 言うなり風を生成して土人形の足元へ向かって送った。バランスを崩して後方へ倒れた元・土人形、現・埴輪は派手な音を立てて割れた。舞い上がる土埃を吸わないように腕で口元を覆ったセシリヤは視界がクリアになってから近づいた。割れた残骸の中から三枚の羊皮紙を拾い上げる。そこに刻まれた文字は“Emeth”。

 「Emethか」

 セシリヤはダガーを引き抜くと剣先で自らの指先を切った。切り口から鮮血が流れる。そのまま指先を羊皮紙へ押し付けて“E”を消した。

 「これで終わり! あー、スッキリした」

 両手を頭上で組みながら伸びをしたセシリヤは上機嫌で言う。

 (そりゃあ、あんだけの魔法を思いっきり放てばねぇ……)

 思ってもティルラは口に出さない。

 ――セシリヤ様。魔術障壁の方へ

 アンディーンの冷静な声音に「そうだった」とセシリヤは魔術障壁の方へと向かった。
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