翠眼の魔道士

桜乃華

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第二十五話 ミラの能力 2/3

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 セシリヤはピー助と出会った洞窟にミラと共に訪れていた。

 「わーい。つい先日訪れたばかりなのに戻ってくるとは夢にも思わなかったわ」

 洞窟の入り口でセシリヤはぼやいた。ミラの転移魔法で瞬く間に移動したため日も高い。天窓から見える青空は初めて訪れた時と変わらない。天窓を一周するように木が生えており、風に揺らされた葉が音を奏でながらセシリヤの白銀の髪を揺らした。テンションが上がったピー助は洞窟内を駆け回ったり、飛行して楽しそうにしている。地面に腰かけたセシリヤはピー助を見つめて頬を緩めた。

 「セシリヤさんのその表情、僕好きですよ」

 「はあ⁉ 突然何言い出すのよ、さっさとここの記憶読んで仕事終わらせてくれない?」

 何気なく伝えられた言葉にセシリヤの頬に熱が集中する。直球すぎる言葉に慣れていないセシリヤには効果的で、照れ隠しするように素っ気ない言葉を返しながらも声は上ずっている。ミラは苦笑すると洞窟の中央に立った。瞳を閉じて意識を集中させると、彼の足元に魔法陣が浮かび上がる。天窓から吹く風とは異なる風が魔法陣から吹き、ミラの純白のローブを揺らした。

 「……ミラの力を見るのは久しぶりね。いつ見てもすごいわ……」

 集中しているのか本人には届いていないようだ。セシリヤは安堵の息を零した。聞かれていたら間違いなく中断して「今、褒めてくれました⁉」とこちらを振り向くだろう。容易に想像できてセシリヤは苦笑した。
 彼の提案を飲んでこちらへ赴いたのはセシリヤにとってメリットがあるからだ。


♦♦♦


 支部の応接室で『それでは』とミラは続けた。

 『条件を付けましょう。記憶を読んだ際にセシリヤさんにとって有益な情報があれば提供する、と言うのはいかがでしょうか?』

 『有益な情報……ねえ』

 『例えば、怪鳥が現れた原因とか』

 言われてセシリヤの脳裏にピー助の額に埋め込まれたアメジスト色の魔石。パンディオンの額には本来あるはずのない物だ。あれを埋め込んだ者がいる。それの情報は知っていて損はないだろう。

 『分かったわよ。一緒に行けばいいんでしょ』

 そう言うとミラは表情を輝かせて立ち上がった。ピー助とセシリヤの肩が揺れる。

 『やった! そうと決まれば早速行きましょう!』

 移動してきたミラはセシリヤの手を取り引き寄せた。抱きしめる形になり困惑している間にピー助がピィー、ビィーと怒りながらミラのズボンを嘴で引いた。

 『ミラ?』

 『転移魔法使うのでこうやって密着しないと』

 ね? と言われてセシリヤは目をしばたたかせた。そういうものだったっけ? と考えている間にミラがセシリヤの肩を掴む手に力を込める。

 『……』

 一瞬、ミラの手を抓ろうと考えてセシリヤは思い留まった。足元でピー助が鳴いているのに気付いてセシリヤはその手をピー助へと伸ばした。飛び込んできたピー助を抱きしめた刹那、ミラの足元に魔法陣が展開される。淡い光に包まれると二人と一匹は応接室から消えた。
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