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第十八話 コランマールへ
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セシリヤは伸びをしながら「さて、今度こそコランマールへ帰ろうかな」と言った。
「あ。待ってください」
出口に向かおうとするセシリヤをアンディーンが引き止める。振り向いた相手にアンディーンが近づいた。
「手を出してください」
言われて素直に片手を出したセシリヤの掌にアンディーンが触れた。すぐに離れていった先、セシリヤの掌に乗せられたのはアクアマリン色の石が嵌め込まれたブレスレット。
「これは?」
「この石は私の力が込められております。水を司る者として、何かお役に立てるかもしれません」
微笑むアンディーンにセシリヤはブレスレットを着けながら「ありがとう」と礼を述べた。今度こそ出口に向かうセシリヤの後姿を見送ったアンディーンは深く頭を下げると湖の中に溶けた。
洞窟から出たセシリヤは久しぶりの眩しさに眉を寄せた。
「んー! やっと出られた」
明るさに目が慣れて空を見上げながらセシリヤは大きく伸びをした。感じていた禍々しい気配は完全に消えており、空気が澄んでいる。
「さてさて、それでは今度こそコランマールに向けて出発!」
ピィー、とピー助が鳴いた。
「飛行魔法で帰らないの?」
歩き出そうとしてたセシリヤにティルラが疑問を口にする。片足を上げたままセシリヤが動きを止めて、ゆっくりと足を降ろした。
「……誰かさんにごっそり魔力を吸収されたからね。私の魔力はすっからかんよ」
棘のある言い方にティルラが反応する。
「そ、それはしょうがないでしょ! 浄化するのに必要だったじゃない!」
「そうだけど、すっからかんになるまで吸収されるとは思わなかったわよ」
「あれだけの魔力を吸収されて倒れないってセシリヤの魔力どうなってるわけ?」
「さあ? よくわからないのよね。吸収された魔力は時間は掛かるけど自動回復できるみたいだし。でも、すっからかんになるまで吸収されたのは初めてよ」
肩を竦めながら言うセシリヤにティルラは「そう」と小さく返す。魔力が自動回復するのは知っている。けれど、回復速度が人並外れている気がするのはティルラの気のせいではないだろう。常識的に考えれば魔力が底をつけばしばらくは動けない。それどころか喋ることすら億劫になるはずだ。洞窟の中でセシリヤは普通と変わらなかった。
(ほんと、不思議な子)
「まあ、セシリヤが歩いて帰る元気があるならいいんだけど」
「……あれ? もしかして心配してたの?」
「……」
セシリヤからの問いにティルラは無言になる。顔が見えなくとも声だけで分かってしまう。絶対に彼女はニヤケ顔をしている。ポケット越しに「ねー、ティルラ。ティルラってば~」とセシリヤが呼んでいるが無視を決め込んだ。諦めたようにセシリヤが口を閉ざして歩き出した。揺れるポケット越しに魔石に触れながらセシリヤは小さく呟く。
「……ティルラ、ありがとう」
小さな声で呟かれたお礼は本人に届いていた。それに気付いていないセシリヤはピー助と共にコランマールに向けて歩き出す。
「こちらこそ、ありがとう。セシリヤ」
女神のお礼も届いていたのか、少しだけセシリヤは頬を緩めていた。
「あ。待ってください」
出口に向かおうとするセシリヤをアンディーンが引き止める。振り向いた相手にアンディーンが近づいた。
「手を出してください」
言われて素直に片手を出したセシリヤの掌にアンディーンが触れた。すぐに離れていった先、セシリヤの掌に乗せられたのはアクアマリン色の石が嵌め込まれたブレスレット。
「これは?」
「この石は私の力が込められております。水を司る者として、何かお役に立てるかもしれません」
微笑むアンディーンにセシリヤはブレスレットを着けながら「ありがとう」と礼を述べた。今度こそ出口に向かうセシリヤの後姿を見送ったアンディーンは深く頭を下げると湖の中に溶けた。
洞窟から出たセシリヤは久しぶりの眩しさに眉を寄せた。
「んー! やっと出られた」
明るさに目が慣れて空を見上げながらセシリヤは大きく伸びをした。感じていた禍々しい気配は完全に消えており、空気が澄んでいる。
「さてさて、それでは今度こそコランマールに向けて出発!」
ピィー、とピー助が鳴いた。
「飛行魔法で帰らないの?」
歩き出そうとしてたセシリヤにティルラが疑問を口にする。片足を上げたままセシリヤが動きを止めて、ゆっくりと足を降ろした。
「……誰かさんにごっそり魔力を吸収されたからね。私の魔力はすっからかんよ」
棘のある言い方にティルラが反応する。
「そ、それはしょうがないでしょ! 浄化するのに必要だったじゃない!」
「そうだけど、すっからかんになるまで吸収されるとは思わなかったわよ」
「あれだけの魔力を吸収されて倒れないってセシリヤの魔力どうなってるわけ?」
「さあ? よくわからないのよね。吸収された魔力は時間は掛かるけど自動回復できるみたいだし。でも、すっからかんになるまで吸収されたのは初めてよ」
肩を竦めながら言うセシリヤにティルラは「そう」と小さく返す。魔力が自動回復するのは知っている。けれど、回復速度が人並外れている気がするのはティルラの気のせいではないだろう。常識的に考えれば魔力が底をつけばしばらくは動けない。それどころか喋ることすら億劫になるはずだ。洞窟の中でセシリヤは普通と変わらなかった。
(ほんと、不思議な子)
「まあ、セシリヤが歩いて帰る元気があるならいいんだけど」
「……あれ? もしかして心配してたの?」
「……」
セシリヤからの問いにティルラは無言になる。顔が見えなくとも声だけで分かってしまう。絶対に彼女はニヤケ顔をしている。ポケット越しに「ねー、ティルラ。ティルラってば~」とセシリヤが呼んでいるが無視を決め込んだ。諦めたようにセシリヤが口を閉ざして歩き出した。揺れるポケット越しに魔石に触れながらセシリヤは小さく呟く。
「……ティルラ、ありがとう」
小さな声で呟かれたお礼は本人に届いていた。それに気付いていないセシリヤはピー助と共にコランマールに向けて歩き出す。
「こちらこそ、ありがとう。セシリヤ」
女神のお礼も届いていたのか、少しだけセシリヤは頬を緩めていた。
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