15 / 114
第十三話 精霊戦 1/3
しおりを挟む
奥へとたどり着いたセシリヤは宙に浮く黒い物体に思わず「うわぁ……」と声を漏らした。その声に反応するように黒い物体はセシリヤの方を向く。辛うじて人型を形成しているそれが片腕を上げた刹那、汚染された水が球体となりセシリヤに向かって飛んできた。
「わぁー⁉ いきなり何するのよ!」
前転しながら避けたセシリヤが文句を言う。
「文句を言う元気はあるのね……」
状況は分からないまでも、セシリヤの声と揺れ具合からなんとなく察したティルラが苦笑を浮かべた。
「って、地面が溶けてるんですけど⁉」
紫色の煙を上げている個所は汚染された水が飛んできた所だ。抉れている。
「えっと……これは毒ってことかな? さっきの枯れた植物といい、クリスタルといい……汚染は毒ってこと」
冷静に分析している間にも球体は飛んでくる。セシリヤとピー助は左右に飛び、避けた。浄化云々の前に、敵の動きを封じなければ何もできない。そう判断したセシリヤは湖の周りを走り出す。反対側にいたピー助へ待機を命じてセシリヤは走りながら敵を見据えて詠唱を始めた。すぐに彼女の周りの気温が下がっていく。吐きだす息は白く、セシリヤの足元から氷柱が出来てくる。黒い精霊はセシリヤへ標準を定めて球体を放った。
「アイス・エッジ!」
セシリヤの周囲に氷の刃がいくつも形成され球体目がけて飛んでいく。刃が当たった直後から球体は凍っていき湖の上へと落下した。セシリヤの形成した氷の刃の数の方が勝っており、一部が精霊の体を掠めた。
「⁉」
掠めた個所が凍ったことに驚いた精霊がもう一度攻撃をしようと腕を挙げようとしたが、背後から氷の欠片が飛んできて動きを止めた。セシリヤもそちらへ顔を向けると、ピー助の色が白銀へと変わっていた。翼を広げて羽ばたけば、羽から氷の欠片が降り、キラキラと輝いて見えた。
「グルルルルッ」
精霊が低く唸りどちらへ照準を合わせようか迷っている隙にセシリヤは麻袋から入り口で採取したクリスタルを取り出した。
「ピー助!」
呼べば、ピー助は飛び上がりセシリヤの元へと向かう。その間にセシリヤはクリスタルへ冷気を送り送り込んだ。それを放り投げて「ピー助、クリスタルをそいつの頭上へ落として!」と言えば、理解力のあるピー助はクリスタルを掴んで精霊の頭上で離した。
避けようとした精霊は動かない体にセシリヤの方を見た。
セシリヤは最初の攻撃で湖にも氷の刃を落としており、そこからさらに氷結魔法で水面全体を凍らせた。ピー助に気を取られている間に氷は柱となり精霊を捉えて離さない。精霊の体に冷気をため込んだクリスタルが落とされると、瞬時にその体が凍った。
「……と、とりあえず動きは止まった」
「わぁー⁉ いきなり何するのよ!」
前転しながら避けたセシリヤが文句を言う。
「文句を言う元気はあるのね……」
状況は分からないまでも、セシリヤの声と揺れ具合からなんとなく察したティルラが苦笑を浮かべた。
「って、地面が溶けてるんですけど⁉」
紫色の煙を上げている個所は汚染された水が飛んできた所だ。抉れている。
「えっと……これは毒ってことかな? さっきの枯れた植物といい、クリスタルといい……汚染は毒ってこと」
冷静に分析している間にも球体は飛んでくる。セシリヤとピー助は左右に飛び、避けた。浄化云々の前に、敵の動きを封じなければ何もできない。そう判断したセシリヤは湖の周りを走り出す。反対側にいたピー助へ待機を命じてセシリヤは走りながら敵を見据えて詠唱を始めた。すぐに彼女の周りの気温が下がっていく。吐きだす息は白く、セシリヤの足元から氷柱が出来てくる。黒い精霊はセシリヤへ標準を定めて球体を放った。
「アイス・エッジ!」
セシリヤの周囲に氷の刃がいくつも形成され球体目がけて飛んでいく。刃が当たった直後から球体は凍っていき湖の上へと落下した。セシリヤの形成した氷の刃の数の方が勝っており、一部が精霊の体を掠めた。
「⁉」
掠めた個所が凍ったことに驚いた精霊がもう一度攻撃をしようと腕を挙げようとしたが、背後から氷の欠片が飛んできて動きを止めた。セシリヤもそちらへ顔を向けると、ピー助の色が白銀へと変わっていた。翼を広げて羽ばたけば、羽から氷の欠片が降り、キラキラと輝いて見えた。
「グルルルルッ」
精霊が低く唸りどちらへ照準を合わせようか迷っている隙にセシリヤは麻袋から入り口で採取したクリスタルを取り出した。
「ピー助!」
呼べば、ピー助は飛び上がりセシリヤの元へと向かう。その間にセシリヤはクリスタルへ冷気を送り送り込んだ。それを放り投げて「ピー助、クリスタルをそいつの頭上へ落として!」と言えば、理解力のあるピー助はクリスタルを掴んで精霊の頭上で離した。
避けようとした精霊は動かない体にセシリヤの方を見た。
セシリヤは最初の攻撃で湖にも氷の刃を落としており、そこからさらに氷結魔法で水面全体を凍らせた。ピー助に気を取られている間に氷は柱となり精霊を捉えて離さない。精霊の体に冷気をため込んだクリスタルが落とされると、瞬時にその体が凍った。
「……と、とりあえず動きは止まった」
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

聖女は聞いてしまった
夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」
父である国王に、そう言われて育った聖女。
彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。
聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。
そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。
旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。
しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。
ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー!
※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

白い結婚をめぐる二年の攻防
藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」
「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」
「え、いやその」
父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。
だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。
妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。
※ なろうにも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる