翠眼の魔道士

桜乃華

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第十一話 洞窟 1/2

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 昨日の川まで戻ったセシリヤは上流へ向かい歩いていた。途中から森に入り更に奥へと進んで行く。道が作られていることからもコランマールの人が薬草と採りに来ていたことは分かるが、今のところ誰の気配を感じない。セシリヤは気を引き締めると奥へと進んで行った。

 「そう言えば、セシリヤは鉱物とか珍しい物でも集めているの?」

 「ん? あー、そうね。集めてるといえば集めてるのかも」

 途中から舗装された道が無くなり、草を掻き分けながらセシリヤが答えた。見た目からは鉱物などに興味はなさそうだが、人は見かけによらないのか、とティルラは興味深そうにする。

 「別に鉱物マニアとかじゃないから」

 ティルラの思考を読んだようにセシリヤが釘を刺す。問われる前にセシリヤは口を開いた。

 「師匠からのお使いよ。弟子を旅立たせるついでに、旅先で師匠が探している物を見つけたら採取してこいってね」

 ため息混じりに言う。

 『おいセシリヤ。旅に出るついでにこのリストに書かれている物を見つけたら俺のところまで持ってこい』

 ブレーズが羊皮紙をセシリヤの目の前に突き出した。受け取ったセシリヤは我が目を疑う。何度も書き連ねられた文字を追う彼女の眉間に皺が寄り始めた。

 『えー。リストに書かれてる物って超レアなやつばかりじゃないですか! 絶対に面倒……』

 『あー? 何か文句でもあんのか?』

 言い終わる前に相手から頭部を掴まれて力を入れられれば痛みでセシリヤは涙目になる。

 『痛っ、いたた……! 師匠、痛いです!』

 頭を掴む彼の手を叩いても力を緩めるつもりのない相手にセシリヤは『わかりました! 喜んでお使いさせていただきます!』と声を上げた。すると、すぐに手を離されて解放される。未だに頭に残る痛みに相手を睨み付ければ、意地の悪い笑みで返される。

 『おー。分かればいいんだよ、分かれば。素直な弟子を持てて俺は嬉しいよ』

 ほぼ棒読みで告げられてセシリヤは内心で悪態を吐いた。

 「……」

 師匠とのやりとりを思い出したセシリヤは無言になり森の中を進んで行く。掴まれていないはずの頭部に痛みが走った気がして無意識に頭部を抑えた。

 「急に無言になったけど、どうかしたの?」

 「いや……。なんでも、な……い」

 心配そうに声を掛けるティルラにセシリヤは歯切れの悪い返事をする。思い出すだけでも背筋が凍る。

 「あ。着いた」

 思い出しているうちに森の奥に辿り着いた。ピー助と対峙した時とは異なる洞窟が口を開けていた。中から漂うのはどす黒いオーラの様なもの。人の気配どころか動物も見当たらない。セシリヤは喉を鳴らすと洞窟の中へ入って行った。
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