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第十五話 はみ出てる
しおりを挟む深夜、寮生たちが寝静まった時間。翌日が休日だった私は夜更かしをしていた。そろそろ寝ようかな、とノートパソコンの電源を切ったところで廊下が騒がしいことに気付いた。
イヤホンで音楽を聴いていたため、外の音が全く聞こえていなかった私は音に耳を傾けた。
ダダッ、ダダダッ
廊下を全力疾走する足音は間違いなく茶々さんだろう。元気だなぁ、と私は立ち上がった。廊下を走る音が止まったところでドアを開ける。私から見て右側が外階段へ繋がる方で反対側に洗面台とトイレがある。突き当りの左手には玄関へ続く階段。まず私は右側を見て茶々さんの姿がなかったので反対側を見た。突き当りに茶白猫が一匹。茶々さんだ。
「ンー、ンナァー」
私に気付いた茶々さんが一鳴きするが、いつもよりも声がくぐもっている。何か口に入っているような声に疑問符を浮かべていると。茶々さんが軽快な足取りで近づいてきた。次第に近づく距離。遠目からは分からなかったが、だんだんと見えてきた。
(……茶々さん、何か咥えてませんか?)
茶々さんの閉じた口から何かが見える。そう……細くて長いもの。
うん、分かった。私はすべてを察した。察してしまった。考えている間にも茶々さんが上機嫌に近づいてくる。両脚がとても軽やかだ。人間で言うとスキップする勢い。いつもなら「わー、茶々さーん」と語尾にハートマークでも付けて近づくところだが、今は出来ない。
そう、茶々さんが先ほどから追いかけ回していたのはネズミだ。それを捕獲したタイミングで私がドアを開けたのだ。茶々さんの口からはみ出しているのは間違いなくネズミの尻尾だろう。
「じゃ、おやすみ! 茶々さん! また明日ね!」
そう告げて私は早々にドアを閉めた。ごめん、茶々さん。ネズミは勘弁してください。私は茶々さんへと謝罪を心の中でして電気を消した。
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