222 / 226
【第二部】
4 side 黒川 廉
しおりを挟む俺の腕の中で、泣き疲れた華。
くたっと脱力し、体重を預けてくるのが嬉しい。
「こら」
「…ムフ」
時折、首筋を甘噛みしてくるのが愛おしすぎて、今すぐ襲いたくなるがグッと我慢。だが、尋常ではない濃さのフェロモンに、いつまで耐えられるか分からない。
「…本当に間に合って安心した」
強く抱き直すと、華も更にピトッとくっついてくる。
うどんを作ろうと思っていたが、食べられなかったらと、軽めのりんごにしたのは正解だったらしい。
あれを全て飲んでいたら、と考えると怖い。
持っていた薬の量と、尋常ではない手の震え。肝が冷えたが、止められてよかった。
「…、あの、茶色くなった、ごめんなさい…」
そう、ふと言った華の気だるげな視線の先。
それを追うと、時間が経ち褐変したりんごがある。
「食べる?」
問うと、腕の中にある華の身体が、大袈裟なほどビクンと跳ねる。
「っン…んん、今はいらない」
それを誤魔化す様にモゾモゾ身動ぎする華。文句なしに可愛い。
わざとではないが、抱き締めていたせいで、耳元で囁く事になってしまった。
ヒートが始まった今、こうして番と密着しているだけでも辛いはず。俺も辛い。
「辛い?」
「…まだだいじょ、ぶ」
現に、俺の腹には華の主張しているブツが当たっているし、華の臀には俺のモノが下着越しに当たっているだろう。
それとなく下から、軽く腰を揺らしてみる。
「んっぁ!ぅ、…」
「………」
喘ぎ、軽く背を反らし、華の息は荒くなった。
その背を撫であげるだけで、快感に身体を震わす。
なのに、何も言ってこない。
何が『まだ大丈夫』だ。
俺も早く華の中に入りたいけど、その気がないなら話は別だ。嫌な思いをさせたくないし。
まぁ、どこからどう見ても、その気がある様にしか見えないが、もはやこれは謎の我慢比べ。
しばらく、抱き合ったまま時は流れた。
「廉さん、…っ」
もうそろそろこっちが限界…という所で、やけに切羽詰まった華の声。
抱擁を解いて、真正面から見つめ合う。
「早く、早くさわって…っ」
華が俺の手を取り、そのまま自分の頬に添えた。
手のひらから、頬の熱さ、少しの汗ばみ、柔らかさなど、大量に情報が伝わってきて危うく鼻血が出そうになる。
いよいよか…?
「…いい?」
「ん、…4年ぶん、はやくぅ」
いつスイッチが入ったのか。一気にどろりと溶けた瞳には、俺しか映っていない。
ヒートの時しか見られない、扇情的な行動と表情に、思わず喉が鳴った。
0
お気に入りに追加
250
あなたにおすすめの小説
告白ごっこ
みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。
ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。
更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。
テンプレの罰ゲーム告白ものです。
表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました!
ムーンライトノベルズでも同時公開。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

王冠にかける恋【完結】番外編更新中
毬谷
BL
完結済み・番外編更新中
◆
国立天風学園にはこんな噂があった。
『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』
もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。
何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。
『生徒たちは、全員首輪をしている』
◆
王制がある現代のとある国。
次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。
そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って……
◆
オメガバース学園もの
超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。
Take On Me 2
マン太
BL
大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。
そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。
岳は仕方なく会うことにするが…。
※絡みの表現は控え目です。
※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

ヤクザと捨て子
幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子
ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。
ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。


僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ
樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース
ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー
消えない思いをまだ読んでおられない方は 、
続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。
消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が
高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、
それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。
消えない思いに比べると、
更新はゆっくりになると思いますが、
またまた宜しくお願い致します。

Endless Summer Night ~終わらない夏~
樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった”
長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、
ひと夏の契約でリゾートにやってきた。
最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、
気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。
そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。
***前作品とは完全に切り離したお話ですが、
世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる