a pair of fate

みか

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【第二部】

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寝室に入ってきたのは、お盆に何かを乗せている廉さんだった。


「お、起きてたか。おはよう。リンゴ切ってきたぞ」


ふわっと微笑むその人は、間違いなく廉さん本人だ。
でも、信じられない。夢じゃない?本物かな?


「……ぅっ」


廉さんがベッドに腰掛けるのを、ひくっ、と喉を引き攣らせながら、見つめることしかできない。


「…え、おい、華」


漏れてしまった嗚咽に気付いた廉さん。
ガチャン!と、持っていたお盆を、少し乱雑にサイドテーブルに置く。

すぐに鋭い視線が、俺の手の平にある大量の錠剤へ向けられ、びくりと肩を揺らしてしまった。


「っぅ、…ぅえ…」


色々な理由で震える手を、俺より少し大きな手でぎゅうっと強く握られる。

混乱している間に、錠剤は全て回収された。


「ごめん、起きるまでには戻るつもりだった」


眉を寄せて、俺を見つめるのは、自分の番。

センター分けじゃないから蘭さんじゃない。
しかも髪の毛は、寝起きからセットしてない、さらさらの状態。

俺だけが知ってる廉さんだ。

震える手を伸ばして、そっと頬に触れる。

あの病室で、静かに目を閉じていた時の冷たさは感じない。

ちゃんと温かい。

手のひらから、健康な人間の体温を感じる事ができた。それに安心して、更に涙が溢れる。


「ぅぇ、っひ…、んん、…れっ、ん」


喉が勝手にひくひくして、上手く息が吸えない。
ごしごし拭っても溢れる涙が止まらないし、息を吸うのと、嗚咽が混ざって苦しい。ついでに鼻水も止まらない。

そんな状態でいると、痛いくらい強く抱きしめられ、世界一安心する匂いに包まれた。
くらくらして、悲しさで占められていた頭は、少しだけ幸せの割合が増えた。


「またっ、っゆめかとっ、思って、ぅう」


背中のシャツをぎゅっと握り締めて、肩に額をぐりぐりと押し付けた。鼻水がついたらどうしよう、なんて考えている暇はない。


「っいなく、ならないでっ」


絞り出したような声はしっかりと届いていたみたいで、背中を撫でていた手は、頭に移動した。

そのあとティッシュで顔中を拭かれ、たくさん頬やおでこにキスをもらった。


「これからは勝手にどこにも行かない。約束する。」


ひとしきりキスの雨を浴びた後、廉さんは俺の手を両手で握って宣言した。


「本当に?本当に本当に?」


しつこく、何回も確認する俺。
廉さんが俺に嘘つくわけないのに、不安で不安で仕方がない。
いつも通りの日常なんて、呆気なく崩れるのを知ってしまったから。

廉さんは俺の問いに、深く頷く。


「ずっと一緒にいよう」


真剣で、でも照れくさそうな、何とも言えない表情。
薄暗くてもわかる頬の紅さに、胸が苦しくなった。


「返事は」


何度も何度も頷く。

いつの間にか、涙と嗚咽は止まっていた。









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