a pair of fate

みか

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【第二部】

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まさか笑い上戸とは…と頭を抱えそうになる俺。
だが、そこを差し引いてもプラスになるほど、上機嫌な華の可愛さは宇宙一だ。


「えへっ、はぁ…あ~…フフ…はぁ…」


華はというと、笑いきったのか笑みが引いている。すぐに、スン…とデフォルトの真顔に戻っていた。

そして俺を見ながら、小さな声で呟く。



「…かっこいい…」



まるで恋する乙女のような声のトーンに気持ちが急浮上するが、誤魔化されてはいけないと気を引きしめた。

ここでなあなあにしてはいけない。
何のために酔わせたと思っているんだ。

華の両肩を掴み、真正面からしっかりと目を合わせる。



「あのな?聞けるか?華の糸と蘭の、」

「ほんとに、本当に世界一かっこいい~、…うぅ…」



俺の声を遮った華は、じわじわじわ…っ、とあっという間に涙目になり、とうとう涙をボロボロ流す。



「…ぅっ…うう…」



呻き声をあげた華は、ボックスティッシュから乱暴に数枚ティッシュを引き抜き、そのまま目元をゴシゴシ拭う。

笑った次は泣くのか…。そりゃ理央が面倒臭がる訳だ。
こんなんじゃまともに話もできない。
酔わせたのは失敗だな。


「おい、やめろ」


さすがに痛いだろうと、華の手からティッシュを奪う。

新しいティッシュをしっかり折りたたみ、目元をタッチするように涙を拭いた。壊れ物を扱う様に、丁寧に丁寧に。



「かっこいい…俺、…廉さんの顔、大好きです…」



潤んだ瞳と目が合うと、ふにゃっと頬を緩めた華。
酒のせいもあると思うが、普段よりピンクになっている頬がかわいい。

顔を褒められもちろん悪い気はしないが、あまり嬉しくない。
顔なら、置き去りにしてきたあいつだって同じ顔だ。



「…ありがとうな…」

「もちろん、っ、顔だけじゃないんですけど、…ぅぅ」



嬉しい反面、そういう理由もあり、微妙な顔になってしまったのを酔っているなりに察したのか、すぐにフォローを入れてくる。



「ちゅーしたい…かも」



元々遠くない距離なのに、更に俺に近付きながら言った華に目眩がした。

控えめに傾けた頭と、滅多に見られない上目遣い。
以前より長めの前髪が少し目にかかり、本来の色気を助長している。




「ね、はやくちゅーしよ」

「…はあ」



可愛すぎて生きるのが辛い。溜め息がでる。


こんなにストレートに誘ってくるのは据え膳としか言い様がないが、酔っているのに事を進めていいのか足踏みだ。

とりあえず、いくらか細くなった身体を抱き寄せ首元で息を吸うと、いつもより強く香るフェロモンで肺が満たされる。


この時点で、俺の頭からは、蘭と華の関係の事なんかどこかへ飛んで行った。




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