a pair of fate

みか

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【第二部】

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ゴクリと生唾を飲み込み、重い口を開く。


「俺が前に赤い糸が見えるって言っただろ?」


まだ華と出会ってすぐの頃、俺は華に有り得ないような本当の話をした。

それを覚えていても、覚えていなくても気にしない。

俺がいま一番気にしている事は、華と蘭が運命の相手だったのかどうかだ。


「……」


華が果たしてどんな反応をするのか、顔に穴が空きそうなほど見つめる。

俺の視線を受けた華は、グラスを煽り酒を飲む。


「はい?あ…あ~…あは!…んフフ…」


そしてこてんと首を傾げたあと華はなぜか、にぱっ!と笑顔になった。

『お前にも、赤い糸が見えたりする?』、そう訊こうとしたが、あまりにも笑顔が可愛すぎて思わず訊くのを止めた。


「...」

「あはは!…んんっ…、フッ…」


俺の怪訝な顔に、しまったと思ったのか口をおさえる華。

だが目が笑っている。

涙袋がいつもよりハッキリ見えてかわいい。じゃなくて、何で笑ってるんだ?


「ふっ、あっはは!!なんですかその顔!!」


堪えきれない!といった感じで吹き出した華。瞠目すると同時に、まさかこの顔を笑われるとは思っていなかったので、少し落ち込む。

笑われるほど変な顔してたのか、俺。


「…」

「いや、あはは!ひひっ、…腹筋いた…っ…なんで、びっくり顔してっ…うっ、あははは」


椅子の背もたれに仰け反りながら、脚をバタつかせ笑い声を上げる華。
仰け反り過ぎて、そのまま椅子ごと倒れそうな勢いだ。

こんなに爆笑しているのを見るのは、華と出会って以来初めての事だった。

稀に小さく笑ったりする事はあったが、ここまで大口を空け、そして声を上げて笑うのは珍しく、嬉しさより心配が勝つ。


「おい、おい、危ないって」


背もたれを支えながらオロオロする事しかできない俺。

こいつ酔うと笑い上戸になるのか。

俺が想像していたのは、…頬が少し赤くなって目も蕩けて積極的になる華だったのに…。

あわよくばそのままベッドに~、なんて考えは呆気なく打ち砕かれた。


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