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【第二部】
ハロウィンSS
しおりを挟む待ってましたとばかりに、俺はキッチンへ向かった。この日の為に買っておいた、チョコがたくさん入っているかぼちゃの入れ物。
そのジャックオランタンが『早く連れて行って!』と言っているように見えて、急いで取っ手をひっ掴む。
「はい、どうぞ!甘いの好きですよね」
「あるのかよ、ありがとうな」
取ってきて、廉さんにカボチャを差し出す。
イタズラできなかった、と言っているのは聞かなかった事にしよう。
「トリックオアトリート!」
「ごめん、持ってない」
少しも申し訳ないと思っていなさそうな顔をして、廉さんは謝る。
まぁ全然いいんだけど。俺が欲しいのはお菓子じゃなくて写真だし。
「だからイタズラしていいぞ」
ギシッとベッドに腰掛けた廉さんが、カボチャを横に置き、俺に向かって両手を広げる。
「…えぇ…あ!!」
そこで名案を思いつく。
今、イタズラという名目で写真を撮れるのでは?しかも俺に向かって腕広げてるし。
考えるより行動だ。
構えたスマホから、カシャッとシャッター音が響く。
「は?」
珍しくポカンとしている廉さんに、今撮った写真を見せた。なかなか上手く撮れている。
お気に入りにするハートマークをすぐに押した。
「イタズラ、しました。いい写真撮れましたよ」
「そんなのがイタズラか?可愛いモンだな」
フンっと鼻で笑った廉さんは、ベッドの中央に移動して、自分の前をぽんぽんと叩く。
来いってことか?
なるべく脚が露出しないよう、廉さんの前に座る。
「俺が代わりにイタズラするから」
「いやいやいや!イタズラ終わりましたし、もうこれ脱ぎますからね?」
代わりはおかしい。
それじゃただ廉さんが俺にイタズラするだけになる。
お菓子あげたのに!!
「すぐ脱ぐんだろ?」
「うわわわわ」
再び自然な流れで抱きしめられて、廉さんの普段と違う格好も相まって激しく抵抗できない。
正直満更でもないのが事実だ。
今日しかこの格好の廉さんを見れないんだから。
するっと背中を撫であげられ、思わず背筋を伸ばす。
「身体のラインが出るから細さが際立つな」
折れそうと呟いた廉さんは、俺を抱きしめたまま、カボチャの入れ物から小さなお菓子を取り出す。
そして器用に片手で包み紙からチョコを出して、口に入れ、ボリっと噛み砕いた。
「え?」
いくら甘いのが好きだからって、今このタイミングで食べる事ある?
心の中で静かに困惑していると、ガシッと後頭部を掴まれ一気に顔が近づく。
端正な顔を直視できず、ぎゅっと目を閉じた。
「ぇ、ンっ?!」
合わさった唇の間から、舌と同時に小さなチョコを送り込まれ、反射的にチョコを受け取る。
コロンと舌の上に滑り込んできたチョコは、甘党の廉さん用だから、かなり甘い。
その甘さを感じたと思ったら、すぐにまた廉さんが口の中のチョコを奪ってしまう。
「ん、ぁ…ふ…」
ちゅ、ちゅっと可愛いリップ音をたてて離れた唇。
糸が引いていて、恥ずかしさと息苦しさから視界が少し滲んだ。
口の中にもうチョコはなくて、残ったのは甘いチョコの後味だけ。
親指で俺の唇を拭った廉さんの表情は、捕食者という単語がしっくりくるくらい猟奇的で、身体の奥から震える。
「も、きがえるっ、から」
本当に食べられる事なんてないけど、なぜか身が危ない気がしてベッドの上で後退りする。
「脱がせてやる。ほら、脚開いて」
「うわっ、ちょっと!腰のとこっ、裂ける!」
そんな俺を見て、素早く脚の間に入ってきた廉さんは、俺の両膝をパカっと左右に広げた。
「あっ!」
ビチッ、と嫌な音を立てたドレス。
絶対破けた。
ただでさえゆとりがないのに!
「コスプレでしてみる?」
ネクタイの結び目を左右に引っ張り、少し緩めながら廉さんは笑顔になる。
それは、警察官には似合わない、とてもわるい顔だった。
「…なにを」
なんて訊かなくてもわかってた。
いつもと違う姿でするのも悪くない。
前に浴衣でした時、廉さんすごくねちっこく攻めてきたから、今日もそうなるかも。明日動けるかな。
挑発的な笑みを浮かべた廉さんは、既に硬くなっているそこを俺の脚に当てる。
大胆なセックスアピールに、期待と興奮が高まる。
「変態じゃないですか」
そういう俺も割とヤバくて、ドレスを押し上げているモノに廉さんが気付かないわけが無い。
布ごとやわやわと揉まれ、声が出る。
「あっ…や…」
「そっくりそのまま返す」
ヒラっとドレスの前を捲られると同時に、リモコンで寝室の照明が落とされた。
頬を撫でられ、薄く目を閉じて、小さく口を開ける。
今度のキスはチョコの味ではなく、廉さんの味だった。
昼間からこんな…と一瞬、頭の隅で思う。
しかし、まぁハロウィンだし、いつもと違うことしても良いかも。と、全てハロウィンのせいにして、廉さんから与えられる快感に集中した。
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