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【第二部】
ハロウィンSS
しおりを挟む早く脱ぎたいその一心で、女装をしている恥ずかしさを忘れ、ズカズカ廊下を歩く。
寝室の前でストップして、少し上がってきたドレスをグイッと下げた。
気合いから仁王立ちになるが、脚がヒヤッとしたのが恥ずかしくて、しっかり足を揃える。
廉さんがいる寝室のドアを数回ノック。
「入りますよ、いいですか?」
このドアの向こうには、とてもかっこいい廉さんがいるんだ。
廉さんの警察官コスプレ、どんな感じなんだろう。
爽やか?それとも、昔ワルだった少年が更生して警察官になった、みたいな感じ?
どちらにせよ、かっこいいのは確定だ。
どうしよう…顔見れないかも。
特に髪はセットしてないが、前髪をちょいちょいと直してみる。
そんな事をしているとドアが開き、さわさわとドレスを気にしていた左手首を引っ張られた。
「さっさと来いよ」
ふわっと廉さんの匂いが強くなって、控えめに抱き締められたのがわかる。
ハグは嬉しいが、先に警察官コスだ。
そっと肩を押して離れると、廉さんは少し恥ずかしそうに俺から目を逸らす。
「うわぁ」
水色のシャツに紺色のネクタイ。いつも黒を着ているところしか見ないので、もうシャツの色が違うだけでドキドキが止まらない。
「やば…かっこいいです、似合いすぎ」
腰には拳銃と手錠のおもちゃがついていて、その上、警察官の帽子までちゃんと被ってくれている。
似合っているなんて次元じゃない。
このコスプレセットが廉さんの為に作られたのではないか、というくらいに似合っている。
「…黒のロングにして正解だった…」
早く写真を撮りたくて、廉さんが何か言っているのも耳に入らない。
「写真、写真、写真いいですか?」
「俺の写真撮っても意味ないだろ」
スマホでカメラを起動させたのに、そう言われて我に返る。
そうだ、今日は俺の練習っていう設定なんだった。
でも写真は欲しい。どう言ったら納得してもらえるか秒速で考える。
「何かポーズとれよ。練習なんだろ?撮ってやるから」
「いや、あの、とりあえず一枚だけでいいんで!」
食い下がると、廉さんは急に意地悪な顔をして近付いてくる。大好きな廉さんの匂いに、クラっと目眩がした。
「な、に」
「Trick or Treat」
「!」
ゾワゾワゾワっと嫌じゃない鳥肌が立ち、耳を押えた。
耳元で囁かれたのは、ハロウィン当日に何十回も聞くセリフ。お菓子をくれないと、イタズラしちゃうぞ!ってやつ。
そうだ!お菓子準備してたんだった!
ちゃんとカボチャの入れ物にチョコが入ってるやつ!
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