a pair of fate

みか

文字の大きさ
上 下
206 / 226
【第二部】

8

しおりを挟む


それからしばらくの間、何をするでもなく黒川さんに抱きついていた。


首元の匂いを、犬のようにスンスンスンスンと嗅ぐ。
黒川さんはもっと嗅げというように、頭をぐっと押さえつけてくる。


「…いい匂いします…」

「そうか?」


正直に言うと、ヤリたい。
もう久しぶりの黒川さんがかっこよく見えて仕方がない。

しかもフェロモンの香りはどんどん強くなるし、触れられている所は熱い気がする。


「はっ…」


頭を撫でられ、思わず熱い息を漏らしてしまう。


「…華、お前ヒートはいつだよ、匂い強いけど」


言われて考える。

ヒートは2週間くらい先の予定だったから違うはずだ。

それを伝えるとら黒川さんはそうかと頷いた。

久しぶりの番にあてられて、ヒートが早まるなんて事があるのだろうか。
ヒートかどうかはさて置き、とりあえずヤりたい。頭の中はそれでいっぱいだ。


「…ヒート、とは関係ないんですけど、あの、あの…ですね……」


視線でどうした?と訊いてくれてるような黒川さんには申し訳ないけど、俺、はしたない事考えて、それを伝えようとしてます。

何度深呼吸をしても『セックスしませんか?』なんて言えるわけない。

人生勇気が必要な時はある。
多分、今みたいな状態の時だ。


「失礼します!!」


綺麗な顔を両手で包み、思いきって唇を重ねる。

下唇を軽く食むと、声にならない吐息が聞こえた気がした。


「っ」


一瞬驚いた様子で身を引いた廉さんだが、すぐに後頭部を掴まれ再び唇が触れる。


「ん…!」


スムーズに侵入してきた熱い舌に、思考回路が麻痺した。

今までにないくらいの強引さで、咥内を荒らされる。


「ん、ぁ」


いつ息継ぎをしていたか忘れてしまった。

鼻で息をしたらフェロモンをダイレクトに吸ってしまうし、口で息しようにもままならない。


「っはぁ、はっ」


最後に、ちゅっとリップ音をたてて離れた唇。

力が抜けて、くたっと上体を預けた俺を黒川さんは複雑な表情で見下ろす。


「…お前、今のどこで習った?礼をしないとな」


そんな表情なのに、俺の頬を撫でる手の動きがやけに官能的で吐き出す息が熱く震えた。




しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

いつかコントローラーを投げ出して

せんぷう
BL
 オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。  世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。  バランサー。  アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。  これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。  裏社会のトップにして最強のアルファ攻め  ×  最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け ※オメガバース特殊設定、追加性別有り .

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

インテリヤクザは子守りができない

タタミ
BL
とある事件で大学を中退した初瀬岳は、極道の道へ進みわずか5年で兼城組の若頭にまで上り詰めていた。 冷酷非道なやり口で出世したものの不必要に凄惨な報復を繰り返した結果、組長から『人間味を学べ』という名目で組のシマで立ちんぼをしていた少年・皆木冬馬の教育を任されてしまう。 なんでも性接待で物事を進めようとするバカな冬馬を煙たがっていたが、小学生の頃に親に捨てられ字もろくに読めないとわかると、徐々に同情という名の情を抱くようになり……──

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

処理中です...