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【第二部】
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しおりを挟む「ごめん、痛かったよな」
腹にまわされた腕。
どんどん締め付けは強くなって、息苦しさを感じるほどだ。
それなのに、苦しさも少し嬉しいと思ってしまう俺。
まるで、心の奥底に隠した独占欲を現しているかのようで嬉しかった。
もっと強くして欲しい。
ふるふる、と頭を振ると、慈しむように首筋をかぷっと噛まれ身をよじる。
黒川さんは終始申し訳なさそうだけど、久しぶりの温もりが嬉しく、ニヤけそうなのを堪えて訊いた。
「痕消えてました?触った感じは大丈夫そうだったんですけど」
朝と夜、それと寂しくなった時、俺は首の後ろ…うなじを触るのが癖になっていた。
少しでこぼこしている歯型を確認して、まだ俺は黒川さんと番なんだと自分を安心させていた。
今朝だって触った。
その時はちゃんとでこぼこしてたから消えてるはずないんだけど…。
いや…、と口篭りながら俺の肩に顔を埋める黒川さん。
しまった、これじゃ振り返っても顔が見れない。
「…ん~…」
あー、とかうーん、とか繰り返す黒川さん。
そんなに言いたくない事なら、言わなくていい。
聞いても聞かなくても、俺は廉さんが好きだから。きっと何も変わらない。
そんな想いを込めて腕に触れると深呼吸のあと、すりっと頭を背中に擦り付けられる。
そして静かに、廉さんがずっと秘密にしていた本音を話してくれた。
「華が、蘭、に…とられてたらどうしようって、ずっと怖かった。だから、わざと蘭のこと教えなかった」
「………」
「なのに何か知らねーけど仲良くなってるし、もし噛まれてたら、また上から噛めばなかった事にできるかなって、思って…でもお前が蘭を選んだなら…」
廉さんも怖いことあるんだ…とキュンキュンしている俺だったが、それより歯切れの悪さが気になる所でもある。
俺が蘭さんを選ぶ?ありえない。いくら顔が良くてもあの人は絶対ないだろ…。
「俺、蘭に勝ってるところ一つもないから…お前さ、俺の顔、好きだろ?俺と蘭、全く同じ顔だしあいつの方が明るくて気も使えて……」
「…確かに顔、好きだけど…それだけじゃないですよ…」
明るくて気も使える…廉さんの声のトーンから本気でそう思っていると分かるが、俺はそうは思わない。
唐突な水族館に映画館…弾丸旅行の数々を思い出し苦笑いする。
俺からしたら、廉さんの方がとてつもなく魅力的に感じるのに。
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