a pair of fate

みか

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【第二部】

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若干顔を青ざめさせた黒川さんは、震える声で訊ねてきた。


「俺から逃げようとしたのか?違うよな?」


何の事か分からない俺は、再び首を傾げる。

心当たりは何も無い。
逃げるというより寧ろ、マンションの真下を借りて、俺が離れないように執着していたくらいだ。


「いや…お前のコップとか箸とか無いし冷蔵庫にも水しかなかったぞ。お前は緑茶しか飲まないだろ」


コップとか箸とか…って、…あ!!!
やばい、俺…下に引越したの言ってなかった。
 

「あっ…いや…」


いや、何もやばくない。俺は悪くない。

だってそうだろ?

色々考えまくった末、あの状況じゃ引っ越すしか無かったんだ。
そしてついさっき再会して、全部話す時間だってなかった。


しかし、一瞬でも『やべぇ』という顔をしたのを、ら黒川さんが見逃すはずが無い。

肩を掴んでいる手に、更に力が入った。痛い。


「や、やっぱり俺から逃げようとしたのか?それか他に…他に……好きな、人間が……」


「いや…色々あって…」



穴が空きそうな程に見詰めてくる黒川さんから、ふいっと顔を背ける。

なんて説明すればいいんだろうか。

やっぱりよく考えると俺はあなたのお荷物なので考えた結果、離れようと思いました。ですが、やっぱり大好きなので、マンションの真下を借りました!って言うのか?

キモ過ぎるだろ。シンプルに。



「ま、まさか…まさかお前、…清水に乗り換え」

「たわけないじゃないですか!」


思わず大きな声が出た。
中々答えない俺に、黒川さんはとんでもない事を言い出す。

よりによって爽とか有り得ない。
琉唯くんならまだしも爽。

天と地がひっくり返っても有り得ない。


「ならこの状況は何なんだよ?俺が納得するように説明してみろ」


他に好きな人ができたわけがない、でも引っ越した理由を上手く説明できない俺と、段々イライラしてきた黒川さん。


なんで俺はこんなに喋るのが下手なんだ…。
本当に久しぶりに会えて嬉しいのに、嫌な雰囲気になってしまった…どうしよう。


もうキモがられてもいいから正直に言うか!そう決心して、グっと拳を握る。
そしてすぅっと息を吸い込んだ、その瞬間。


~~~~~♪



「ぅわ!」



静かなリビングに、着信音が鳴り響く。

俺のポケットの中、大きな音を出しながらブルブルと震えるスマホ。


「ここで出ろ。終わったらすぐ電源落とせ」

「…はい」


こんな大事な時にタイミングの悪い人は誰だよ…。

早く終わらせて早く仲直り(?)して早くイチャイチャしよ…とスマホの画面を見た俺は、文字通り固まる。


画面に表示されている着信主は、蘭さんだった。





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