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【第二部】
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しおりを挟む走りにくい革靴で、一歩を踏み出す。
そして糸を辿るように、無我夢中で走った。
あの日のように、街中を埋め尽くす絡まった糸の群れ。
「はぁっ、はぁ」
着いたのは、さっきいた場所とは比べ物にならない数の人がいる大通りだった。
平日なのになんでこんなに人がいるんだ?
「…よし」
気合いを入れ直し、さっきより真っ直ぐになった糸の伸びる方へ、人混みを掻き分け進む。
人にぶつかりながら前へ進む俺を、睨んだり舌打ちをする人間なんか気にしない。
いつもなら謝るが、今はそんな場合じゃないんだ。
「!」
そして、糸が強く張る。
その先に、見覚えのある亜麻色のストレート髪の青年がいた。
マスクと、普段被らない帽子を身に付けていても、見間違えない。あれは華だ。
隣にいるのは優斗と清水で、とりあえず俺の知っている人間な事に安堵する。
「華っ…華…」
中々、思う通りに前に進めないのがもどかしい。
どうか逃げないで、二度と離さないから、また俺に捕まって欲しい。
一生かけて大切にするから。
「おい!!!」
新しく好きな人ができていても、もう一回チャンスをくれないか。
「そこを動くな!!!!!!!!!!」
息切れをしながらも、腹の底から出した大声。
おもむろにこちらを向いた瞳は、目玉がこぼれ落ちそうな程、見開かれる。
記憶の中より少し背が伸びていて、若干幼い雰囲気を残している華。
しかしどこか色気を含んだ立ち姿に、早く自分の腕の中に捕えなければと焦燥感に駆られた。
「華っ!!」
目をまん丸に開いたまま、動かない華の右腕を掴む。
「廉、さん」
「ふぅっ、…華…華…探した…」
こんな息切れと焦った顔で格好つかない。
だが、それでも何とか『全力で走ったけど余裕です』とでもいうような顔を心がける。
やっと捕んだ華の手首は、前より大分細くなっていた気がした。
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