a pair of fate

みか

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【第二部】

親子

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そう思っていた矢先の事。

早朝にも関わらず、長々と鳴り響くスマートフォン。


「えっ?お誕生日会?」


寝起きのガラガラ声で通話する相手は凛堂さん。
今週末に、本家で正臣さんのお誕生日会をするみたいだ。


『はい、ですので金条さんにも。若と、あ、蘭さんの方ですね。それと佐伯とご一緒にいらして下さい。』
「はい、わかりました…」


プツッと通話が切れる。

俺も行っていいのか?あの話を聞いて以来、初めて会うから、どんな顔すればいいのか分からない。
話を聞く限りでは、本当は歓迎されているようじゃないみたいだし。

正直逃げたい。黒川さんも来るだろうし。
歓迎の裏では…と考え出したら怖くて堪らない。





週末、昼過ぎに本家に到着。
琉唯くんと共に、蘭さんの運転する車から降りる。

そこへちょうど黒川さんの車も到着して、運転席から出てきた廉さんと目が合った。


「あ…」


今日もお馴染みのブラックスーツに身を包んだ廉さん。久しぶりに見るからなのか、とてもカッコよく見える。

中身が高校生のままだからなのか、ネクタイが少し歪んでいるのに直していない。
岩下さんとか見てるはずなのに、教えてあげないのかな?かわいい。


「二人で先行ってる」
「あ、うん、ありがとう」


蘭さんと琉唯くんは、気を使って先にお屋敷に入ってくれた。
駐車場に残ったのは、俺と黒川さん。


黒川さん、本当に久しぶりだ。
嬉しい、やっぱりかっこいい好き。
どうしよう変な顔してないかな?
ハグしたら怒られるかな?
嫌われたくないけど、触りたい。
けど普通に考えてダメだよな。

ぼんぽん頭の中に浮かんでは消えていく忙しい感情。
こんなに近くにいるのに、触れられなくて胸が苦しい。


っていうか…本当になに話せばいいんだろう…。


迷っていると、黒川さんが近付いてきた。

条件反射で後ずさり、砂利がザリっと音を立てる。


「こ、っんにちは」
「久しぶり」


それきり黒川さんは黙る。

あれ以来だ、どうせなら一番聞きたかったこと聞いてみよう。


「何であの時、蘭さんに預けたんですか」


ヒートの最中なのに、番じゃないαに俺を預けた理由。
黒川さんの口からきちんと説明して欲しかった。俺がしっかり納得できるように。


「…、…」


十分すぎる間の後、黒川さんは重い口を開くように言った。


「…おまえ、運命って信じる?」

「…え?」


俺の質問の答えにはなってないけど…。

もしかして、俺との事思い出した?

思い出してくれた?
俺と廉さんは運命の番で、唯一無二の存在なんだって!


「信じます!」


興奮から、思ったより大きな声が出る。


「俺と廉さんは運命の番ですよね?!運命じゃなくても大好きだし、ずっと、あの、上手く言えないけど廉さんが好きで、…好きです!!!」


開いた距離を縮めるように、数歩近付き黒川さんの手を握る。

振り払われたりはしない。

でも、黒川さんはそれを見つめるだけで、握り返してはくれなかった。


「…お前の運命の番は、…俺じゃない」

「は?そんなわけ…」


目を逸らし、そのままやんわりと外された手。
俺は初めて黒川さんに拒絶された。


早とちりの期待は見事に打ち砕かれる。
拒絶と期待外れのショックで、目の前が真っ暗になった。


「…先に運命って言ったのはそっちだろ…」


ぽつりと呟いた声は、少し震えてしまった。

先に屋敷へ消えていく背に、独り言はきっと届いていない。

俺はあと何回絶望すれば報われるんだろう。




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