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【第二部】
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しおりを挟むあれから一週間で黒川さんは退院した。
そして俺は、黒川さんの真下の部屋に移って暮らし始めた。
黒川さんの下の階には誰も住んでいない。
あの運転手さんが言うには『みんな若の下で暮らすなんて畏れ多い』らしい。
あ、運転手さんの名前は岩下さんっていうのを最近知った。
『若の番』として構成員さんたちに把握されていた俺。黒川さんが記憶喪失になったって知ってから、構成員さんたちが励ましてくれるから、まだ挫けずに済んでる。
「金条さん、棚はここでイイっすか!」
「え~岩下センスなくない?絶対あっちだって」
「蘭さん静かに!岩下さん!そこがいいです!ありがとうございます」
ぶーぶー邪魔をしてくる蘭さんを黙らせ、棚を運び入れてくれた岩下さんに頷く。
暮らし始めたと言っても、家具はまだ全然揃っていない。
今日も岩下さんや琉唯くん、蘭さんと4人でせっせか動いている。
壁や家具はもちろん黒ではない。基本は茶色にしている。
でも黒川さんと一緒にいるみたいにしたいから、寝室だけは黒川さんの所と同じように、全部真っ黒にしてしまった。
「華くん、これで最後?」
「ん~、そうですね!」
蘭さんが運び入れてくれた本棚で最後。
俺の一人暮らし新居が完成した。
これから一人で生活するという実感が湧いてきて寂しくなった。
「んあー疲れた~!」
「蘭さんが運んだの本棚だけ…」
「皆さん!次は買い物ッスよ!」
伸びをする蘭さんにツッコミを入れる琉唯くん。それと、昼ご飯の買い出しにワクワクしている岩下さん。
4人で家を出て、キーケースから新しい鍵を取りだし施錠する。
新しい鍵の横に並ぶ黒川さんの家の合鍵の色がくすんで見える。
もう合鍵を使う事は無くなってしまった。
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