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【第二部】
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しおりを挟む「てか優斗は?」
「さっき電話したから多分もうすぐ着くよ」
父さんに頷き、目を閉じる。
たくさんの視線を感じて居心地が悪かった。
「黒川さんっ!寝ちゃだめです!!」
目を閉じた途端、聞こえる切羽詰まった声。
「…」
強く左手を握られ、もう一度目を開ける。
俺の手を握ったのは、無表情な茶髪野郎だった。
きゅっと眉を寄せて『絶対だめです!』と、もう一度繰り返す。その表情を見た途端、ドキドキドキドキ・・・と速く動く心臓。
こいつ必死な顔もできるんだ。面白いなぁ。
「…ごめん、眠い…」
もっと色んな顔見たい、けど…眠い…。
俺は眠気に抗わず、そのまま目を閉じた。
体を強く叩かれる痛さに、ハっと目を開けると優斗がベッド横に立っていた。
病室には気を使ってくれたのか、優斗と俺だけになっている。
「廉!心配したんだぞ!!」
「優斗!……、…髪、…え?老けた?」
それに髪もめちゃくちゃ伸びてる。
父さんと同じように首を傾げた優斗。
白く染めて、後ろで束ねた髪がサラっと揺れた。
昨日まで俺と変わらないくらいの長さだったのに。
「失礼だな、1週間と少しでそんな変わった?」
体を起こそうとすると、全身痛くて思わずベッドに逆戻りする。
「変わった…父さんも蘭もおかしい。白髪が増えてるしピアスも増えてる。昨日まで無かったのに」
「昨日って…蘭は昨日まで中国にいたんだぞ?」
「………は?昨日まで期末…」
中国?いつから日本は中国になったんだ。
どういう事だ。
「期末?てか父さんって呼び方懐かしいな~高校生の時くらいだっけ?本当にお前頭でも打っておかしくなっ……いや、…ガチでおかしくなったか?」
「…あ~…」
認めたくないがそうかもしれない。
知らない構成員に成長した理央、老けた父さんと優斗。
目を覚ましてからのおかしな出来事、ひとつの可能性が頭に浮かんだ。
よくドラマや恋愛映画である『記憶喪失』ってやつ。
問いに否定しない、できない俺に顔を強ばらせた優斗がナースコールのボタンを押した。
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