a pair of fate

みか

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【第二部】

寝顔

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さっきまで理央が座っていた椅子に座って、未だに寝ている黒川さんを眺める。


やっぱり顔は青白くて、一分一秒過ぎる毎にどこかに行っちゃいそうだ。
今、黒川さんを狙ってる誰かが来たら、この管を外して殺す事もできる。
そう思うと怖くてたまらない。


「…寝すぎじゃないですかね…」


ピクリとも動かない手に、自分の手を重ねて握る。

もちろん握り返される事は無く、嫌な想像ばかり止まらない。空調は完璧なはずなのに、背中がじっとり汗ばんだ。


「…俺の元気あげます」


冷たい手だ。
俺よりほんのちょっと大きくて、いつも頭とか頬を撫でて可愛がってくれるのに。

今日はなんの反応もない。


「っ…ん」


不意に心臓がギューーっと握り締められたみたいに苦しくなって、次は鼻がつーんとする。

目頭が熱くなって視界が滲んだ。


「…ぅう…」


パタパタと、涙がシーツに落ちて色を変える。
手の甲で拭っても拭っても止まらない。

行ってきますのチューはとても恥ずかしかった。なのに1日してないだけで、こんなに寂しくなるなんて知らなかった。


『泣くな、目が溶けるぞ』って言って欲しい。
俺の涙を拭って抱きしめて欲しい。


いつも当たり前にやってもらってることなのに、こんなに難しくなってしまった。


「…っぅぅうぁぁ…ひっ…、く…」


何回深呼吸しようとしても、喉はひくひく引き攣るし息もできない。


二人きりだけど一人きり。


初めて黒川さんの前で声を上げて大泣きしても、慰めてくれる事はなかった。



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