a pair of fate

みか

文字の大きさ
上 下
151 / 226
【第二部】

青天の霹靂

しおりを挟む



「ぅわ」

「危ねぇ~、ほら、早く出ろよ」


ビックリしすぎて落としたのを、琉唯くんが見事な動体視力でキャッチしてくれた。
忙しなく着信を告げるスマホ。

非通知って怖くて苦手かも。

応答ボタンを押すと、しばらく聞いていなかった声が聞こえてきた。


『あ!繋がった!華くんの携帯で合ってる?』

「あ、はい!」


電話を掛けてきたのは正臣さん。黒川さんのお父さんだ。


『今一人かな?』

「佐伯くんと二人です」


そういえば電話番号交換してなかったなぁ。
急に何の用だろう。


『そうか、実はさっき警察から連絡が来て──』


正臣さんの声が遠くでボーっと聞こえる。


「……………」


………いま何て言った?


「……な、…おい華!」


しばらく何を言われたか分からずに呆然とする。
ぱちん!と乾いた音が聞こえて、俺の右頬が熱くなった。


「華!誰から何て言われたんだよ!」


ハッとすると、目の前には眉をぎゅーっと寄せた琉唯くん。

頬がぴりぴりひりひりする。

そうだ、俺、電話してたんだ。ていうか叩かれた…。

貸せ!と怒鳴った琉唯くんが、俺の手からスマホを奪って話し始める。
段々と顔色を失っていく琉唯くんに、今言われた事は嘘ではないと実感して頭が真っ白になった。


「誰ですか!えっ、会長?!……はい、早野さんに連れてってもらいます」

「あ、…」

「急いで戻るぞ!」


ガシッと腕を掴まれて、花屋さんまでの道を逆戻りする。

俺いつも琉唯くんに引っ張られて走ってるなぁ。


「はぁっ、はっ、」


『──廉が信号無視したトラックに撥ねられて──』


息苦しいのなんか気にならない。足がもつれて何度も転けそうになるけど、その度に琉唯くんに引き上げられる。


「早野さん!!若が!!」


事情を聞くとすぐに車を出してくれた早野さん。

車の中で、ずっと正臣さんの声がループする。


「…琉唯くん…」

「大丈夫だって」


琉唯くんは俺を安心させるように緩く笑い、それ以降、何も言わない。

それが逆に不安を煽った。車内はお通夜レベルで静かだ。
もうしりとりでも何でも良いから喋って欲しい。


「ど、しよ…廉さん…」


どうしよう、どうしよう、黒川さん、大丈夫かな。



しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

インテリヤクザは子守りができない

タタミ
BL
とある事件で大学を中退した初瀬岳は、極道の道へ進みわずか5年で兼城組の若頭にまで上り詰めていた。 冷酷非道なやり口で出世したものの不必要に凄惨な報復を繰り返した結果、組長から『人間味を学べ』という名目で組のシマで立ちんぼをしていた少年・皆木冬馬の教育を任されてしまう。 なんでも性接待で物事を進めようとするバカな冬馬を煙たがっていたが、小学生の頃に親に捨てられ字もろくに読めないとわかると、徐々に同情という名の情を抱くようになり……──

君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》

市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。 男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。 (旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。

いつかコントローラーを投げ出して

せんぷう
BL
 オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。  世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。  バランサー。  アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。  これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。  裏社会のトップにして最強のアルファ攻め  ×  最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け ※オメガバース特殊設定、追加性別有り .

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

組長と俺の話

性癖詰め込みおばけ
BL
その名の通り、組長と主人公の話 え、主人公のキャラ変が激しい?誤字がある? ( ᵒ̴̶̷᷄꒳ᵒ̴̶̷᷅ )それはホントにごめんなさい 1日1話かけたらいいな〜(他人事) 面白かったら、是非コメントをお願いします!

Endless Summer Night ~終わらない夏~

樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった” 長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、 ひと夏の契約でリゾートにやってきた。 最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、 気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。 そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。 ***前作品とは完全に切り離したお話ですが、 世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***

処理中です...