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【第二部】
青天の霹靂
しおりを挟む「ぅわ」
「危ねぇ~、ほら、早く出ろよ」
ビックリしすぎて落としたのを、琉唯くんが見事な動体視力でキャッチしてくれた。
忙しなく着信を告げるスマホ。
非通知って怖くて苦手かも。
応答ボタンを押すと、しばらく聞いていなかった声が聞こえてきた。
『あ!繋がった!華くんの携帯で合ってる?』
「あ、はい!」
電話を掛けてきたのは正臣さん。黒川さんのお父さんだ。
『今一人かな?』
「佐伯くんと二人です」
そういえば電話番号交換してなかったなぁ。
急に何の用だろう。
『そうか、実はさっき警察から連絡が来て──』
正臣さんの声が遠くでボーっと聞こえる。
「……………」
………いま何て言った?
「……な、…おい華!」
しばらく何を言われたか分からずに呆然とする。
ぱちん!と乾いた音が聞こえて、俺の右頬が熱くなった。
「華!誰から何て言われたんだよ!」
ハッとすると、目の前には眉をぎゅーっと寄せた琉唯くん。
頬がぴりぴりひりひりする。
そうだ、俺、電話してたんだ。ていうか叩かれた…。
貸せ!と怒鳴った琉唯くんが、俺の手からスマホを奪って話し始める。
段々と顔色を失っていく琉唯くんに、今言われた事は嘘ではないと実感して頭が真っ白になった。
「誰ですか!えっ、会長?!……はい、早野さんに連れてってもらいます」
「あ、…」
「急いで戻るぞ!」
ガシッと腕を掴まれて、花屋さんまでの道を逆戻りする。
俺いつも琉唯くんに引っ張られて走ってるなぁ。
「はぁっ、はっ、」
『──廉が信号無視したトラックに撥ねられて──』
息苦しいのなんか気にならない。足がもつれて何度も転けそうになるけど、その度に琉唯くんに引き上げられる。
「早野さん!!若が!!」
事情を聞くとすぐに車を出してくれた早野さん。
車の中で、ずっと正臣さんの声がループする。
「…琉唯くん…」
「大丈夫だって」
琉唯くんは俺を安心させるように緩く笑い、それ以降、何も言わない。
それが逆に不安を煽った。車内はお通夜レベルで静かだ。
もうしりとりでも何でも良いから喋って欲しい。
「ど、しよ…廉さん…」
どうしよう、どうしよう、黒川さん、大丈夫かな。
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