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【第一部】
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しおりを挟む昨日は黒川さんの家に泊まった。
一晩中ハグして寝てくれたけどセックスはしてくれなかった。
俺からキスしても、黒川さんは頭を撫でて早く寝ろって言っただけだった。
黒川さんに触ってもらって、上書きしてもらおうなんて狡い考えを見抜かれていたのかもしれない。
黒川さんが他人に触られた俺に触れたいかなんて分からないのに。
そして今日、俺は薄暗い『倉庫』に来ていた。
コンクリート造りのここはホコリっぽくて、真夏なのにひんやりしている。
本当は来たくなかったのに半強制的に連れてこられて、テンションは低い。
学校もサボる事になってしまったし。
てか誰が自分を襲おうとしたやつとまた会いたいって思うんだよ。
「大丈夫か?」
「この状況で大丈夫な方が色々ヤバいって…」
どんな顔すればいいのか分からない俺の隣には琉唯くん。
近くには黒川さんと何故か早野さんもいる。
さっき『金条くん久しぶりです~!』なんてニコニコ癒し全開の笑顔で言われたけど絶対、場違いだ。
キキィー…と鉄の錆びたドアの開く音が聞こえてチラッと下がっていた視線を向ける。
「おはよ~ちょっと拉致るのに時間かかった、ごめんな」
コツコツと品の良い革靴の音を鳴らしながら入ってきたのは白林さん。
その横には、連行された犯人よろしく先生が少し猫背でヨタヨタと歩いている。
「遅い」
「連れてきただけ感謝して欲しいな。唐突に『体育教師連れてこい』だけ言われて電話切られた俺の気持ち考えた?今日は街に新人スカウトしに行こうと思ってたのに」
先生は顔を上げて黒川さんを見た。
次に早野さんを見つけてその近くにいた琉唯くん。
最後にギロっと血走った目が俺を捉えた。
「金条ッッッ!!!!!!」
「ごっ、めんなさいっ」
何もしてないのに、されたのは俺なのに口からは反射的に謝罪が飛び出る。
教師から怒鳴られたら謝ってしまうのが生徒の性だ。
やっぱりまた何かされるのかな。
あの力の強さと全てが不快だったのを思い出して震えが止まらない。
ぎゅっと拳を握って目を閉じると右手が何かに握られる。
「あ…」
「若がいるから大丈夫だろ」
俺を恐怖から救ってくれたのは琉唯くんだった。
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