a pair of fate

みか

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【第一部】

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それだけで嬉しい。

やっぱりオメガでよかった。


「…なら…あの、またちゃんと正臣さんに挨拶したいです。凛堂さんにも会いたいし、」

「あぁ、全然い、…やっぱダメ」


まさかの拒否にビシッと固まる。

黒川さんのドタキャン事件なんて知らなかったし、この間も色々ありすぎて最悪な印象しか持たれてないだろうから・・・と思って頼んでみたのにあっさり拒否された。

全然いいよ、かと思ったのに!
てか優しそうな顔してたからいけると思ったのに!


「なんでですか!!」

「内緒」


まさか断られるとは思わずに立ち上がって抗議するけど、黒川さんの意思は変わらないらしい。

俺は心の中で黒川さんにたくさんバカバカと言った。







あれからさっさと歯磨きして寝るぞって言われたので、大人しく二人で歯磨きして今はベッドの中。

せっかくお泊まりできるんだから一秒も離れたくなくて、珍しく俺から抱き着いたりなんかしちゃってる。
全身黒川さんの匂いに包まれてドキドキするけど安心感がすごい。



「たまにはこうやって何もしないで寝るのもいいな」

「ですね・・・やっぱり正臣さんにあいさ」

「駄目」



言い終わらないうちにぶった斬られて悔しい。

ムッとしてみても『駄目なもんは駄目』と言われて効果なし。
俺だって理由を言ってもらわないと納得できない。



「何でですか!」

「・・・正臣さんって呼ぶの嫌」



嫌、って・・・ならなんて呼べばいいんだ。
会長さんはさすがに怒られそうだし。

俺よりむすーっとして俺から顔を背ける黒川さんは少し、いや、かなり子供っぽくて可愛い。

でも黒川さんは黒川さんだし、正臣さんの事をお父さんなんて呼んで『お前の父さんになった覚えはない!』とか言われたら絶対チビる。



「だって華さ、セックスの時か~何か思い切った時しか廉さんって呼んでくれねーし。俺だって廉さんがいい」



もっともな事を言われてうっと唸る。

だって下の名前で呼ぶって意識してる人だと超恥ずかしいんだ。
めちゃくちゃ恋人って感じして、ムズムズする。

でもここで廉さん呼びしないと正臣さんに挨拶できない。
俺は絶対黒川さんとずっと一緒にいたいから、正臣さんには気に入られておきたいところだ。



「廉さんのお父さんにもう一回挨拶したいです駄目ですか!」



こうなったらやけくそだ。
なんの早口言葉だってくらいのスピードで言ってぎゅっと目を閉じる。

お願いだからいいよって言ってくれ・・・!!


1秒・・・2秒・・・3秒・・・


たっぷり時間をかけて閉じていた目をそっと開ける。



「・・・いいよ」



えっ!!!!今いいよって!!
顔を上げると、黒川さんは優しく微笑みながら俺を見下ろしていた。



「えっ…ヤクザがそんなにチョロくて大丈夫ですか…」

「凛堂に言いつけるぞ」

「…指は大切なので言わないでください」

「夏休み終わる前に行こうな」

「ンフフ・・・はい・・・」



あぁ~・・・頭撫でられたら眠くなる・・・




「おやすみ華」

「・・ん・・れんさん・・・だい、…すき…」



今日は気を張っていたせいか、温かい手で頭を撫でられ急激に眠気が襲ってくる。

それに抗わず大好きな黒川さんにちょっと笑って目を閉じた。

ちゃんと笑えてたらいいな、と思いながら。




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