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【第一部】
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しおりを挟む「凄かったな、写真上手く撮れた?」
「ベストショットばっかりですよ、後で送りますね」
また手を繋いでプールを後にする。
イルカショー凄かった…。
夜景をバックに大ジャンプするイルカは昼間と違って迫力があったし、何よりめちゃくちゃロマンチックだった。
薄暗いからってあちこちでチュッチュしてるカップルも数組いた。
イチャイチャしてんじゃねぇよ!途中からそっちが気になってずっとドキドキしてたわ!と心の中で悪態をつきながら歩く。
イルカショーが終わったらすぐ閉館だからもう出ないといけない。
水族館を出てコンビニまで送ってもらったら、黒川さんとは暫く会えないのを急に思い出して少しテンションが下がる。
楽しい時間はいつもあっという間に終わるんだ。
「動くぞ」
「はい」
静かに動き出す車。
いつも通りの安全運転と、いつも通りに握られる俺の右手。
女の人みたいな横顔も、ハンドル操作をする綺麗な腕も。
「華」
俺を呼ぶ甘い声も、全てが暫くの間 感じられないと思うと心臓がきゅっと痛んで治まらない。
あと数十分しか一緒にいられないから最後は楽しい雰囲気でお別れしたいなと思い、努めて明るい声で返事した。
「今日、楽しかった?」
「はい!今まで行った水族館で一番楽しかったです!」
よかったな、と言いながら頭を撫でてくれる大きくて優しい手。
それも当たり前にまたすぐ元通りに繋がれた。
それにドキドキするのと同じくらいキリキリ痛む胸。
学校が始まると暫く会えないなんて耐えられない。
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