a pair of fate

みか

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【第一部】

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花火大会当日。
俺は朝からソワソワしていた。
いくらソワソワしてもし足りないくらいだ。

待ち合わせの1時間前になって準備をはじめる。

花火大会だからやっぱ浴衣だよな?黒川さんも浴衣かな?絶対似合う~、なんて考えながら自分の浴衣を引っ張り出す。

あれ、合わせは右が上?左が上?とか一年ぶりで着方を忘れていたので色々調べながら何とか完成。


「こんなもん?」


姿見に映るのは紺の浴衣に薄いベージュの帯をした俺の姿。
中学生の頃は浴衣に着られてるわねぇ、なんて言われてたけど、高校生になってからは中々似合ってるのではないかと個人的に思う。

その次は黒川さんに貰った腕時計を着ける。シンプルだから今着けても全然違和感がなくて流石だな。

信玄袋の中に財布、キーケースとハンカチ、ポケットティッシュを入れて準備完了!

フワフワした気持ちを落ち着かせる為に深呼吸をしてこけない様に階段を下りる。
玄関には既に俺の浴衣に合わせたサンダルが置いてあった。さすが母。


「行ってきまーす」


みんなそれぞれ準備があるから返事はなかったけど一応声をかけてから外に出る。
外に出ると生ぬるい風が俺を包む。いつもはこの風が嫌だけど、花火大会に行く時だけは夏を感じるので好きだったりする。


花火大会の出店が始まるのは5時くらいで、メインの打ち上げ花火があるのは7時くらいだ。

黒川さんは今日のために少し早めに仕事を切り上げてくれるらしい。少し、いや大分嬉しい。
待ち合わせ場所のいつものコンビニに着いた。
6時に待ち合わせだから、あと10分くらいで黒川さんが迎えに来てくれる。


「…すー…はー…」


今日何度目かの深呼吸をしても落ち着かない。何回か待ち合わせした事はあるけど毎回緊張する。
慣れるどころかどんどん緊張の度合いは大きくなるばかり。
こんなんじゃそのうち黒川さんの事考えるだけで緊張するようになりそうだ。

そわそわしながら何度もスマホで時間を確認していると待ち合わせまであと1分。


「…遅いなぁ」


きょろきょろしても黒川さんの車は見当たらない。
まだ一応待ち合わせ時間じゃないけど5分前には来てそうなのに。


「……」


それから5分、住宅街の方から駅に向かって浴衣姿で歩いていく家族連れや恋人たちをコンビニの駐車場から見送る。

みんな笑顔で花火大会に向かってるのに俺の気分は沈むばかり。
時間になってから2回電話してみたけど繋がらなかった。


「マジ?1時間経った…」


気付けば待ち合わせ時間から10分、20分、30分…

黒川さんを待ち続けてついに1時間経った。


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