77 / 226
【第一部】
2 side 金条 華
しおりを挟む「華」
「あ!お帰りなさい!」
戻ってきた黒川さんは細長い箱と四角い箱を一つずつ持っていた。
なんだろうと思っていると、俺の隣に潜り込んできた黒川さんは、俺にそれを突き出す。
受け取れって事かな?
「俺に?開けていいですか?」
「うん」
どうやら俺へのプレゼント的な物のようだ。
なんでこのタイミングなんだろう。
四角い箱は横に置いて、まず細長い箱を手に取る。するとラッピングの紙を開けると白い箱が表れる。
上の蓋をパカっと取ると中にあったのはクッションに置かれた黒い腕時計だった。
めちゃくちゃシンプルで大人って感じ。普段高級品を見ない俺でもわかる。超高そう。
「早いけど誕生日プレゼント」
「えっ…嬉しいです!ありがとうございます!」
誕生日教えてなかったのになんで知ってんだろ。
そんな疑問も浮かんだが、嬉しさですぐ忘れる。
ワクワクしながら腕時計を丁寧に取り出し左手首に着けると、なんかすっごい大人っぽく見える。
黒だから黒川さんみたい!!
「見てください!黒川さんみたいです!あ、いつも黒川さんと一緒に居るような感じ…的な…」
腕時計を着けた左手首を黒川さんに見せると満足そうに笑って頭を撫でてくれた。
なんか黒川さんも嬉しそうな顔してる!今のはちょっとキモいかなと思ったけど反応が良かったので良しとする。
次はもうひとつの四角い箱。
こっちもラッピングの紙をとって箱の蓋を開ける。
中に入っていたのは紙に包まれた小さな折り畳み財布だった。薄紫で可愛い。
「それキーケース」
「…あ、本当だ。」
黒川さんに言われて財布だと思ってたのはキーケースなのに気付く。
確かにチャックとか無いし。革製でこれも高そう。全く知らないブランドだけどきっとハイセンスなブランドなんだろうなぁ。
俺、家のスペアキー2回も失くしたしけど、これに付けたら失くさないよな。
「家の鍵これに付けますね。ありがとうございます!」
「…あとこれも」
キーケースをまた箱に戻していたら黒川さんに手首を掴まれる。
「手開いて」
言われた通りに手を開くと、手のひらに置かれたのはどこかの家の鍵。
どこの家の鍵なのか心当たりがあるのはひとつだけ。
嘘だ。え、本当に?手のひらに乗った鍵が途端に重く感じる。
期待でドクドク爆走する心臓を落ち着かせる為に深呼吸を繰り返す。
「…これって、あの…」
「ここの鍵。いつでも来ていい。」
ここの鍵。
つまり黒川さん宅の鍵。
いつでも来ていいって…それって…それくらい俺とのこと真剣に考えてくれてるってこと?
「…お、俺なんかに渡していいんですか…」
「俺が選んだ華なんだから何も気にすんな」
とても嬉しいはずなのに何故か同時に同じくらい不安になって隣の黒川さんを見上げると、肩を抱き寄せられ一回触れるだけのキスをされる。
「…ぅぅう嬉しいっ、です…」
「よく泣くな、寝るか?」
ここ数日間毎日泣いているはずなのにやっぱり涙はたくさん出てきて頬を濡らす。黒川さんは俺を抱き締めながらベッドに転がる。
寝ますと頷くと優しく髪を梳かれる。
それが心地よくて嬉しくて幸せで、でも少し恥ずかしい。
あたたかくて幸せな気持ちで、そのまま寝落ちてしまった。
10
お気に入りに追加
253
あなたにおすすめの小説

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

ヤクザと捨て子
幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子
ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。
ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。
インテリヤクザは子守りができない
タタミ
BL
とある事件で大学を中退した初瀬岳は、極道の道へ進みわずか5年で兼城組の若頭にまで上り詰めていた。
冷酷非道なやり口で出世したものの不必要に凄惨な報復を繰り返した結果、組長から『人間味を学べ』という名目で組のシマで立ちんぼをしていた少年・皆木冬馬の教育を任されてしまう。
なんでも性接待で物事を進めようとするバカな冬馬を煙たがっていたが、小学生の頃に親に捨てられ字もろくに読めないとわかると、徐々に同情という名の情を抱くようになり……──

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる