a pair of fate

みか

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【第一部】

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イルカショーが終わり華の待つクリオネコーナーに歩いていると電話が鳴る。

相手は華につかせた専用の護衛から。

『本当にすみません。金条様が凛堂さんに攫われました』なんてぬかしやがる。

何の為につかせた護衛だ。と思いながらあの凛堂が俺に楯突いたのにとても違和感がある。
あいつ華を気に入りやがったか?じゃないと、水族館に連れて来ていた護衛全員にわざわざ俺が『先に本家に向かえ』と、凛堂に命令したとか嘘の情報流すような面倒臭い真似しないだろう。


「──クソっ」


どれだけイラついても早く着けるわけじゃない。
行き先が本家なだけまだマシだ。

そうして車を飛ばし着いた本家。

相変わらずスーツの下っ端が挨拶してくるけど一々返事をしている時間はない。ドスドス廊下を歩いて東の間へと向かう。


『まっ、ままままさおみさん!!!』


襖の向こうから華の声が聞こえてくる。

正臣、俺の親父の名前。

あの親父があっさり本名を教えたのがもう驚きだが、華が親父を正臣さん呼びしているのが気に食わない。俺もまだ苗字でしか呼ばれてないのに。

力任せに引いた襖から見えたのは親父にくっつく華の姿。

目の前が真っ赤に染まる。

俺と親父はそっくりで、俺と双子の兄はもっとそっくりだ。

華に好かれている自信はあるがそんなにくっつかれるて似た顔に迫られるともしかしたら、なんて考えてしまう。

名前を呼んでも親父とくっついている華。
離れろよ、そう思うが俺に気付き目玉が零れそうな程驚いている華の向こう側で、親父が俺をじっ…と見ているから下手に動けない。
まさか華を殺ったりはしないだろうが、相変わらず何を考えているか分からない顔だ。

それからは怒鳴って怒鳴られ大惨事。
華は出て行くし、理央は大泣きだし、親父は笑ってるし、東の間の外ではザワザワと何処かで全てを聞いていた部下がざわめいている。


「はぁ…」

「ハハハ、早く追い掛けてあげなよ廉」


思わずしゃがんで頭をガシガシ掻く俺を笑う親父。
理央は華にブスと言われたショックで男子高校生らしからぬ泣き方をしていて、うるさいしイライラする。


「やだぁぁぁ廉いかないでぇぇ」

「あ゛~…あぁ…はいはい…」


ひぃぃぃぃっくひぃぃぃぃっくっとしゃくり上げる理央を慰めてやる気にはならない。

本音を言うと今すぐ走って華を追い掛けたい。

いくら本家とは言え全員の部下が華を把握してるとは思えないし、万が一襲われたら、なんて考えるだけで相手を全員殺す俺が容易に想像できる。

それでも親父の手前雑に扱う事は出来ず、理央が泣き疲れて寝るまで東の間に拘束されたのだった。



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