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【第一部】
終業式
しおりを挟む黒川さんとデートした土日から開けた週の金曜日、今日は一学期の終業式だ。
結局あの後、俺は行き先を決められず黒川さんが良く行くカフェとか本屋さんとかに連れて行ってもらった。
それで俺は進路をどうするか黒川さんに相談しようとしていたのをすっかり忘れていた。
結局、第一志望は爽と同じく事務所に入る様にした。父さんは意外にも『お前の人生だ。好きな様にしろ』と言ったし、母は最初から俺の選んだ進路は応援するつもりだったらしい。
拍子抜けしたけどまぁ爽と白林さんがいるしまだ不安はあるけど、やりたい事も無かったのでチャレンジしてみようと爽と約束した。
「─なので、三年生は最後の夏休みとなりますが─」
何回目だよそのフレーズ…。
20分近くダラダラ話し続けている校長に欠伸を噛み殺す。校長の話が長過ぎて周りの生徒も結構な数が船を漕いでいる。
きっと俺の数人後ろの爽も寝ているんだろう。
「──希望進路実現に向け、努力をするように。以上です。」
あ、終わった。
周りが立ったのに遅れて俺も立ち上がり、礼をする。
それから教室に戻り課題を貰ったらすぐ解散になった。
「華~帰ろーぜ~マック寄ろ~」
「ん、いいよ」
昇降口を出ると梅雨明けしたばかりの太陽の日差しが俺らを照りつける。それに蝉の鳴き声も重なって暑さが倍増だ。
爽は『あちいあちい~』と言いながら肩を組んでくるが、俺はそっちの方が暑いし他人に触られるのは好きじゃないせいで少し、いや、大分不快だ。
「俺の方があちいって離れろよ」
「えーー華低体温で気持ちいい」
「ウザ俺は暑いし気持ち悪い」
こんな俺にも相変わらず仲良くしてくれる爽をあしらいながら着いたファストフード店に入る。
注文を済ませて席で待っているとポケットのスマホが振動して、画面を見ると黒川さんからのメッセージを受信していた。
『今どこ?』
深く何も考えずに『マックです』と返信した後に考える。
何で俺がこの時間に返事するって分かってる?もしかして今日が終業式なのも知ってる?いや知ってるな。と、いうことは…
──♪♪
気付いた瞬間、着信音が鳴る。
爽はまだ戻ってこないし、と思い応答ボタンを押した。
「…もしもし」
『○○店で合ってる?』
「も、もしかして、」
『迎え行く。出てくるまで車で待ってるからそっから俺ん家な』
「…はい」
拒否権なんてないような言い方。
要件だけ聞いて了解を得るとさっさと切られて、まるで仕事の電話をしたみたいだなと思う。
まじかよ…俺なんかしたっけ…と考えていると爽が二人分のバーガーが乗ったトレーを持って戻ってきた。
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