a pair of fate

【第一部】

9

「黒川さん…起きてください、鳴ってます…」

「…あ？」

「ぁ…アラーム…鳴って…ます…」

「…あぁ…ごめん」


延々鳴り響くアラーム音と中々起きない黒川さんに痺れを切らし、ゴソゴソと身動ぎをして黒川さんの肩を揺する。
ゆっくり目を開けた黒川さんは低血圧よろしくド低音で、人を殺せそうな雰囲気を醸し出しながらご起床なさった。

起こしたのが俺だと理解するとふわっと笑い『ありがとな』と頭を撫でてくれたけどそんなのでは誤魔化しきれないくらいさっきの目が忘れられなくて頬が引き攣る。

本職ヤクザだもんな…。
ヤクザの頭様が恋人で番とかとんでもねぇな…。


「下で朝飯食ったら出るぞ。そっからどこ行きたいか考えとけ」

「え？今日もどっか連れてってくれるんですか？」

「あ～、うん。…最近会ってなかったから」

「え？」


ベッドから降りてスマホを持ったと思えば最後の一言と共に寝室のドアが閉まる。俺は衝撃すぎて数分固まっていた。まさかあんな事言われるなんて思ってなかった。


「最近会ってなかったから…って…乙女かよ…」


まぁ確かに会ってなかったけど、俺たちはまだ付き合ってなかったしお互いの事を全然知らないも同然だ。
黒川さんってもっと冷めてそうって言うか、クールそうなのに、なんか、とてつもなく俺に対する行動や表情が甘くて未だに時々混乱する。

似合わないな、と思いながら緩む頬を直しもせず洗面所にいる黒川さんの元へ行き、一緒に身支度をした。