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【第一部】
はじめてのデート
しおりを挟む「ああああぁぁぁぁあ!!!!」
真っ暗闇からぬっ、と登場した白い着物の物体から逃れるように、隣の黒川さんに縋りついた。
「お前なぁ…」
5回目くらいの俺の絶叫に呆れた黒川さんが何か言っているが、半パニックに陥っている俺の耳には何も届かない。
ここは廃病院。夜な夜な幽霊達が歩き回っていて、自分達を助けれくれなかった人間に復讐をしようと…という設定の廃病院、もといお化け屋敷だ。
何でノコノコ付いてきちゃったんだろう…、と頭の片隅で猛烈に後悔する俺だった。
「無理…リタイアしたい…」
「もうすぐ出口だから我慢しろ」
事の発端は昨日の夜、期末考査も終わり後は夏休みを待つだけ。いつものように俺はベッドでゴロゴロしていた。
金曜日なのに早く寝るのは何か勿体ない、と時間を持て余していた所に黒川さんから『遊園地行かないか』とお誘いが来たのだ。
うん、まぁ何で俺のLIME知ってるか、とか今更気にしないけどね。
土日は基本、家に居たいけど遊園地とか何年も行ってなかったので二つ返事でOKしてしまった。
てっきり白林さんと早野さんも一緒かと思っていたのに迎えに来てくれたのは黒川さんだけで、二人きり。
これは、いわゆるデートでは?とソワソワして眠れず、お化け屋敷で絶叫してクタクタの現在、という流れだ。
「…はぁ…疲れました…」
「あんだけ叫べばな。何で入るって言ったんだよ」
「…だって…」
フードコートにある二人がけのテラス席に腰掛けると『喉乾いたろ?』と何処から出したのか、ペットボトルのお茶をくれる黒川さん。
デキる人だなぁ…エスコートし慣れてるし格好良いしさぞかしおモテになる事だろう。
今だってチラチラと周囲の人達が黒川さんを見ているのだ。気付かない方がおかしい。
「だって?」
みんな見てるけど俺の番なんだよ…しかも運命らしい。と少し優越感に浸っていたが、そこで意識は黒川さんに引き戻される。
「黒川さんが入りたいって言ったから」
「へぇ。生意気な癖に可愛いとこあるんだな」
ニヤニヤするかと思っていたのに、花が綻ぶような笑みで言われ顔が熱くなるのがわかった。
照れ隠しに椅子から立ち上がりコーヒーカップへ向かって歩く。
「は?うるさいです!もう!コーヒーカップは一人で行ってください!!」
「そう言いながら向かってるの気付けよ。あ、二人で」
スマートに係のお姉さんに告げた黒川さんに背中を押され水色のカップに座る。
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