a pair of fate

みか

文字の大きさ
上 下
26 / 226
【第一部】

いつも通りの日常

しおりを挟む


「…あっつ…」


胸元のシャツを掴みパタパタと服の中に空気を送るが、あまり蒸し暑さは変わらないような気がして止める。

そろそろ中間服もしんどい気温になってきた。

夏服移行まだかな?

まだ6月上旬だと言うのにジリジリ照りつける太陽から逃げるように日陰を歩いていると、後ろから勢いよく誰かに肩を組まれる。


「は~な!おはよ」

「っわ、…爽かよ…おはよ…離れろ…」

「お前低体温で気持ちい~」

「俺は不快指数マックス」


カラカラと笑いながら俺の肩に体重を掛けてくるこの男は清水 爽。

『君〇届け』の風〇くんみたいな典型的な陽キャイケメンだ。

名前に合った爽やかなルックスを台無しにするような、気持ち悪いダル絡みをしてくる俺の数少ない友達。


「お前黙ってたら良いのに」

「それは華も。てか進路どうした?プリント提出今日だよな」

「…プリント…?…あっ!!忘れてた…」

「お~華が忘れ物とか珍しい」


俺たちは3年生。
もうそろそろ進路決定してそれに合った対策をしなければならない。

なのに週末、番が出来たりプロポーズされたり、その相手がまさかのヤクザ(仮)(笑)と色々ありすぎて進路希望表の存在を忘れていた。


「今から書いても余裕で間に合うっしょ。進学?就職?」

「や、俺やりたい事なくてさ…」


実際忘れてなくても空白のまま提出したかもしれない。

将来の夢なんてなくて、普通に暮らして普通に幸せになりたい、それが夢って感じだったから改めて将来何になりたいか?なんて考えた事がなかった。

因みに隣のイケメンさんは芸能界に入って『世界に俺の名を轟かせたい』らしい。こいつなら勢いでやりかねん。

不意に爽があっ!!と何かを思い付いたように声を上げた。


「華も俺と芸能界目指そうぜ」

「何言ってんだよ冗談キツい」


何を言い出すかと思えば…。

クラスで極力目立たない様に過ごしているのに、それより広い世間に自分から登場するなんて考えられない。

爽は芸能界に通用する見た目かもしれないが俺は平々凡々の男子高校生。
想像するだけで胃が痛い。


「俺はイケると思うけどな~!爽やかイケメンと無気力イケメンで事務所に売り出してもらおうぜ!」

「はいはい。もう着いたから」


意気揚々と将来を語る爽を適当にあしらう、いつも通りの一日が始まった。


*


「じゃあな~」

「また明日~」


分かれ道で爽に手を振り、家へと向かう。

あぁ、この間こんな風にいつも通りの帰り道に母さんからおつかい頼まれて黒川さんと出会ったよな。

ついこの間なのにその数日間が濃密過ぎて、何も無い今日が非日常のような感じがした。







しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

いつかコントローラーを投げ出して

せんぷう
BL
 オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。  世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。  バランサー。  アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。  これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。  裏社会のトップにして最強のアルファ攻め  ×  最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け ※オメガバース特殊設定、追加性別有り .

インテリヤクザは子守りができない

タタミ
BL
とある事件で大学を中退した初瀬岳は、極道の道へ進みわずか5年で兼城組の若頭にまで上り詰めていた。 冷酷非道なやり口で出世したものの不必要に凄惨な報復を繰り返した結果、組長から『人間味を学べ』という名目で組のシマで立ちんぼをしていた少年・皆木冬馬の教育を任されてしまう。 なんでも性接待で物事を進めようとするバカな冬馬を煙たがっていたが、小学生の頃に親に捨てられ字もろくに読めないとわかると、徐々に同情という名の情を抱くようになり……──

【胸が痛いくらい、綺麗な空に】 -ゆっくり恋する毎日-

悠里
BL
コミュ力高めな司×人と話すのが苦手な湊。 「たまに会う」から「気になる」 「気になる」から「好き?」から……。  成長しながら、ゆっくりすすむ、恋心。  楽しんで頂けますように♡

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

組長と俺の話

性癖詰め込みおばけ
BL
その名の通り、組長と主人公の話 え、主人公のキャラ変が激しい?誤字がある? ( ᵒ̴̶̷᷄꒳ᵒ̴̶̷᷅ )それはホントにごめんなさい 1日1話かけたらいいな〜(他人事) 面白かったら、是非コメントをお願いします!

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

処理中です...