a pair of fate

みか

文字の大きさ
上 下
24 / 226
【第一部】

2

しおりを挟む


『結婚しないか?』『結婚しないか?』『結婚しないか?』と脳内で木霊する『結婚しないか?』


「………………………は………?」


何秒、何十秒、または何分かためてやっと絞り出した声は酷く間抜けだった。

結婚…?結婚ってなんだっけ?


「…ちょ、っと何言ってるんですか、ね…」

「…………」


冗談か?と思ったが黒川さんの顔は至って真剣でとても冗談を言っているような顔ではなかった。


「…え?…結婚、…結婚…?…?」

「…俺と…結婚…しないか…?」


俺と黒川さんが揃いのタキシードを着てバージンロードを歩いて指輪交換をして誓いのキスとかケーキ入刀とか想像できない…。

あ、…黒川さん極道?だから盃?和装?あれ?指詰めたり?それは罰だっけ?どっちにしろ全然想像できない…。

てかまだ出会って数日だよな?それで高校生に求婚って普通に考えて結構ヤバくないか?
いやこの人色々ヤバいから今更だ。


「…華…」

「…、…えぇっ、と…」


じり…っと微妙に距離を縮めてくる黒川さんから距離を取る。

熱い視線で見詰められ思わず『不束者ですが宜しくお願い致します』なんて雰囲気に流されて言いそうになる。


「あっ!あの!」


それだけは絶対に駄目だ!
俺はまだ極道の姐さんになる覚悟は出来てない!指だって大切だ!と慌てて立ち上がると、ガタッと椅子が音を立てて倒れた。 


「おおおおれ帰ります!!」

「は?」


ポカンと口を開ける黒川さんから一歩ずつ離れ寝室を探す。

まずリビングから出た。

確か荷物は寝室って言ってたよな?寝室…寝室…どこだよ!!

失礼だがドアを順番に勝手に開け閉めする。寝室は中々見つからない。


「おい」

「っひ」


背後から地を這うような声が聞こえ振り向くと俺のバッグ二つ持った黒川さん。


「送ってく…」

「あ、ありがとうございます…」


スタスタ歩く黒川さんと、右手右足が同時に出そうになる俺はマンションを後にした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

【好きと言えるまで】 -LIKEとLOVEの違い、分かる?-

悠里
BL
「LIKEとLOVEの違い、分かる?」 「オレがお前のこと、好きなのは、LOVEの方だよ」  告白されて。答えが出るまで何年でも待つと言われて。  4か月ずーっと、ふわふわ考え中…。  その快斗が、夏休みにすこしだけ帰ってくる。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ

樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー 消えない思いをまだ読んでおられない方は 、 続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。 消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が 高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、 それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。 消えない思いに比べると、 更新はゆっくりになると思いますが、 またまた宜しくお願い致します。

グッバイ運命

星羽なま
BL
表紙イラストは【ぬか。】様に制作いただきました。 《あらすじ》 〜決意の弱さは幸か不幸か〜  社会人七年目の渚琉志(なぎさりゅうじ)には、同い年の相沢悠透(あいざわゆうと)という恋人がいる。  二人は大学で琉志が発情してしまったことをきっかけに距離を深めて行った。琉志はその出会いに"運命の人"だと感じ、二人が恋に落ちるには時間など必要なかった。  付き合って八年経つ二人は、お互いに不安なことも増えて行った。それは、お互いがオメガだったからである。  苦労することを分かっていて付き合ったはずなのに、社会に出ると現実を知っていく日々だった。  歳を重ねるにつれ、将来への心配ばかりが募る。二人はやがて、すれ違いばかりになり、関係は悪い方向へ向かっていった。  そんな中、琉志の"運命の番"が現れる。二人にとっては最悪の事態。それでも愛する気持ちは同じかと思ったが… "運命の人"と"運命の番"。  お互いが幸せになるために、二人が選択した運命は── 《登場人物》 ◯渚琉志(なぎさりゅうじ)…社会人七年目の28歳。10月16日生まれ。身長176cm。 自分がオメガであることで、他人に迷惑をかけないように生きてきた。 ◯相沢悠透(あいざわゆうと)…同じく社会人七年目の28歳。10月29日生まれ。身長178cm。 アルファだと偽って生きてきた。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話

ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。 βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。 そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。 イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。 3部構成のうち、1部まで公開予定です。 イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。 最新はTwitterに掲載しています。

処理中です...