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【第一部】
お話し合い side 金条 華
しおりを挟むバタン、と玄関のドアが閉まる音が聞こえる。
俺は書斎を出てすぐの所にずるずる座り込んだ。
「マジか…」
…明らかに俺が聞いちゃいけない内容だったよなぁ。
さっきデカい音が聞こえて急いで来たら早野さんが黒川さん締めてんだもん。
それで早野さん超怒ってて……って、さっきの早野さん思い出すだけでも怖いな。
αに負けてねぇよあの迫力。
カウンセリングの途中で俺が黒川さん怖かったって言ったし、黒川さんが痛い思いしてるの俺のせいじゃん…。
リビングのテーブルで一人項垂れる黒川さんにそっと近付いて声をかける。
「…黒川さん…あの…」
「華…あ~…お前に話したい事がある」
隣の椅子を引かれ、そこに座る。
「さっきの話、聞いてたか?」
そう聞いてきた黒川さんには今朝の覇気がなくて、なんか落ち込んでるように見えた俺は焦ってよく分からない事を口走る。
「…はい、あの、俺、まだよくわかんないですけど黒川さんと番になったの、正直そこまで嫌じゃないですし、あ~、全然怖くないし、、えっと~、、」
「ありがとな」
そう遮って言った顔はとても優しい笑顔だった。
「俺の話、聞いてくれるか?」
「はい」
「中々信じられない話だと思うけど、…」
それから黒川さんから色々聞いた。
黒川さんには『赤い糸』ってやつが見えるらしい。
よく聞く『運命の赤い糸』ってやつ。
それが俺に繋がってたんだって。
五年前くらいから見え始めて、ずっと俺の事探してたけど、糸を意識して見ようとしたら他人の糸も見えてすっごく絡まってたから中々見つからなかったらしい。
あの日は仕事帰りであのネオン街の近くを通っただけだったけど、急に引っ張られる感じがして俺のこと見つけて勢いで番った。
「…ざっくり言うとこんな感じだ…。早野も言ってたが俺は本当に許されない事をした。許して欲しい訳じゃない。」
「…はい」
「…で、…その…」
いつの間にか繋がれている両手をにぎにぎしながら口篭る黒川さん。
その顔はここ数日間で一番真剣な顔だ。
「…その?」
「…、…俺はお前を幸せにしたい。」
「…?はい?」
「…あ…えっと……結婚しないか?」
『結婚』という二文字が頭の中をふわふわと漂う。
まさかのぶっ飛んだトンデモ発言をした黒川さんに一瞬気を失いそうになった。
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