a pair of fate

みか

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【第一部】

はじめてのカウンセリング

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パタンとリビングと書斎を隔てるドアが閉められて、俺と早野さん二人きりになる。

大きめの本棚が二つ並んでいてパソコンが置いてある机と椅子が一つあるだけの部屋。
パソコンの横には分厚い書類がたくさん置いてある。

壁紙もデスクも何もかも真っ黒だ…。

黒川さんのお仕事部屋かな?ヤクザじゃない方のお仕事の。

ラグの上に向かいあわせでぺたんと座ると、早野さんは大きめの肩掛けバッグからメモ帳とペンを取り出した。


「カウンセリングです!まず金条くん、何歳の時にヒートが来ました?」

「かうん…?えっ、と…」


お話しと言っていたのに唐突なカウンセリングが始まる。

ヒートって発情期の事だよな?まだ来てないよ俺…、いやこの間発情してたって黒川さん言ってたっけ?あれ?でもヒートって一日で終わらないよな?てことはやっぱりまだ来てないって事?と少し考え込む。


「すみません、答えづらいですよね…、でも僕、一応お医者さんなので安心してください」


そう言ってふわふわと微笑んだ早野さん。
なんか不思議な人。
なんでも話したくなる雰囲気だなぁと安心して口を開いた。


「…えっと、ヒートまだ来てないんです、けど一昨日は発情してたって黒川さんが」

「うんうん、その時はどんな感じでした?」


俺に質問しながらメモ帳に素早くペンを走らせている。


「ん~、まず後ろから捕まって噛まれた時…」

「後ろから噛まれた…?」


『捕まって』というワードに早野さんは器用に片眉をぴくりと上げる。なんか怒らせたかな…?

「そうですその時の黒川さん怖かったんですよ…。で、なんか、体がビリビリして熱くてふわふわして…」


抽象的な答えにニコニコしながら頷いてくれてこれ伝わってるのかな?という心配はなくなりどんどん口が滑る。


「うんうん。噛まれた時は皆そうなりますから大丈夫ですよ。」

「はい。で、急に意識が飛んで、目が覚めた時は平気だったんですけど、黒川さんと目が合った時またビリビリして熱くて」

「あ、もう大丈夫です。ありがとうございます!僕が呼びに来るまでここで待っていて下さい!!」


俺に被せて少し大きめの声を出した早野さんはすくっと立ち上がると部屋から出ていった。


「…え?早野さん…行っちゃった…」


放心状態で座り込んでいるとリビングの方から『ガァン!!!!』と結構大きめの音が聞こえる。


「!…え、…なに…」


え?なになに?極道の敵対組が乗り込んできたとか?なんて変に冷静になるけど笑えないなそれ。

とりあえず見に行ってみるか、と俺も書斎を出てリビングに向かった。



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