上 下
5 / 5
第一章 魔法のない世界

第四話 正解という魔法

しおりを挟む
 俺は今、とても後悔している。昨日オナニーをして魔力を高めたことをとても後悔している。

 昨日魔力を高めたのはいいが、その反動で昨夜は一睡も出来なかったのだ。翌朝はまだ高校があった様で、授業中で睡眠時間を確保しなければ、このあと歩くことすらままならない。

「江戸川!!寝てるのか!?」

 あぁ、前の方から中年男性の大きな声が聞こえる。この声は確か数学の芝木先生だったかな?

「え、江戸川くん!!起きて!!起きて!!」

 荒井さんのささやく声と後ろから背中を小さく叩かれて俺は視線を上げた。記憶の中ではまっさらだったはずの黒板にはいつの間にかぎっしりとチョークで文字が敷き詰められていた。

「寝てた罰だ。この問題は江戸川に解いてもらう。」

(え、えぇ!?)

 寝ていた俺が悪い。それは重々承知している。が、いくらなんでもムリがあるだろう。

 いや、そんなことはない。と言うか俺にとってはなんの苦ではない。

 袖口に潜めていた杖を机の下で握り、「アンサー」の魔法を無詠唱した。アンサーの魔法はその名の通り、問題のAnserすなわち答えを記してくれる魔法である。

 使ってから一秒もかからないうちに俺にしか見えない文字が黒板の上に浮かび上がってきた。あとは簡単なお仕事をするだけだ。浮かんでいる文字をチョークでなぞるだけ。

 そうそう。なぞりながら考えている風に「ゴニョゴニョ」とつぶいやいていればいいだけの事だった。

 スラスラとチョークが黒板を走る。後ろにたくさんいる真面目な生徒たちが俺がなぞっていく答えを見て驚きの声を上げている。自分としてはそれほど難しい事をしているつもりは無いが、そうでは無いのかもしれない。

 結構な数字と記号、文字をなぞって最後に答えを書いた。席に戻る際に芝木先生の顔を見てみると驚きの意を隠し切れていなかった。

「せ、正解だ……」

 あとから聞いた話だと、このとき俺がなぞっただけの問題は「大学入試」とやらのレベルの問題で、高校一年生がこの問題を解けるのはかなり凄い事らしい。

 この江戸川涼真という男がもともとどのくらいの学力だったかは分からないが、恐らくここまでの物ではないだろう。

 俺はこっちの世界について余りにも無知だ。無知だから変な行動をしかねない。これからはあまり目立たない様にひっそりと生きていかなければ……

 ただ、今回のことで一つだけいい事があった。

 荒井さんに「江戸川くん凄いね!!なんであの問題が解けたの!?」と笑顔と共に褒めてもらうことができたことだ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

二度目の勇者の美醜逆転世界ハーレムルート

猫丸
恋愛
全人類の悲願である魔王討伐を果たした地球の勇者。 彼を待っていたのは富でも名誉でもなく、ただ使い捨てられたという現実と別の次元への強制転移だった。 地球でもなく、勇者として召喚された世界でもない世界。 そこは美醜の価値観が逆転した歪な世界だった。 そうして少年と少女は出会い―――物語は始まる。 他のサイトでも投稿しているものに手を加えたものになります。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

異世界エステ〜チートスキル『エステ』で美少女たちをマッサージしていたら、いつの間にか裏社会をも支配する異世界の帝王になっていた件〜

福寿草真@植物使いコミカライズ連載中!
ファンタジー
【Sランク冒険者を、お姫様を、オイルマッサージでトロトロにして成り上がり!?】 何の取り柄もないごく普通のアラサー、安間想介はある日唐突に異世界転移をしてしまう。 魔物や魔法が存在するありふれたファンタジー世界で想介が神様からもらったチートスキルは最強の戦闘系スキル……ではなく、『エステ』スキルという前代未聞の力で!? これはごく普通の男がエステ店を開き、オイルマッサージで沢山の異世界女性をトロトロにしながら、瞬く間に成り上がっていく物語。 スキル『エステ』は成長すると、マッサージを行うだけで体力回復、病気の治療、バフが発生するなど様々な効果が出てくるチートスキルです。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

処理中です...