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第一章 魔法のない世界
第四話 正解という魔法
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俺は今、とても後悔している。昨日オナニーをして魔力を高めたことをとても後悔している。
昨日魔力を高めたのはいいが、その反動で昨夜は一睡も出来なかったのだ。翌朝はまだ高校があった様で、授業中で睡眠時間を確保しなければ、このあと歩くことすらままならない。
「江戸川!!寝てるのか!?」
あぁ、前の方から中年男性の大きな声が聞こえる。この声は確か数学の芝木先生だったかな?
「え、江戸川くん!!起きて!!起きて!!」
荒井さんのささやく声と後ろから背中を小さく叩かれて俺は視線を上げた。記憶の中ではまっさらだったはずの黒板にはいつの間にかぎっしりとチョークで文字が敷き詰められていた。
「寝てた罰だ。この問題は江戸川に解いてもらう。」
(え、えぇ!?)
寝ていた俺が悪い。それは重々承知している。が、いくらなんでもムリがあるだろう。
いや、そんなことはない。と言うか俺にとってはなんの苦ではない。
袖口に潜めていた杖を机の下で握り、「アンサー」の魔法を無詠唱した。アンサーの魔法はその名の通り、問題のAnserすなわち答えを記してくれる魔法である。
使ってから一秒もかからないうちに俺にしか見えない文字が黒板の上に浮かび上がってきた。あとは簡単なお仕事をするだけだ。浮かんでいる文字をチョークでなぞるだけ。
そうそう。なぞりながら考えている風に「ゴニョゴニョ」とつぶいやいていればいいだけの事だった。
スラスラとチョークが黒板を走る。後ろにたくさんいる真面目な生徒たちが俺がなぞっていく答えを見て驚きの声を上げている。自分としてはそれほど難しい事をしているつもりは無いが、そうでは無いのかもしれない。
結構な数字と記号、文字をなぞって最後に答えを書いた。席に戻る際に芝木先生の顔を見てみると驚きの意を隠し切れていなかった。
「せ、正解だ……」
あとから聞いた話だと、このとき俺がなぞっただけの問題は「大学入試」とやらのレベルの問題で、高校一年生がこの問題を解けるのはかなり凄い事らしい。
この江戸川涼真という男がもともとどのくらいの学力だったかは分からないが、恐らくここまでの物ではないだろう。
俺はこっちの世界について余りにも無知だ。無知だから変な行動をしかねない。これからはあまり目立たない様にひっそりと生きていかなければ……
ただ、今回のことで一つだけいい事があった。
荒井さんに「江戸川くん凄いね!!なんであの問題が解けたの!?」と笑顔と共に褒めてもらうことができたことだ。
昨日魔力を高めたのはいいが、その反動で昨夜は一睡も出来なかったのだ。翌朝はまだ高校があった様で、授業中で睡眠時間を確保しなければ、このあと歩くことすらままならない。
「江戸川!!寝てるのか!?」
あぁ、前の方から中年男性の大きな声が聞こえる。この声は確か数学の芝木先生だったかな?
「え、江戸川くん!!起きて!!起きて!!」
荒井さんのささやく声と後ろから背中を小さく叩かれて俺は視線を上げた。記憶の中ではまっさらだったはずの黒板にはいつの間にかぎっしりとチョークで文字が敷き詰められていた。
「寝てた罰だ。この問題は江戸川に解いてもらう。」
(え、えぇ!?)
寝ていた俺が悪い。それは重々承知している。が、いくらなんでもムリがあるだろう。
いや、そんなことはない。と言うか俺にとってはなんの苦ではない。
袖口に潜めていた杖を机の下で握り、「アンサー」の魔法を無詠唱した。アンサーの魔法はその名の通り、問題のAnserすなわち答えを記してくれる魔法である。
使ってから一秒もかからないうちに俺にしか見えない文字が黒板の上に浮かび上がってきた。あとは簡単なお仕事をするだけだ。浮かんでいる文字をチョークでなぞるだけ。
そうそう。なぞりながら考えている風に「ゴニョゴニョ」とつぶいやいていればいいだけの事だった。
スラスラとチョークが黒板を走る。後ろにたくさんいる真面目な生徒たちが俺がなぞっていく答えを見て驚きの声を上げている。自分としてはそれほど難しい事をしているつもりは無いが、そうでは無いのかもしれない。
結構な数字と記号、文字をなぞって最後に答えを書いた。席に戻る際に芝木先生の顔を見てみると驚きの意を隠し切れていなかった。
「せ、正解だ……」
あとから聞いた話だと、このとき俺がなぞっただけの問題は「大学入試」とやらのレベルの問題で、高校一年生がこの問題を解けるのはかなり凄い事らしい。
この江戸川涼真という男がもともとどのくらいの学力だったかは分からないが、恐らくここまでの物ではないだろう。
俺はこっちの世界について余りにも無知だ。無知だから変な行動をしかねない。これからはあまり目立たない様にひっそりと生きていかなければ……
ただ、今回のことで一つだけいい事があった。
荒井さんに「江戸川くん凄いね!!なんであの問題が解けたの!?」と笑顔と共に褒めてもらうことができたことだ。
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