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「ヘルファイア!!」
俺が呪文を唱えるとかざした杖の先端から無数の炎が生まれ迫りくる的に向かって放たれた。“ヘル級魔法”は5つある強度のうち3番目に位置するものだが、基礎魔力によってその攻撃力も強弱がつけられる。
レジェンドパワー。言い換えて伝説の力を手に入れた俺のそれは常人の何倍の威力にもなる。
この世界には魔法が存在する。魔法は何かにダメージを与える攻撃系、傷ついたものを修復する回復系、生活する上で使用する日常系と大まかに3分割することができる。
そして攻撃系魔法を極めたものを魔法使、回復系魔法を極めたものを祈祷使という。
俺はリョウマ=エドガー(16歳)。統一国家エルダントの近衛魔法使長(国王の警護をする者たちのリーダー)だ。現在エルダント国内では極右派のミツル=トーマス総相(総理大臣)と極左派のサトル=ジャガー軍元帥(軍事的トップ)による内乱が起こっていて、国王ヨシロウ=マクロンはジャガーによって幽閉されていた。
近衛魔法使長として国王と同行していた俺は彼の命によって幽閉先のジヤ旧宮殿(ジャガーの本拠地)から抜け出し王都・マクランまで向かいトマースと合流、彼を総大将としてジヤより国王を救出するために軍を編成した。
総勢4万を超える王国兵が30キロの道のりを2日で移動し終えると、俺が脱走したことに気がついたジャガー軍によって既に戦支度が整えられていた。
ジャガー軍はわずか2000程とはいえ質が雲底の差ほど違う。そのため俺は慎重に策を練ることをトーマスに進言した。しかし数の差に気が大きくなっていた総大将は総攻撃の令を下し、歴史史上最大規模の魔法合戦・ジヤの大合戦が幕を開けた。
序盤こそ数の差が効いて右派有利と見られたが、地形作戦や奇襲といった左派の古典的な攻撃によって4万いたはずの兵士は2時間も経たないうちに1万を切ろうとしていた。
「総相。どうされますか。」
総大将ももはや名ばかりとなってしまったトーマスは逃げ支度を着々と進めていた。仕舞には俺の話も耳に入っていない。
「総相!!」
「こ、この場はお前に任せる。わ、私は一足早く王都へと戻り、凱旋の支度をしなくては。」
そういう程なくしてトーマスとその手勢500は戦場から撤退した。双方の魔法が激しく火花を散らし合う前線へと向かいながら俺はこの日初めて杖を握った。
俺が音もないまま前線へ現れると一瞬だけ敵味方の魔法戦が止まった。その隙を逃さず俺はヘルファイアを無詠唱で放った。詠唱有りに比べると威力は劣る無詠唱魔法だが、その分発動までのスピードは何倍も速くなる。
炎の最後尾についていく形で飛行し最下威力のライトサンダーを無詠唱で敵一人ひとりに打ち込んでいく。
自分たちが使っていた奇襲を今度は自らが喰らうことになるとは考えもしていなかったのだろう。あっという間にジャガー軍300による前線部隊は崩壊した。続いて次鋒部隊600も俺のヘルウィンド(風)によって風散、残るはジャガーと200の魔法兵のみだった。
しかし、敵の兵士殆どが圧倒的力量差に絶望したのか約半数が投降、もう半分は逃亡していった。
「残るは貴方だけのようですぞ。ジャガー卿」
俺が杖を暴走将軍の方へ向けてもなお彼は抵抗しようとした。しかし、俺の”ムーブロック”の魔法によってその動きは停止した。それから、俺は囚われていた国王を救い出し、動きが停止した状態のまま極悪人を王都へと連れ戻した。
あれから一週間が経ちジャガーとその周辺人物が処刑された。戦の真っ最中に戦場から逃げ出したトーマスは失脚し地元へと戻っていった。そして今日は俺が国王陛下から恩賞を頂く日だ。
午前10時頃屋敷を出て式典は11時頃から始まった。王宮の大広間にて国王が俺に向かってありがたいお言葉を述べられている。ただ、話はかなり長い。いくら俺でも一時間以上も跪いていると疲労が溜まってきてしまう。
そんな状況で俺の警戒心はいつもよりかなり減ってしまっていた。普段だったら気付けるような殺気を逃してしまっていたのだ。
俺が賞状を受け取るために身を起こした時だった。背後に魔力が使用されたのに気がついたがもう手遅れだった。鋭い刺感が背中に走り、猛毒と思わしき何かが体中を駆け巡り始めた。
毒の塗られたナイフが背中に刺さっている。俺は体制を立て直しライトサンダーを無詠唱で敵に放ったがそれが間違いだった。治癒に使用されていた魔力の供給が一瞬止まっただけで猛毒が身体の隅から隅までを蝕んだのだ。
それから少しも経たない間に、俺はこの世を去った。
筈だった。目が覚めるとそこは天国ではなく見たことのない小さな部屋の小さなベッドの上だった。
俺が呪文を唱えるとかざした杖の先端から無数の炎が生まれ迫りくる的に向かって放たれた。“ヘル級魔法”は5つある強度のうち3番目に位置するものだが、基礎魔力によってその攻撃力も強弱がつけられる。
レジェンドパワー。言い換えて伝説の力を手に入れた俺のそれは常人の何倍の威力にもなる。
この世界には魔法が存在する。魔法は何かにダメージを与える攻撃系、傷ついたものを修復する回復系、生活する上で使用する日常系と大まかに3分割することができる。
そして攻撃系魔法を極めたものを魔法使、回復系魔法を極めたものを祈祷使という。
俺はリョウマ=エドガー(16歳)。統一国家エルダントの近衛魔法使長(国王の警護をする者たちのリーダー)だ。現在エルダント国内では極右派のミツル=トーマス総相(総理大臣)と極左派のサトル=ジャガー軍元帥(軍事的トップ)による内乱が起こっていて、国王ヨシロウ=マクロンはジャガーによって幽閉されていた。
近衛魔法使長として国王と同行していた俺は彼の命によって幽閉先のジヤ旧宮殿(ジャガーの本拠地)から抜け出し王都・マクランまで向かいトマースと合流、彼を総大将としてジヤより国王を救出するために軍を編成した。
総勢4万を超える王国兵が30キロの道のりを2日で移動し終えると、俺が脱走したことに気がついたジャガー軍によって既に戦支度が整えられていた。
ジャガー軍はわずか2000程とはいえ質が雲底の差ほど違う。そのため俺は慎重に策を練ることをトーマスに進言した。しかし数の差に気が大きくなっていた総大将は総攻撃の令を下し、歴史史上最大規模の魔法合戦・ジヤの大合戦が幕を開けた。
序盤こそ数の差が効いて右派有利と見られたが、地形作戦や奇襲といった左派の古典的な攻撃によって4万いたはずの兵士は2時間も経たないうちに1万を切ろうとしていた。
「総相。どうされますか。」
総大将ももはや名ばかりとなってしまったトーマスは逃げ支度を着々と進めていた。仕舞には俺の話も耳に入っていない。
「総相!!」
「こ、この場はお前に任せる。わ、私は一足早く王都へと戻り、凱旋の支度をしなくては。」
そういう程なくしてトーマスとその手勢500は戦場から撤退した。双方の魔法が激しく火花を散らし合う前線へと向かいながら俺はこの日初めて杖を握った。
俺が音もないまま前線へ現れると一瞬だけ敵味方の魔法戦が止まった。その隙を逃さず俺はヘルファイアを無詠唱で放った。詠唱有りに比べると威力は劣る無詠唱魔法だが、その分発動までのスピードは何倍も速くなる。
炎の最後尾についていく形で飛行し最下威力のライトサンダーを無詠唱で敵一人ひとりに打ち込んでいく。
自分たちが使っていた奇襲を今度は自らが喰らうことになるとは考えもしていなかったのだろう。あっという間にジャガー軍300による前線部隊は崩壊した。続いて次鋒部隊600も俺のヘルウィンド(風)によって風散、残るはジャガーと200の魔法兵のみだった。
しかし、敵の兵士殆どが圧倒的力量差に絶望したのか約半数が投降、もう半分は逃亡していった。
「残るは貴方だけのようですぞ。ジャガー卿」
俺が杖を暴走将軍の方へ向けてもなお彼は抵抗しようとした。しかし、俺の”ムーブロック”の魔法によってその動きは停止した。それから、俺は囚われていた国王を救い出し、動きが停止した状態のまま極悪人を王都へと連れ戻した。
あれから一週間が経ちジャガーとその周辺人物が処刑された。戦の真っ最中に戦場から逃げ出したトーマスは失脚し地元へと戻っていった。そして今日は俺が国王陛下から恩賞を頂く日だ。
午前10時頃屋敷を出て式典は11時頃から始まった。王宮の大広間にて国王が俺に向かってありがたいお言葉を述べられている。ただ、話はかなり長い。いくら俺でも一時間以上も跪いていると疲労が溜まってきてしまう。
そんな状況で俺の警戒心はいつもよりかなり減ってしまっていた。普段だったら気付けるような殺気を逃してしまっていたのだ。
俺が賞状を受け取るために身を起こした時だった。背後に魔力が使用されたのに気がついたがもう手遅れだった。鋭い刺感が背中に走り、猛毒と思わしき何かが体中を駆け巡り始めた。
毒の塗られたナイフが背中に刺さっている。俺は体制を立て直しライトサンダーを無詠唱で敵に放ったがそれが間違いだった。治癒に使用されていた魔力の供給が一瞬止まっただけで猛毒が身体の隅から隅までを蝕んだのだ。
それから少しも経たない間に、俺はこの世を去った。
筈だった。目が覚めるとそこは天国ではなく見たことのない小さな部屋の小さなベッドの上だった。
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