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第19話 初めてのクエスト➁
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炎トカゲがいると言われている場所に歩いていく。
手にはさっきのクエストの紙を持っていた。地図が書いてあるからだ。
まあ、実際には見る必要などないのだが、サクヤになんで道がわかるの? なんて言われたらなんて答えればいいかわからない。
ましてやこのユニークスキルのことは打ち明けたくない。
まだこの能力には不確定なことが多い。
ミストの口ぶりからすると、なにかありそうだし危険に巻き込む可能性だってある。こういう時こそ慎重に行くべきだ。
話すとしても少し経ってからでも遅くはないはずだ。
「確かこの辺にいるって書いてあったよな……」
そうこうしているうちに地図の場所につく。
「火山ね……」
ここは王都の近くにあるウルト火山というところの入ってすぐにある場所だ。
炎トカゲというだけあって少し暑い場所に生息しているらしい。
本来なら立ち入り禁止らしいが、今回は討伐ということで中に入れた。
火山なんか初めて入ったが、色々と神秘的で凄い。
「なんか暑くて嫌になっちゃうわ……」
「確かにそうだな暑い……」
服一枚しか着ていないっていうのに凄い暑さだ。
燃えて消えてしまいそうだ……
「少し脱ごうかな……」
すると、汗をかいてきたんだろう。
サクヤが服を脱ごうとする。
「……ちょ、ちょっと待て。ここで脱ぐのは色々とあれだからやめてくれ……」
俺は目をサクヤから逸らす。
一緒に暮らしていたとはいっても裸を見たりしないし、流石にまずい気が……
そんなことを思っていると。
「!? なに勘違いしてんの! そう言う意味で言ったんじゃないから。ちゃんと下に服着こんでるから!」
サクヤの顔が一気に赤くなる。
火山だっていう事もあると思うが、恥ずかしがっているに違いない。
「……それはすまん」
「全くもう……本当にもう」
だって変なこと言うから、勘違いしちゃったじゃないか……
これって俺が悪いのか。いまのは脱ごうとしてたサクヤが悪くないのか……
「……やっぱ暑いから脱ぐ」
一枚服を脱ぐ。
したには言ってた通りきちんと羽織っていたが、肌が少し露出していてあんまり見ない事にする。
「って……あ」
そんなことをしていたせいでその場で足をすべらせた。
ズドーンと大きな音をしながら倒れる。
「……いたたたた」
転んだ後ろになにか支えのようなものがあり、腰を痛める。
「大丈夫? 怪我してない!?」
「……ああ、痛いけどなんとかなりそうだ」
「え、でもちょっと怪我してるよ。……ちょっと待ってて」
すると、サクヤが魔法を唱え始める。
「我が体に導かりし、生命よ。聖なる力で汝の傷を癒したまえ【ヒール】」
「おお……」
体の傷がほとんど治る。
さすってみるが、痛くもないし、辛くもない。治っているようだ。
「……お前、回復魔法なんか使えたのか?」
「うん、結構前から。こういう時のために私の魔法があるんだからね!」
「普通に凄いな……」
俺も回復魔法を使えると思うが、回復魔法は自分自身は癒せない。
だから怪我をした場合は他の人に回復魔法をかけてもらわないといけないのだ。
修行しているときもよく怪我をして大変だったが、サクヤが使えるなら軽いけがはなっても心配ないってことだ。
非常にありがたい。
……そう考えるともしかしてサクヤって意外と優秀なんじゃないか?
そう思ってもう一度サクヤの方をみるが。
「私って優秀すぎて困っちゃうわよね。もっと褒めてもいいのよ! ご飯をいっぱいくれるとかでも……」
「やっぱあほだわ。こいつ」
そう思った。
「あれ、レンの後ろになにかあるよ」
「そう言えばそうだな。確か、なんか物とぶつかって大きな音が……ってあ!?」
うしろを振り向くとそこには……
「やっちまった……」
石像のようなものが倒れていた。
というか壊れていた。壊したんだ。
……俺が。
「なにこれ……」
「わかんないけど多分大事そうなものだよな……」
ちょっとカッコイイ石像で結構でかい。
元々ひびが入っていたんだろう。
そうでないとぶつかっただけで壊れるはずがない。
……そう言えば許されたりするかな……大切にされているものならどうしよう。
最悪だ。壊してしまった。
「……とりあえず、逃げたほうが良さそうね」
「最低だな、おい」
「だってどうしようもないじゃない。見た感じだと相当な値段するわよ。昔、お母さんに見せてもらった石像も小さかったけど100万コロンはあったはずよ」
「100万コロンも!?」
「うん。模様も綺麗だし、頑張って作られているみたいね。この線とかね……ってなにこれ小さいお札みたいなの貼られてるんだけど。凄……」
「100万コロン……」
せっかく手に入れた100万コロン。
なくすには惜しい……
でもその分石像を作った人に申し訳ない気もする。
どうしよう……
悩む。非常に悩む。
そして俺は結論を出す。
「……まあでもいまはこのクエストに集中しよう。終わってから考えたほうが良さそうだしな」
結局こうなった。
だって仕方がないじゃないか。
面倒くさいし、問題になったら名乗り出て弁償しようと思うし。
いまは放置してもいいでしょ。
バレなかったら……その時はその時だな。
「よし、もういくぞ」
「まあ、レンがいいならいいけど」
俺たちは石像を無視して先に進む。
一応心の中で謝っておこう。
すいませんでした。
-------------------------
「やっと見つけた。炎トカゲだ!」
さっきのところから少し歩いたところで見つけた。
多分、間違いないと思う。
少しデカいトカゲで、体に炎をまとっていて案外カッコイイ。
ペットにいるなら飼いたいレベルだ。
「……少し倒すのは惜しいけど、やるしかないようだな。行くぞサクヤ」
「そうね、しかもちょうど5匹。こいつら全員倒してさっさと帰りましょう。お腹もすいてきたし」
「朝あんなに食べたのにまだ空いてるの!?」
そんな会話をしていると炎トカゲは俺たちの方に気づき、1匹目がこっちに向かってくる。
「まずは【ウォーター】」
手から水を出し、炎トカゲに当てる。
「くぅぅぅぅぅ……」
炎ということだけあって水には苦手らしいく、変な声を出しながらあっけなく倒れた。
「よし、1匹討伐! やっぱりブロンズのクエストだから簡単だな」
「私も【ファイアー】で1匹討伐したし、すぐに終わりそうね」
サクヤの近くには燃え果てた炎トカゲの姿が。
元々燃えているのにさらに燃えているとかどんだけの威力でやったんだよ……
少し炎トカゲがかわいそうになってくる。
「このまま倒していくぞ」
「うん」
そうして3匹もあっという間に倒した。
別に手ごたえなどほとんどなく楽に終わった。
「……簡単すぎて逆に怖い。ブロンズごときじゃ練習にもならないな。もっとシルバーとかゴールドとかにランクを上げないと……そしていつか俺もダイヤモンドに……」
「そういうのいいから。面白くないから。さっさと帰りましょう。クエストはこれで終了したんだし」
ライセンスを鞄から取り出し、見てみるとクエスト完了と書かれている。
本当に終わったらしい。
あとは帰るだけだな。
「よし、サクヤ。暑いしここをさっさと離れるぞってなにやったんだ?」
倒れている炎トカゲに近づいて、においをかいでいるようだった。
「さっきからちょっと変なにおいがしたからなんだろうなぁって」
「匂いね……確かにする。なにこれ……気持ちわる!」
臭いとかではなく、なんか気持ち悪い匂いだった。
なんだろう、この匂い。
そんなことを思っていた矢先あの声が聞こえて来た。
『解析完了。結果は以下の通りです』
「これってもしかしてスキルなのか……」
久しぶりにアイツの声を聞いた。
頭の中に変わらず、情報が入ってくる。
スキル《死の粉》
説明:炎トカゲの固有スキルで、死んだときに初めて発動するスキル。体から特殊なにおいをする粉を出し、仲間を呼ぶ。なお、仲間の数は数千にも及ぶため、別名――初心者殺しとも呼ばれている。
「おい、ちょっと待て。数千!? それってヤバいんじゃ……」
前をゆっくりをむく。
そこには……
「「がぅぅぅぅぅぅう!!!」」
物凄い勢いで迫ってくる炎トカゲの大群があった。
手にはさっきのクエストの紙を持っていた。地図が書いてあるからだ。
まあ、実際には見る必要などないのだが、サクヤになんで道がわかるの? なんて言われたらなんて答えればいいかわからない。
ましてやこのユニークスキルのことは打ち明けたくない。
まだこの能力には不確定なことが多い。
ミストの口ぶりからすると、なにかありそうだし危険に巻き込む可能性だってある。こういう時こそ慎重に行くべきだ。
話すとしても少し経ってからでも遅くはないはずだ。
「確かこの辺にいるって書いてあったよな……」
そうこうしているうちに地図の場所につく。
「火山ね……」
ここは王都の近くにあるウルト火山というところの入ってすぐにある場所だ。
炎トカゲというだけあって少し暑い場所に生息しているらしい。
本来なら立ち入り禁止らしいが、今回は討伐ということで中に入れた。
火山なんか初めて入ったが、色々と神秘的で凄い。
「なんか暑くて嫌になっちゃうわ……」
「確かにそうだな暑い……」
服一枚しか着ていないっていうのに凄い暑さだ。
燃えて消えてしまいそうだ……
「少し脱ごうかな……」
すると、汗をかいてきたんだろう。
サクヤが服を脱ごうとする。
「……ちょ、ちょっと待て。ここで脱ぐのは色々とあれだからやめてくれ……」
俺は目をサクヤから逸らす。
一緒に暮らしていたとはいっても裸を見たりしないし、流石にまずい気が……
そんなことを思っていると。
「!? なに勘違いしてんの! そう言う意味で言ったんじゃないから。ちゃんと下に服着こんでるから!」
サクヤの顔が一気に赤くなる。
火山だっていう事もあると思うが、恥ずかしがっているに違いない。
「……それはすまん」
「全くもう……本当にもう」
だって変なこと言うから、勘違いしちゃったじゃないか……
これって俺が悪いのか。いまのは脱ごうとしてたサクヤが悪くないのか……
「……やっぱ暑いから脱ぐ」
一枚服を脱ぐ。
したには言ってた通りきちんと羽織っていたが、肌が少し露出していてあんまり見ない事にする。
「って……あ」
そんなことをしていたせいでその場で足をすべらせた。
ズドーンと大きな音をしながら倒れる。
「……いたたたた」
転んだ後ろになにか支えのようなものがあり、腰を痛める。
「大丈夫? 怪我してない!?」
「……ああ、痛いけどなんとかなりそうだ」
「え、でもちょっと怪我してるよ。……ちょっと待ってて」
すると、サクヤが魔法を唱え始める。
「我が体に導かりし、生命よ。聖なる力で汝の傷を癒したまえ【ヒール】」
「おお……」
体の傷がほとんど治る。
さすってみるが、痛くもないし、辛くもない。治っているようだ。
「……お前、回復魔法なんか使えたのか?」
「うん、結構前から。こういう時のために私の魔法があるんだからね!」
「普通に凄いな……」
俺も回復魔法を使えると思うが、回復魔法は自分自身は癒せない。
だから怪我をした場合は他の人に回復魔法をかけてもらわないといけないのだ。
修行しているときもよく怪我をして大変だったが、サクヤが使えるなら軽いけがはなっても心配ないってことだ。
非常にありがたい。
……そう考えるともしかしてサクヤって意外と優秀なんじゃないか?
そう思ってもう一度サクヤの方をみるが。
「私って優秀すぎて困っちゃうわよね。もっと褒めてもいいのよ! ご飯をいっぱいくれるとかでも……」
「やっぱあほだわ。こいつ」
そう思った。
「あれ、レンの後ろになにかあるよ」
「そう言えばそうだな。確か、なんか物とぶつかって大きな音が……ってあ!?」
うしろを振り向くとそこには……
「やっちまった……」
石像のようなものが倒れていた。
というか壊れていた。壊したんだ。
……俺が。
「なにこれ……」
「わかんないけど多分大事そうなものだよな……」
ちょっとカッコイイ石像で結構でかい。
元々ひびが入っていたんだろう。
そうでないとぶつかっただけで壊れるはずがない。
……そう言えば許されたりするかな……大切にされているものならどうしよう。
最悪だ。壊してしまった。
「……とりあえず、逃げたほうが良さそうね」
「最低だな、おい」
「だってどうしようもないじゃない。見た感じだと相当な値段するわよ。昔、お母さんに見せてもらった石像も小さかったけど100万コロンはあったはずよ」
「100万コロンも!?」
「うん。模様も綺麗だし、頑張って作られているみたいね。この線とかね……ってなにこれ小さいお札みたいなの貼られてるんだけど。凄……」
「100万コロン……」
せっかく手に入れた100万コロン。
なくすには惜しい……
でもその分石像を作った人に申し訳ない気もする。
どうしよう……
悩む。非常に悩む。
そして俺は結論を出す。
「……まあでもいまはこのクエストに集中しよう。終わってから考えたほうが良さそうだしな」
結局こうなった。
だって仕方がないじゃないか。
面倒くさいし、問題になったら名乗り出て弁償しようと思うし。
いまは放置してもいいでしょ。
バレなかったら……その時はその時だな。
「よし、もういくぞ」
「まあ、レンがいいならいいけど」
俺たちは石像を無視して先に進む。
一応心の中で謝っておこう。
すいませんでした。
-------------------------
「やっと見つけた。炎トカゲだ!」
さっきのところから少し歩いたところで見つけた。
多分、間違いないと思う。
少しデカいトカゲで、体に炎をまとっていて案外カッコイイ。
ペットにいるなら飼いたいレベルだ。
「……少し倒すのは惜しいけど、やるしかないようだな。行くぞサクヤ」
「そうね、しかもちょうど5匹。こいつら全員倒してさっさと帰りましょう。お腹もすいてきたし」
「朝あんなに食べたのにまだ空いてるの!?」
そんな会話をしていると炎トカゲは俺たちの方に気づき、1匹目がこっちに向かってくる。
「まずは【ウォーター】」
手から水を出し、炎トカゲに当てる。
「くぅぅぅぅぅ……」
炎ということだけあって水には苦手らしいく、変な声を出しながらあっけなく倒れた。
「よし、1匹討伐! やっぱりブロンズのクエストだから簡単だな」
「私も【ファイアー】で1匹討伐したし、すぐに終わりそうね」
サクヤの近くには燃え果てた炎トカゲの姿が。
元々燃えているのにさらに燃えているとかどんだけの威力でやったんだよ……
少し炎トカゲがかわいそうになってくる。
「このまま倒していくぞ」
「うん」
そうして3匹もあっという間に倒した。
別に手ごたえなどほとんどなく楽に終わった。
「……簡単すぎて逆に怖い。ブロンズごときじゃ練習にもならないな。もっとシルバーとかゴールドとかにランクを上げないと……そしていつか俺もダイヤモンドに……」
「そういうのいいから。面白くないから。さっさと帰りましょう。クエストはこれで終了したんだし」
ライセンスを鞄から取り出し、見てみるとクエスト完了と書かれている。
本当に終わったらしい。
あとは帰るだけだな。
「よし、サクヤ。暑いしここをさっさと離れるぞってなにやったんだ?」
倒れている炎トカゲに近づいて、においをかいでいるようだった。
「さっきからちょっと変なにおいがしたからなんだろうなぁって」
「匂いね……確かにする。なにこれ……気持ちわる!」
臭いとかではなく、なんか気持ち悪い匂いだった。
なんだろう、この匂い。
そんなことを思っていた矢先あの声が聞こえて来た。
『解析完了。結果は以下の通りです』
「これってもしかしてスキルなのか……」
久しぶりにアイツの声を聞いた。
頭の中に変わらず、情報が入ってくる。
スキル《死の粉》
説明:炎トカゲの固有スキルで、死んだときに初めて発動するスキル。体から特殊なにおいをする粉を出し、仲間を呼ぶ。なお、仲間の数は数千にも及ぶため、別名――初心者殺しとも呼ばれている。
「おい、ちょっと待て。数千!? それってヤバいんじゃ……」
前をゆっくりをむく。
そこには……
「「がぅぅぅぅぅぅう!!!」」
物凄い勢いで迫ってくる炎トカゲの大群があった。
応援ありがとうございます!
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