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第8話 もう一つの能力➁

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「我が体に導かりし、水よ。聖なる力で汝を打ち砕かん! 【ウォーター】」

 詠唱を唱え、魔法を使う。

「これくらいの威力ならわざわざスキルを使う必要はないな!」

 俺の【ウォーター】を飛び込みジャンプでかれいに避けた。

「もう一発だ、我が体に導かりし、水よ。聖なる力で汝を打ち砕かん!【ウォーター】」

「甘い!」

 またもや避けられる。

「詠唱なんか言ってたら避けに入るに決まってんだろ、この甘ちゃんが」

「……さらにもう一回。我が体に導かりし、水よ。聖なる力で汝を打ち砕かん! 【ウォーター】」

 だが、当たらない。

「はぁはぁ……」

 少し苦しくなってくる。魔法を使い過ぎるとこうなるのか。

「なんだ攻撃魔法はそれだけなのかよ。あんまり大したことなかったな。警戒して損したぜ。やっぱりお前はただの子供だったか」

「くそ……」

 全て、いとも簡単に避けられた。
 あのドアを破壊する時のような威力ではなかったものの、当たると思っていたのに。
 こいつ、人さらいのくせに……案外強いのか?
 ……ムカつく。絶対倒して、サクヤを取り戻さないと。

「今度は俺の番だ! まずは煙幕!」

 叫ぶと、小さな爆弾を投げる。

「なんだ!?」

 すると、白い煙がまき散らされ、視界が著しく悪くなる。
 結論から言うと周りが見えない。奴の姿もだ。
 
「さらに……我の体に導かれし、風よ。聖なる力によって汝から逃げる速さを! 【ウィンド】」

 こいつ【ウィンド】を使いやがった。
 煙幕のせいで、見えない状況なのに、なんで【ウィンド】なんか……

「ふん、お前には見えないだろうが、俺には見えている。これで終わりだ」

 ウィンドのせいで360度全体から音が聞こえて来る。
 これがこいつの狙いなのか!?

『解析完了。結果は以下の通りになりました』

「え?」

 するとまた頭の中に情報が入ってくる。

 スキル《透視》

 説明:霧や雨で前が見えない時でもその中を見ることが出来る。なお、この能力は常時発動しているため、わざわざ唱える必要がない。
 欠点:服などを着ている人や建物の中は透視できない。

『これにて解析結果を終了します』

 元に戻る。

「なんだよそれ、そんなのありかよ!」

 スキル《透視》なんてズルじゃないか!
 そんなのわかるわけないだろ!
 まあ、俺のこのユニークスキルもズルな気がするけど。

「まずは一発目!」

「うわ、危な!?」

「っち外したか……」

 拳が俺の頬をギリギリのところで横切った。
 もう少し反応が遅れていたら当たってた。
 危なすぎる。

「まあいい。また隠れればいい話だしな」

 そして、また煙幕のなかに消えていき、見えなくなる。
 
「これじゃあ、無限ループだ。一体どうしたら……」

 それにこんなことをしていたらサクヤを助けに行けない。
 あんな風になにも言わず、走り去ったのだ。まず間違いなく、助けは来ないと思った方がいいだろう。
 万が一来たとしてもこいつを倒さないと場所もわからない。
 今すぐにでも助けに行かなくちゃいけないのに……

「……やるしかないのか」

 どっちみちこいつを倒さないと始まらないということだ。

「賭けるぜ……」

 勝つためには一か八か賭けるしかない。
 賭けるということはもし、間違いでもしたら俺がやられる。
 だけど、やるしかないんだ。
 
「なに言ってやがる。お前はここで倒れて終わりだ」

「いいや、終わらねぇ……倒れるのはお前だよ。絶対にサクヤの居場所を突き止めてやる」

「子供のくせに本当に威勢がいいぜ。倒しがいがあるってもんだ」

 フハハハハハと笑い声が響きわたる。

 俺はそれを聞きながらも目を閉じ、耳を傾ける。
 深呼吸をして、体を落ち着かせる。動きに対応しやすくするためだ。

「これでもう外さねぇ。見切ったり!」

 ……もしも、奴が攻撃してくるのならどこかと初めに考える。
 俺ならどこを狙うか。
 正面か? いや違う。それなら簡単に止められる。
 なら横か? それも違うな。音ですぐにわかる。

 ならば……

「我が体に導かりし、水よ。聖なる力で汝を打ち砕かん! 【ウォーター】」

 俺は後ろを振り向き、魔法を放つ。
 これこそ賭けだった。

「なに……!?」

 案の定やつはそこにいた。
 ジャンプしながら拳を振りかぶり、後頭部に当てる気だったのだろう。
 それも無駄だったがな!

「はああああああああああ!!」

 魔法はやつの体の方へ一直線上に飛んでいく。
 そして、当たる直前。

「っち仕方ねぇ! スキル《無効化》」

 魔法がはじけ飛ぶ。反動で奴は宙を舞う。
 使った。スキルを使ったぞこいつ。
 後、一回だ。

「さらにもう一回だ。我が体に導かりし、水よ。聖なる力で汝を打ち砕かん! 【ウォーター】」

「し、しまった……」

 空を飛んでいるせいで、避けきれない。
 終わりだ。

「スキル《無効化》」

 魔法がまたはじけ飛ぶ。
 最後のスキルを使った。

――これで後は倒すだけだ。
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